第7話
彼の手が動いて、私の方へと向かってく来る。
私はその手をジッと見つめていた。
多分、彼の手は普通に動いていたと思うんだけど、私にはとてもゆっくりと動いているように感じた。
私の頭に彼の手が触れたと思ったら
「付いてたよ」
彼は私の目の前に薄ピンク色の小さな花びらを翳した。
「えっ?」
「桜の花びらだね」
「で……ですね。いつ着いたんだろう?」
「俺が声を掛けた時には着いてたよ」
「そんなに前から!?」
……うわっ、恥ずかしい。
全然、気付かなかった。
「うん。ずっと髪飾りだと思ってたんだけど違ったぽい」
「取ってくれてありがとうございます」
「ううん、どういたしまして」
彼はにっこりと笑った。
その笑顔がとても自然なものだったから、私もつられるようについ笑顔を浮かべてしまった。
すると彼は私の顔を凝視した。
そして
「別に小櫻サンが一目惚れっていうのがどういう感じなのか分からなくても別に問題はないし」
彼はまるで独り言のように呟いた。
「はい?」
独り言かと思った彼の言葉はどうやら独り言ではなかったらしい。
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