第2話 卯月希太郎の日常 その②


     2.


「休み明けには自殺者が増えるっていうよね」

 四月十三日、月曜日に放課後。

 クラスメイトの星井ほしい小春こはると話をしていたら、そんな話題になった。

 別に、さっそく友達ができたというわけではない。

 星井とは違う中学校だったが、同じ塾に通っていたというだけである。

「言われてみれば……」

 星井に言われて、卯月は教室を見渡す。

 いくつか空席がある。

 入学式の日や、先週の金曜日には埋まっていたはずの席が、いくつか空いている。

「隣のクラスの何とかさんは、行方不明で見つかってないんだって。先週から連絡が取れないんだってさ」

「行方不明って……」

「家出とも言われているね」

 よく『声をかけられてもついていってはいけない』とか『インターネットで知り合った人と会ってはいけない』という注意を、中学校の頃から耳にしてきていたが、どこか他人事のように聞いていた。

 こうして実際にいなくなっているのを見るのは、初めてだ。

「ニュースとかで見ているとさ。なんか他人事みたいに感じるけど、私らが知らないだけで……そういうことって、きっと私たちが思っている以上に身近なことなんだよね」


 今日は他人事でも、明日は違うかもしれない。

 明日は、自分の身に起きることかもしれない。








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