第20話
誰に対しても誠実でありたい。
私は確かにそう強く感じた。
だから百鬼 大翔の告白をちゃんと断ろうと決めた。
それを決めたのは私自身なのに、いざそれを言葉に伝えようとすると、なんて言えばいいのか、どんな言葉を言えばいいのかが分からなくなってしまう。
……どうして、こんなことになってしまったんだろう。
本来なら前向きに明日、百鬼 大翔に伝えるための言葉を考えないといけないのに、どんな言葉で自分の気持ちを伝えていいのかが分からない私の頭は結局現実逃避したいのかそんなことを考えてしまう。
別に私は恋愛に対して苦手意識があるとかそんなんじゃない。
恋愛をしたことがない私にも恋に対する憧れや理想が全くない訳じゃない。
いつか私も誰かと恋をしたいという気持ちは十分にある。
優しくて穏やかで物静かな男の子。
そんな人が私の理想だったりする。
私は中学生2年生の時、生徒会に所属していた。
どうしても生徒会活動に参加したくてなったわけじゃない。
ただ単に生徒会の活動を面倒だと思っているクラスメイト達に押し付けられただけ。
もちろん私だって生徒会の活動を面倒くさいと思っていた。
だけど断ることができずやる羽目になっただけ。
そんな私の密かな楽しみは姉妹校である男子校の生徒会と合同の会議に出席することだった。
3ヶ月に1回、合同の会議は開かれる。
その時、司会進行役をするのは男子校の生徒会長だった。
その生徒会長は穏やかな口調で話す温和な雰囲気を纏った優しい人だった。
彼は周囲のことにもよく気が付くし、頭の回転も速く、場を取り仕切るのが上手だった。
たった1学年、1歳しか変わらないのに、私は彼がとても大人のように感じていた。
今考えれば、私はその生徒会長に憧れを抱いていたのかもしれない。
片想いと言えるほどの接点や自己認識がないそれはただの憧れにすぎない。
でも、今なら私ははっきりと断言できる。
もし私が誰かと恋をするならあの生徒会長みたいな人がいい。
それが私の本音だった。
だからやっぱり私は百鬼 大翔にちゃんと断らないといけない。
烏滸がましくはあるけど憧れている彼とだったら付き合うということが漠然ではあるけど想像ができる。
だけどその相手が百鬼 大翔だったらそれを想像することができない。
それに百鬼 大翔は私の理想とはかけ離れている。
ううん、そもそも百鬼 大翔と私は生きる世界があまりにも違いすぎる。
……うん、やっぱりこの告白は断るべきだ。
改めてそう決意した私だったけど、明日に備えて準備をする前に睡魔に襲われてしまった。
その睡魔はかなりの強敵で私はあっという間に眠りの世界に誘われた。
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