第25話

勇気を振り絞って彼に尋ねる。

「なにが良かったの?」

私の声は微かに震えていた。

だけど私は彼の目をまっすぐに見て尋ねた。


すると彼は

「弁当を作ってきた」

少し照れくさそうにそう告げた。

私は彼の言葉に耳を疑った。


「……はっ?」

間の抜けた声を発する私に

「だから弁当を作ってきたんだ」

彼は鋭い眼を私から逸らし、もう一度そう告げてくる。


……どうやら彼は照れてるらしい。

それが分かった私は、ほんの少し彼に対する恐怖心が薄らいだような気がした。


彼に対する印象は若干変わったけど、彼が言った言葉はまだ理解できていない。

だって彼が口にした言葉には突っ込みどころが満載だった。

「お弁当を作った?」

「うん」

「誰が?」

「俺が」

「誰のお弁当?」

「朱莉と俺の」

「……」

「朱莉?」

「……えっ? 料理とかできるの!?」

「……まぁ、簡単なものだけだけど」

「でも料理ができるんだよね?」

「味の保証はできねぇけどな」

……マジで!?

この不良男子が料理!?

信じられない……。


自慢じゃないけど私だって料理なんてできないのに……。

それに不良が料理ってミスマッチ過ぎるでしょ。


私は愕然とした。

そんな私の本音を知らない彼は

「どこで食おうか?」

まだ照れながらもそんなことを聞いてくる。


……どうやら私が驚いている間に彼が作ってきたお弁当を一緒に食べることは決定したらしい。

そこに拒否権はないらしい。


どうせ一緒に食べないといけないなら、それこそ人が少ないところがいい。

でも私はこの学校に入学したばかりで、どこにどんな教室があるのか把握しきれていない。


「えっと……」

「今日は天気がいいから外の方がいいかも。屋上と裏庭と非常階段。どこがいい?」

「……あの……」

「うん?」

「なんでそんなに詳しいの?」

「詳しい? なにが?」

「私はまだどこに何があるのか把握してないから」

「あぁ、学校内のこと?」

「うん、そう。だってほら、まだ入学したばかりだし」

「そうだな。俺は昨日校内探検をしたから」

「校内探検?」

「そう」

……えっ? 小学生!?

「そ……そうなんだ」

「あぁ、だから分からないことがあったら何でも聞いて」

「あ……ありがとう」

「飯を食うのにおすすめの場所は、屋上と裏庭と……あとは非常階段だな。どこがいい?」

ぶっちゃけ、私はどこでもいいと思った。

でも敢えて選ぶなら、人が少ない場所がいい。

屋上と裏庭には人がいそうな気がする。

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