第34話

「それってもし朱莉が一緒に食べなかったらってことを?」

「うん、そう」

「そうだな。ぶっちゃけ、考えてなかったかも」

「そ……そうなんだ」

答えながらあたしは信じられない気持ちでいっぱいだった。

何も考えずに行動したという彼。

いつも考えすぎてなかなか行動に移せないあたしからしてみれば、彼は未知の生物のように思えて仕方がなかった。


そんなあたしの心境を知ってか知らずか彼がぽつりと口を開いた。


「……俺、苦手なんだよ」

「何が?」

「考えてから行動するのが苦手なんだ」

「そうなの?」

「だからいつもあまり深く考えずに思いついたらすぐに行動してしまうんだよな」

彼は困ったように頭を掻いた。

「そうなんだ」

「だから今回も朱莉に弁当食べてもらえなかったらっていうのは考えてなかった」

「そっか」

「もし、作った弁当を朱莉に食べてもらえなかったとしてもそれは残念ではあるけれど特にどうもしないと思う」

「うん」

「でも食べてもらえたんだから、今日はラッキーだった」

「えっ?」

「作ってきた弁当を食べてもらえたことも」

「……」

「昼休みを一緒に過ごすことができたことも」

「……」

「すげぇ、嬉しかった。ありがとう」

そう言って彼は眩いくらいの笑顔をあたしに向けた。

その笑顔にあたしは不覚にも見とれてしまった。


だけどすぐにあたしは我に返った。


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