第8話

「だって付き合うのに必要なくない?」

彼は堂々とそんなことを宣【のたま】った。


「は?……付き合う!?」

「うん、そう」

「それは誰と誰が?」

「俺と小櫻サンが」

「付き合う?」

「そう」

コクコクと頷く彼に私は愕然とした。


……えっ? ちょっと待って。

なんかもう付き合うことが決定事項みたいになってない?

私、了承とかしたっけ?

……いや、してないよね。

うん、してないはず……だよね?

ちょっと自信がなくなった私は記憶を辿ってみたけど、やっぱりそんなことはしていない。


これってなにも言わないと、この人と付き合うことになるパターンじゃない!?

ダメだ。

それは絶対にダメなパターンだ。

これは回避しないといけない。


彼と付き合う気なんてこれっぽちもないんだから、ここはきちんとお断りしないといけない。

そう考えた私は、怖気付きそうになる自分をなんとか奮い立たせて口を開いた。


「……あの……」

だけど意気込んでいた割には私の声は弱々しいものだった。


でも彼は私のその弱々しい声を聞き逃すこともなく

「なに?」

ちゃんと拾い取ってくれた。


「これって……」

「うん?」

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