第22話
◆◆◆◆◆
学校が近づくにつれてやっぱり緊張感は高まっていく。
その緊張感を私は深呼吸をして何とか誤魔化そうとしていた。
学校に着いた私は自分の教室に入る前にさりげなく隣のクラスを覗いてみた。
だけど彼はまだ来ていないのか、教室の中にその姿はなかった。
もし彼がいたら今のうちに断ってしまおうと思っていた。
どういう言葉で断ればいいのか未だに思いつかなかったけど、とりあえず一刻も早く断ってしまわなければ気持ち的に落ち着かない。
それにどんなに考えてみてもうまく断る方法なんて思いつきそうもなかったし 、もし何かしらの言葉が思いついたとしてもいざ彼を目の前にしてその言葉をちゃんと伝えることができるかどうかその保証もない。
だって私はきっと彼を目の前にするとテンパってしまうに違いない。
テンパった私が冷静に考えたことを口にできる可能性は極めて低い。
それなら色々と考えても無駄になってしまうと登校中に私は考えた。
おばあちゃんが言うとおり、とりあえずは正直にやっぱり付き合えないということを彼に話してみよう。
その後のことはその時になって考えてみるしかない。
そういう結論に達したものの、彼がまだ教室に来ていないのなら話もできない。
私は諦めて自分の教室に戻った。
その足取りはやはり重かった。
そのまま時間だけが過ぎ、今は4時間目の授業中だった。
2時間目と3時間目の休み時間は隣のクラスに様子を見に行ったけどやはり彼の姿は無かった。
もしかしたら今日休みなのかもしれない。
どこからどう見ても不良にしか見えない彼が毎日真面目に学校に来ているとは考えにくい。
このまま彼が学校にこない可能性は極めて高い。
今日は話もできないかもしれない。
そう考えた私はすっかりあきらめかけていた。
チャイムが鳴り、4時間目の授業終了を知らせる。
その時だった。
まだ先生が教卓の前にいるというのに、入り口のドアが勢いよく開いた。
クラスメート達はもちろん先生までもが一斉にドアに注目した。
そこに立っていたのは百鬼 大翔だった。
彼は多くの人に注目されているというのに それを気にする素振りは皆無で
「朱莉、昼飯を一緒に食おうぜ」
声を張り上げた。
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