かえりはどうしよう……。え?!のせてくれるの?!
「……。」
歩いて帰るわけにもいかず。
先も言ったが、村に通じる道は街灯がなく、暗い。
夜目が利かないわけではないが、そうであっても暗い夜道は危険。
それだけならまだしも。
村の人たちを心配させてしまうとなると、何だか申し訳なくも思えて。
「……うぁ~……。」
「!……。」
さらには、肝心のマフィンまでも、状況を理解するなら、頭を抱えてしまい。
どうにもならないと困った様子を見せていた。
そうして、何もできない状況に、俺たちは陥ってしまう。
……まあ、繰り返すが、歩いて帰れないこともないが。
その、暗い夜道を少女二人も連れて歩くのは、流石に何だか、ちょっとと。
それは置いておいて、成す術はないと、俺もまた落胆する。
「ホーホッホッホ!お困りですかな?」
「「!!」」
そんな折、俺たちのすぐ後ろから、声が掛けられる。
気付き、俺とアビー、マフィン一緒に振り返るなら。
そこには、何とパレードの時にいた、ニコのウィザード風の老人だった。
ついでに、俺と一緒に、スフィアを頂上戻した人でもある。
……前世では、サンタクロースらしいといったところか。
「……え、えと……。」
突然の登場に、俺は言葉を発せないでいたが。
「え、えと、あのね。あたしたち……。」
誰にも臆しないアビーは、俺たちの中で真っ先に声を上げて。
「!アビー……。流石に知らない人には……。」
なお、マフィンは気付いて止めに入ろうとするものの、弱くあり。
一方のアビーは、いつもそうだが、なおさら聞いていない。
マフィンの意見には賛同だが。
特に、知らない人にそう言うのも何だかなというのも。
しかし、それ以前に。
俺たちには危険な夜道を歩いて帰る以外に、方法がないのもある。
だからで、マフィンは強く止めることもできない。
「いやいや。確かに。ワシを怪しむのも無理はなかろう。しかし、どうすることもできないのもまた、事実じゃろう?」
「……!!う、は、はい……。」
それは別に、不自然なことでもない。
怪しまれても無理はないと老人は言う。
加えて、それ以外に方法がないのも見抜かれてもいて。
マフィンは、引き下がってしまう。
「帰る方法がなくなったの。でねでね。今、どうしようか悩んでいたの。」
「ほぅほぅ……。」
アビーは、マフィンが引き下がったのを見て、続けては。
なお、老人はたっぷり蓄えた白髭を撫でながらも、聞き入って。
まるでその姿は、子どものお話を聞くかのよう。
「ふぅむ……。」
アビーが話し終えたとして。
また、白髭を撫でて。
「ふむふむ。分かった。よかったら、ワシと一緒に行かんかね?」
「!!」
「え?!いいの?いいの?」
なお、大して考えもせずに、老人は即答するなら。
老人と付き合うという話になる。
俺は、渡りに船といった具合で。
アビーは、喜びに跳ねる。
「……よろしいのですか?」
一方のマフィンは、聞く。
「ホーホッホッホ!髪の長いお嬢さん、おかしなことを聞く。今宵は幸せの日じゃよ?幸せなことが起きるのじゃ。じゃから、その幸せのためなら、ワシは喜んで手を尽くそう。」
「?!……えぇ~……。」
マフィンの問いを、退けるように老人は言って、にっこりと笑う。
マフィンは、戸惑ってしまう。
「わ~い!!」
アビーは、素直に喜んでいた。
「……ところで、行くにしても、どのように……?」
俺は、話が決まりそうな時に、聞くことはそれで。
移動手段。
歩きではあるまい。
「ホーホッホッホ!任せなさい。」
「……?」
その老人は、俺の話を聞くなら。
任せなさいと言い、そっと、手を叩いて目を瞑るなら。
「!」
清らかな、スフィアのような音色が響いてきて。
遅れて、この時期らしい。
シャンシャンと鳴る鈴のような音色が近付いてくるのを感じる。
人数の少なくなったここに、近付いてきたなら。
それは、ちょっとしたバスのような乗り物。
この時期らしい、先端、丁度運転席部分はトナカイを模したようになり。
後方部分は、赤と緑をメインに、金色に輝く模様。
さながら、クリスマスのような装い。
クリスマスリースっぽい物もありと、それらしい車両だ。
ただし、違和感はあり。それは、その乗り物の下。
タイヤではなく、ソリ……っぽい。
およそ、道路を走るような物じゃないっぽい。
この時期らしいと言えば、そうだが……。
「?」
不思議に、首を傾げた。
「?!〝スカイモービル〟……?」
「!」
その乗り物について、回答はマフィンがする。
俺は、マフィンを見るなら、マフィンは物珍しそうにしている。
「……って、何?」
俺は、その乗り物について聞くと。
「……空を滑るように動く乗り物よ。かなり珍しいわ。」
「……へぇ……。へぇ?!」
簡単にマフィンが言ってくるなら、空を滑るように動く乗り物と。
感心しそうになるが、だが、何だってと俺は目を丸くした。
「……何それ……?どうやって……?」
言葉を漏らしたなら。
「……そういう乗り物よ。詳しくは知らないけど、スフィアから放出される、あのバリアみたいなものを常に形成しては、その上を滑るように動く、ということしか……。」
「……あ、はい。」
今度は丁寧に説明してくれたが、なお、詳細不明として。
こればかりは、そういうものだと納得せざるを得ない。
素直に、頭を下げる。
「ホーホッホッホ!お嬢さん詳しいのじゃな。」
「!」
老人は感心して、笑う。
それでいて、また手を叩くなら。
側面の扉が開き、俺たちを招き入れようとしてきた。
「さあさあ。大丈夫じゃろうが、寒くもあろうて。乗りなさい。」
「!」
老人は催促してきて。
「……わ、分かりました。ありがとう、ございます。」
「私こそ、ありがとうございます。お言葉に甘えて……。」
「ありがとー!」
俺たちは、それぞれにお礼を言って、また、荷物も持ち、中に入る。
「!!……おぉ……。」
俺は中に入って、つい声を上げるなら。
座席はきちんとあって、ちゃんとしたバスのようだが。
それよりも、より後方の部分で。
沢山の、キチンと包装されたプレゼントが、沢山、でも丁寧に置かれていた。
……いかにも、らしいような。
その、プレゼントの山に、見とれながらも、俺は席に着く。
「わぁ!すっごーい!!」
アビーは、そのプレゼントの山を見て、興奮している。
「アビー。それよりも席に着きなさい。でないと、揺れた時に危ないわよ。」
マフィンは、そんなアビーの様子に注意をする。
「は~い。」
アビーは、生返事ながらもして、マフィンの言葉に従い、ちゃんと席に座る。
「乗ったかね?」
「!」
そうした後、前方から声がするなら、老人が顔を出してきて。
俺は、頷くなら。
「ふぅむ。よし。じゃあ、行こうか。」
そっと、柔らかな笑みを浮かべては、視線を前方に戻す。
「!」
独特な起動音がするなら、合わせて、圧が抜けるかのような音を立てて。
入り口や、多分前方の入り口も、閉まり。
「!!」
さらに、スフィアの起動音と、鈴の揺れる音が響くなら、車体が軽く揺れて。
何事とちらりと外を見れば、建物が次第に下に行くのを目にする。
「……?」
なぜかと思うが。
「!」
それは、飛行であると、すぐに理解する。
そう、マフィンが言った通り、空を滑るように移動してもいるのだ。
シャンシャンと音を立てて、空を行き。
窓から見れるのは、冬の夜空。
「わぁ!すっごーい!!!」
そのために、アビーは、その様子に大はしゃぎ。
「はぁ……。助かったけど……。ねぇ……。」
マフィンは、複雑に溜息をつく。
「さぁて、どちらまで行こうかのぅ?」
「!」
そんな中、前方の老人は、俺たちに聞いてくる。
「!」
マフィンも、溜息をやめて、顔を上げて見ては。
「……お言葉に甘えまして。では、私たちの村まで……。場所は……。」
代表にマフィンが言う。
俺たちの住む村の情報を、丁寧に伝えたなら。
「あい、分かった。では、しっかり捕まってなさい。」
柔らかく、頷いて、俺たちに注意をしてきた。
「?!」
何だと思い、身構えるなら。
急に体が椅子に押し付けられる感覚がして。
どうやら、急激にスピードを上げたらしい。
一瞬に戸惑いながらも、体を起こしてみれば。
流れる星空の輝きが、速くなっていた。
「ほぅほぅ。あそこらへんだね……。」
「!」
と、高速移動も束の間。
またまたスピードは落ちて行き。
何だろうと思えば、老人が言うことには、間もなくということで。
間もなくならと、俺は窓から見れば、村のぽつぽつとした明かりを目にする。
「……?」
しかし、単純に着陸するわけでもなく。
不思議なことにこの乗り物は、さらにそこから、村を一周しだす。
車内からも聞き取れる。
鈴の音色を響かせながら。
まるでこれは、合図とばかりに。
その行動に不思議さを感じながらも、乗り物は次第に高度を落としていき。
やがて軽い衝撃を伴って、止まる。
着いたらしい。
開放に、圧を掛けるような音がするなら、側面の扉が開く。
「さあ、着いたぞ!」
「……は、はい。」
老人からの、合図のような言葉に。
不思議を抱いたままの俺は、曖昧な返事をして。
席を立ち、降りていく。
「あ、ありがとう、ございます。」
その降りる際に、お礼を言い。
また、後続にアビーが続き。
マフィンも、荷物をスフィアに任せながら続く。
改まって、運転席側に向くなら。
運転席の扉も開いて、その老人が出てきた。
「あの、ありがとうございます。」
俺は、真っ先にお礼を言い、丁寧に頭を下げる。
「ありがとうございます。」
「ありがとー!」
マフィンも続き、頭を丁寧に下げて。
アビーは、手を振って。
「うむうむ。よいよい。ワシは、皆の笑顔を見れればよいのじゃ。」
老人は、言って、にっこりと笑みを浮かべて、手を振って応じる。
お礼なんていい。
笑顔が見れればそれでいいと。
まるで、おとぎ話のような人物、あるいは聖人か。
「さぁて。お礼というよりは、皆でこう言おう。」
お礼なんかよりも、もっと別のことをと。
その次には老人は言ってきて、手を叩き。
「!」
では、その言葉とはと、身構えるなら。
ちらりと見ても、アビーもマフィンも、二人分かっていて、頷く。
「「ハッピーホリデー!!」」
改めて向き直っては。
老人とも揃って、その言葉を口にする。
この日に、相応しい言葉を。
言って、俺たちはまた、不思議と笑みを零し。
それを見た老人は、満足そうに笑むなら。
名残惜しくあれども、また乗り物に乗る。
「!」
それは、別れであり。
そのために、老人は窓から手を出して、振る。
アビーもまた、気付くか。
走り寄るなら。
「ねねね!おじいさん!!また、来年も来る?」
そう、子どものように弾ませながら聞く。
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