1ー4★冒険者の仕事って…

『ん~、久しぶりに見たな…』


1枚の羊皮紙を見ながらモルガンと名乗るドワーフが考え込んでいた。


職業登録所で冒険者となった翌日、俺は早速冒険者ギルドに訪れていた。

ギルドを訪れ受付のエルフの女性に紹介状を渡すと、奥からいかにも脳筋ですというような年齢は50前後くらいの男が現れた。

その男はモルガンと自己紹介をすると、受付横の仕切りがある簡易個室の様なところへ俺を案内した。

二人きりになるとモルガンは羊皮紙にカードステータスを記入するように言ってきたので、俺は記入してモルガンに見せたのだが…

どうやら俺のステータスに問題があるらしい。


『お前さん、冒険者だけでなくほとんどの職業でスキルを使うときには精神を使用するんだが、お前さんはその精神が足りていない可能性がある…』

『えっ…足りていない?』

『スポットというスキルは、お前さんが記憶しておきたい場所を座標として認識させるスキルになる。で、記憶した場所まで移動したい場合はムーブというスキルを使う。』

『結構便利そうなスキルなんですね』

『確かに便利なスキルなのは間違いない。特にムーブはスポットとは違い、冒険者から他の職業に移動しても使うことが出きるしな』

『それで…精神が足りていないというのは?』

『お前さんの精神は補正値込みで5ということになるんだが、それだと数件先のお店まで移動するのが精一杯という感じだな』


そういえばフェンはルートからミモザを冒険者のムーブを使わずに徒歩で移動していた。

簡単にムーブで往復できるのであれば、旅をする必要もないはずだ。


『熟練度というのを上げていけば、精神も上昇していくのですか?』

『もちろん上昇はしていくが、だからといってわざわざモンスターと戦ったり危険をおかす必要もないと思うんだが』

『でも他の職業が見つからなかったんですよね…』

『だろうな~、まー経験なしでいきなり冒険者になろうとするやつなんて、そんなもんだろう』

『出来ないですかね?』

『無理って訳じゃないと思うが…』

『ちなみに、冒険者の仕事ってどんなのが多いんですか?』

『色々あるが、移動関係が多いかな』


モンスターを倒したりダンジョン探索などの仕事も冒険者の仕事としてあるらしいのだが、それよりはスポットとムーブを利用して人や物の移動というのがメインらしい。

通常は依頼者に場所の情報をもらいスポットで記憶、物や人をムーブで自分と一緒に移動してから帰ってくるというのがもっとも効率的な仕事だと教えられた。

ただ俺の場合は往復分の精神が足りないだろうからモンスター討伐系の仕事を優先することになるらしい。


『ところで…お前さん…手に持ってる袋ってもしかしてぇと…』


モルガンがノルドから貰った袋を不思議そうに見てきた。


『これ、知り合いから借りている袋なんですけど…』

『ちょっと見せてくれないか…』

『一応、俺の着替えとか備品とかも入ってるから恥ずかしいんだけど…』

『そっちには興味ねぇから大丈夫だ』

『それなら…はい』

『やっぱりそうか、収容袋デポット(中)なんじゃねぇか!!アイテムボックスの代用か』

『アイテムボックスって、カードのやつ?』

『まー要は一緒だな。これならある程度レベル上げた冒険者と同じくらいの荷物を詰め込めるからなんとかなるぞ。ただ走って移動するのは変わらねぇがな』

『本当ですか?』

『おう、日数たてばムーブも回数使えるようになるはずだから最初だけ我慢してくれ』

『もしかして、これって結構貴重なものなんですか?』

『貴重っちゃ貴重だけど、容量があるかどうかなんて今みたいに中を調べないと分からないからな…』

『借り物なんで無くさないようにしたいんですけど…』

『んじゃ、帰りに登録所によってアイテムボックス契約してデポットしまえばいいんじゃねぇか』

『そうします』


収容スペースをしまうための収容スペースなんて変な感じがするけど、なくすよりはいいのかなと思う。

そして顔が怖いノルドには、ここでも助けられたようだ。

いつか恩返しするべきなのだろうか。


『後は、明日から仕事はやるってことでいいのか?』

『はい、宜しくお願いします』

『よーっし、んじゃー明日起きて準備ができたらここに来てくれよ』

『分かりました』


取り敢えず仕事の確保は何とかできたようだ。

後は徐々に慣れて自分の出来る範囲の仕事を増やしていこうと思う。


(でも冒険者って職業なんだけど…

引っ越しや配達関係の仕事って感じたのは俺だけなのか?)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る