第16話

「うん。ご飯の時に話してくれるかなって思ってたんだけど、結局何も教えてくれなくて、おばあちゃんちょっと寂しかったのよ」

ちょっぴりすねたように言うおばあちゃんはなんだかとても可愛らしかった。

だけど私はおばあちゃんのかわいらしさにほんわかしている場合じゃなかった。

「ご……ごめんなさい。おばあちゃんが気付いてるって知らなかったから」

「ううん、いいのよ。今はまだ話したくない?」

「そういう訳じゃないんだけど」

「じゃあ、教えてくれる?」

「うん」

おじいちゃんはお風呂に入ってるから、今がチャンスなのかもしれない。

おじいちゃんに話したくない訳じゃないけど、こんな話をするのは気恥ずかしい。

そう考えた私は思い切って口を開いた。

「……実は……」

「うん?」

「今日、告白されたの」

「告白?」

「うん、付き合って欲しいって」

「そうなの?」

「うん」

「朱莉はその男の子こと……」

「全然知らないよ。今日初めて会ったし」

「そうよね。向こうは朱莉のことを前から知ってたの?」

「ううん、知らないと思う。一目惚れって言ってたし」

「一目惚れ?」

「うん、なんか……」

「なに?」

「信用できないよね?」

そう問いかけたのは、おばあちゃんも私と同じ意見だと思ったから。

初対面で一目惚れ。

それを完全に否定するわけじゃないけど、私にしてみれば一目惚れなんて漫画や映画などの話であって現実的じゃない。

そう思ってしまう。

恐らくそれはきっと私だけじゃなくておばあちゃんも一緒。

私は勝手にそんな確信を抱いていた。

だけどおばあちゃんは

「そう?」

私の予想とは全く違う反応を示した。

「えっ?」

当然私は困惑した。

でもおばあちゃんはそんな私を他所に

「一目惚れなんてロマンチックじゃない」

うっとりとした表情を浮かべている。

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