第15話

「おばあちゃん、それってどういうこと?」

私が尋ねるとおばあちゃんは宙に視線を向け、穏やかな口調で言葉を紡ぎ始めた。

「私たちが子育てをしてる時は必死だったのよ。朱莉のお父さんは私達にとって初めての子どもだったから特にね。だって子育てについては右も左も分からなかったし。それに男の子は跡継ぎにしないといけないから期待が大きい分厳しく育ててしまったっていうのもあるし」

「うん」

「でも朱莉は孫でしょ? おじいちゃんが厳しくする必要なんて全然ないし、しかも女の子なんだから甘やかしてあげたくて仕方がないのよ」

「そっか。だから私にはとても優しいおじいちゃんをお父さんは厳しいって言うんだね?」

「えぇ、恐らくそうでしょうね」

おばあちゃんはうんうん、と頷くと水道を止めた。


「それより朱莉」

手を拭きながらおばあちゃんは私の顔を覗き込んでくる。

「なに?」

「学校で何かあったでしょ?」

「えっ?」

「顔に書いてあるわよ」

おばあちゃんは茶目っ気たっぷりに言ったけど

「うそっ!?」

私は慌てて顔を手で覆った。


私の反応を見て

「本当に書いてあるわけじゃないわよ。そういう表情をしてるって意味ね」

おばあちゃんはケラケラと楽しそうに笑う。

「なんだ。そっちか」

過剰な反応を示してしまった私は、恥ずかしくて堪らなくなった。


「そうよ。それよりおばあちゃんは朱莉が話してくれるのをずっと待ってるんだけどな」

独り言を言うように呟くおばあちゃんの言葉に

「えっ? そうなの?」

私は驚いた。

おばあちゃんは、私のささやかな異変にちゃんと気付いてくれて、その上私が自分から話すことを待ってくれているらしい。

私は全く自覚がなかったからおばあちゃんの鋭さと寛大さにびっくりした。

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