第13話
「朱莉ももう高校生なのね」
感慨深く言葉を紡ぐおばあちゃんの声に視線を上げると
おばあちゃんは優しい眼差しで私を見つめていた。
「そうだな。この前までランドセルを背負って小学校に通っていたのにもう高校生か」
しみじみと語られるおじいちゃんの言葉。
私もその言葉に感動しそうになったけど気付いてしまった。
「……おじいちゃん、それって時間が止まりすぎだから」
私の言葉に
「そうですよ」
おばあちゃんも加勢してくれる。
するとおじいちゃんが
「そうか?」
おどけたように言うから
私とおばあちゃんは顔を見合わせて噴き出した。
おじいちゃんやおばあちゃんと一緒に思い切り笑うと
ほんの少しの間だけ、今日の昼間の出来事を忘れることができた。
「朱莉」
「なぁに? おじいちゃん」
「いつでもどんな時でも誠実であれば、人とは良い関係を築くことができる」
「えっ?」
「朱莉は新しい世界に勇気を出して飛び込んだ。おそらく今は不安なことも多いだろう」
「うん」
「でも、いつでも誠実に人と接していれば必ずそれに気付いてくれる人はいて、手を差し伸べてくれる。心配しなくても大丈夫だ」
おじいちゃんは優しい口調で私に言い聞かせるように教えてくれた。
おばあちゃんもおじいちゃんの隣でニコニコと笑っている。
「うん、分かった。ありがとう。おじいちゃん、おばあちゃん」
「さあ、お料理が冷めないうちにいただきましょう」
「そうだな」
「うん」
おじいちゃんとおばあちゃんはお父さん方の両親だ。
私が幼い頃から仕事で忙しいお父さんとお母さんに代わって私の面倒はおじいちゃんとおばあちゃんがみてくれている。
お父さんとお母さんは仕事で家を空けることが多いから私はこの家で過ごすことが多い。
自分の家で過ごす時間よりも圧倒的におじいちゃんとおばあちゃんの家で過ごす時間が圧倒的に長かったりする。
私のことよりも仕事を優先する両親よりもいつも一緒にいてくれるおじいちゃんやおばあちゃんの方が私にとっては断然身近な存在だったりする。
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