指し失す
寒い。あと、重い。
布団の中で、私は服を着ていなかった。それからちょうど手の上には旦那の体があった。
こやつ、わざわざ人の手の上に体を横たえるなんて、いい寝相してるじゃない。
離婚のことと言い、実は私にケンカを売ってるんだろうか。
ともかく、これ以上旦那の体を手に乗せていたら、鬱血したまま壊死しそうなので、ずりずりと腕を引きずって引き抜く。
手を握り伸ばしして、感覚を確かめる。血の巡りが止められたせいで、すっかり指先の感覚がなくなっている 。
甘えられるのは嫌じゃないし、体を重ねるのも嫌じゃない。
私は自分のお腹を撫でた。すとんとなだらかなそこには、何もいないのを実感する。
どんなにキスしても撫でられても、胸が高まらなかった。体は冷めたままだった。
それが悲しいと思う。思うからこそ、別れたいのを、どうしてこの人はわかってくれないのか。
なんて身勝手なんだろう。
彼も。
私も。
なんだか、罪悪感が募ってきて、死にたくなってきた。
それにしても、今日は休みだからとすやすやと寝おってからに。でも、寝顔もすっきりとしたパーツがかっこいいな。
「朝ごはんでも作りますか」
出来上がる頃にはこの疲れ切った旦那も起きてくるだろう。
それくらいの労いはかけてあげたい。私だって、この人が私を本気で愛してくれていることくらいわかっているのだ。
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