第71話 イン・ザ・フレッシュ その③
071.
何かが、
空気を引き裂き、周囲にいた
このとき、放たれた衝撃は、成層圏を越え、大気圏を突破し、
真空を引き裂くように、突き進む。
物理法則も、時間概念も、すべてが一対となった衝撃波は、
『何か』に阻まれた。
このとき、計測器に刻まれる。
観測している限りの宇宙が、躍動した。
これは『何か』からの『返答』だったと言ってしまってもいいのかもしれない。
本来ならば、千年後に訪れるはずだった人類の躍進を、この段階で受けたことによる返答。
宇宙にとって千年なんて些細なものでしかない。
その些細なものでしかない時間を、果てしないほどに感じている人類なる生命体。その生命体からの思いも寄らぬ『挨拶』に対して、『何か』は返答した。
同時に。
その程度の返事で済むわけもなく。
見えない『何か』が、降ってきた。
それは近くにいた鎮岩や高砂も感じることができた。
見えない『何か』は、途方もない――説明できない『何か』だった。
それが、
「――響木さん!」
高砂は叫んだ。それは名前を呼んでいるようで、あるいは絶叫や悲鳴のようなものだったのかもしれない。
雷にでも討たれたのかと思った。
だけど、身体に変化はない。
その場に立っているだけだ。
高砂には違和感があった。
さっきまであったものが消えてなくなったという感覚が、そういう違和感があった。
『降ってきた』――『何か』は、確かに響木寧々の身体に直撃したが、そのとき、
『リトル・ピーターラビット』の絶命に準じて、影響を受けていた者たちが余儀なく解放される。
いずれ自分たちが受けていた『殺すこと』に対する認識を改め始めることになる。
そして。
響木寧々の『能力』――『ザ・ウォール』を用いて放った『衝撃波』。
この『衝撃波』にどのようなメッセージを『リトル・ピーターラビット』が乗せていたのか、それはわからないが――『返事』を受けたとき、まさに身体の本体であるところの響木寧々も、その『返事』を聞いていた。
それは、底が見えないような深淵。
先が見えないような暗黒。
それは、淀みのない鮮明な空気。
尋常じゃなく眩い閃光。
そんな、たかだか人間というたったひとつの生命体が処理できる情報量を凌駕しているものだった。
そんな中から――程度レヴェルを合わせてくれたのだろうか。
『何か』から送られてきたメッセージ。
そこで受け止め切れる要素もあった。
どっしりと重くて軽い。
重圧感のある軽薄な声。
『――その宣戦布告、受け取ったぞ。人類』
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