すふぃあのみちびきだねっ!

 「これ。本格的な物よ。さっき、言ったよね?この幸せの日としたウィザードの話を。」 

 「!……うん。」

 「思い出してみて、どんな服装だったか。」

 「!ん?……ん~……。」

 その根拠はといったところで、マフィンは俺に思い返すことと。

 冷静になることを促してはきて。

 何でも、ヒントはニコのウィザードなるものにあると。

 俺は、軽く唸っては思考すると。

 「主に、赤い帽子に、スフィアが留め具として使われたローブと、スフィアがあつらえられた杖か、スフィア自体……。」

 言い出したなら。

 「……感じない?」

 「……何を?……?!」

 マフィンは冷静に言うなら、しかし不思議なことを。

 何でだと思いつつも、俺はまた、手にした特賞の品に目をやるなら。

 冷静になった結果か、感じた。

 スフィアの気配である、それも、この特賞から。

 受け取った時は、つい呆然として気付かなかったが。

 冷静になれと促された今なら、はっきりと感じて。

 「だからか……。」

 納得もいく。

 本格的な、なりきりセットなのだと。

 スフィアがあつらえられているのなら、確かに。

 価値もそれだけあってもおかしくはない。

 「……とんでもないセットよ、これ。今ではほとんど生産していないらしいからね。コストが掛るってね。ついでに、値段も相当よ。」

 「……。」

 付け加えるなら、レアな一品らしく。

 なお、スフィアを直接使っていることが災いしているのか、コストも高く。

 ついでに、値段もするとして。

 コスプレセットにしては、やたらと値が張るものだったらしく。

 気軽に買える物ではないと。

 なるほどと、ついには納得を示した。

 「ねねね!だったら大和ちゃん!着てみてよ!!」

 「?!え、今?!」

 その納得していた横から、アビーが言ってくることは。

 早速着てみてという促進であり。

 思わず目を丸くしてしまう。

 それは、更衣室ではなく、ここで着替えろと?!

 それは流石にまずいとも思い、踏み止まる。

 「いえ。大丈夫よ、大和。多分これ、帽子とローブ、それと杖のセットでしょうから。」

 「!!……何だ、それだけか。」

 マフィンは見て、フォローを入れてくれるなら。

 どうも、全身着替える必要はなく。

 単にローブを羽織って帽子を被るだけの簡単な物らしい。

 値段は張るけど。

 「……まあ、それなら……。」

 マフィンが大丈夫だと言うならと、俺は従い。

 「うんうん!」

 アビーが期待を込めるならと、俺は包みを解いては。

 そのなりきりセットを曝け出す。

 「!」

 包みを解いて現れたのは、赤地に淵を白くふわふわした飾りで彩り。

 かつ留め具の部分に、噂通りスフィアをあしらったローブと。

 同じく。

 赤地に、てっぺんにふわふわの毛玉らしき物を取り付けた帽子のセットが現れて。

 残るは、小さい棒状の物だが。

 握る部分にスフィアが埋め込まれた一品が出てきた。ポケットに入りそうな物だ。

 早速と俺は、帽子を被り、ローブを羽織るなら。

 「!!」

 そのローブのスフィアは、早速俺を主と認識して、煌めき、気迫を発する。

 その気迫は体にまで染み入り、内部から温かくする。

 思わぬことに、つい目を丸くするが。

 「まさしく、ウィザードって感じね。」

 「!」

 「うんうん!!大和ちゃん!ウィザードらしい!!」

 「……えぇ~……。」 

 その気迫から、何を感じたか、マフィンは冷やかすように言ってきて。

 アビーは、素直に褒める。

 「う~ん。そっか~……。」

 俺は、頭を掻きながら、複雑に思いつつも、頷きはする。

 今までらしくはなかったが。

 こうも気迫が鋭いと、ウィザードと言われてもおかしくはないかもしれない。

 杖をポケットにしまうなら。 

 すっかりその、ニコのウィザード、そう思えてならないと、頷く。

 「えへへっ!大和ちゃん似合ってる!さっすが!ウィザードだね!!」

 「……。」

 アビーは、そんな俺の姿を見て、素直に言ってきては。

 締め括りには、誉れ高きその存在の名を告げる。

 俺は、どうだろうと、苦笑した。

 「!」

 そんな中、町中に、邪魔するような鐘の音が響き渡るなら。

 「!あら、いけない!」

 それは、時報の鐘らしく。

 マフィンはぱっと顔を上げるなら、しまったといた具合に言う。 

 その表情から読み取れるのは、そろそろ時間が迫ると。

 証明するように、空は夕方の赤から、夜の黒に移り変わろうとしていて。

 つまりは、このままだと大分遅くに村に着くことになる。

 村の人たちに、心配掛けるかもしれないと、マフィンは目で訴えて。

 「……ゆっくりし過ぎたわね。急がないといけないわね。」 

 「!」

 であるから、言うならマフィンは、町外れに急ごうと駆け出す。 

 「?!わわ、待ってマフィンちゃん!!」

 「!お、おっと!」

 マフィンが駆け出すならと、俺とアビーもついて行き。

 その後ろから、マフィンが操作するスフィアたちも追従して、急いだ。

 だが、急げば急ぐほど、妨害はあるとして。

 「……あぁ~……。」

 「うそっ……。」

 町の大通りを、これ幸いと人が埋め尽くし。

 さらに車通りは、また、別の集団が埋めて進んでいくのだ。

 軽快な音楽が鳴り響き。

 やれ、ソリのような乗り物が人集団を引き連れて蠢くなら。

 つまりはパレードであり。

 アピールに、ニコのウィザード風の人が手を振って。

 なお、その人は、俺が知ったるサンタクロースのような感じがする。

 赤地の服に、淵の部分に雪のようなふわふわした白をあしらった。

 上下の独特な服装に、ブーツ。

 俺と同じ、三角形のとんがり帽子に、そして、違いとしてはローブ。

 その人の顔には、だが、豊かな口ひげを蓄えていた。

 そうは言っても、どうもタイミング悪い。

 この夕刻過ぎた夜帳前にて、始まったようだ。

 身動きの取れない状況に、マフィン共々、落胆を覚えてしまう。

 「わぁ!!たのしそー!」

 アビーだけは、別で。

 パレードの煌めきに、心奪われていて、見入る。 

 また、視線でその先を追っている模様でもあり。

 俺とマフィンも、仕方なく追うなら。

 そのパレードの向かう先は、町の中央にある、遠くから見えていた、大きな樹。

 飾り付けられていて、らしい雰囲気を湛えていた。

 その場所に向かっているらしく。

 「?!わわっ?!」

 「えぇ?!」

 「えっ?!」

 パレードの集団の動きに合わせて、人波も動き。

 俺たちは結果、町外れではなく、逆方向に流されてしまう。

 三人とも、つい声を上げてしまうが。

 それしかできず、逆らうことは叶わないでいた。

 その中央に行けば。

 ツリーの頂上にあった巨大なスフィアが、不思議と降りてきていて。

 何事とつい思うが。

 《皆様!お集まりいただき、誠にありがとうございます!!これより、この日を祝して、点灯式を行います!!》

 「!!」

 ショーとは別のアナウンスの人が答えを教えてくれるようで。

 どこからかと見れば、広場中央の巨大な木の下に、ステージが設けられ。

 その上に、ニコのウィザード風の人がやっているようだ。

 どうも、あのスフィアの点灯式を行うようだ。

 まあ、この時期らしいイベントだが。

 例えば、イルミネーション点灯式とか、そんなみたいな。

 《では、早速、このスフィアに選んでもらいましょう!誰の手に触れるか!そして、誰が今年最後に〝スフィアの導き〟を得られるか!》

 「?!」

 「!……って、変なイベントだこと。素直に司会の人とかがすればいいのに、ほんと。」

 その点灯式だが、何だか独特な様子。

 そのスフィアに、誰かが触れることによって成り立つが。

 それは誰になるか明らかにされていないようで。

 スフィアに決めてもらうと。

 極めつけは、スフィアの導きとまで述べられて。

 マフィンは司会の人の話を聞き、呆れもしていた。

 「「おぉおぉぉぉ!!」」

 司会は俺たちのことなんて無視して進み。

 その巨大なスフィアたちは、宙を浮遊し始めて。

 群がる人々の頭上を通りはするが。

 しかし、手を伸ばしても、ジャンプをしても届かない距離。

 アビーなら、届きそうかもしれないが。

 そうであっても、人は手を伸ばして歓声を上げていた。

 「わぁ!!たのしそー!!あたしもあたしもー!!」

 やっぱりだとばかりに、アビーははしゃいでいる。

 先に述べたように、ここぞとばかりにアビーはジャンプしてアピールして。

 「!」

 と、巨大なスフィアは、軌道を変えて。

 何とアビーの所へ向かい飛行してきた。

 「……。」

 不思議なこともあるものだなと、思ってしまう。

 「!わぁ!!おっきーい!!!」

 「!」

 アビーは俺の近くにいるものだから、同じように分かるが。

 素直に言うことはその巨大さ。

 かなりの大きさであり、直径は1mあるんじゃないかと思うほどで。

 勢いよく直撃したら、ただでは済まないほどだろう。

 だが、そうならないほどに、緩やかな飛行は。

 まるで意志を持って飛行するかのよう。

 誰も傷つけまいという、ゆったりとした。

 質量を感じない飛行であった。

 やはりこれは、アビーに触れられるのだろう。

 「……。」

 見ていて、祝福したく思え、口を動かそうとした。

 しかし。

 「?!あれあれ?!」

 「え?!」

 そのスフィアはまた、軌道を変えて。

 アビーの跳躍が空しくなる傍ら。

  巨大なスフィアは、何と俺の眼前に向かってきたのだ。

 「えっ?!」

 俺は、つい言葉を失うが。

 スフィアは浮遊しながらもその場に静止するなら。

 まるで俺に触られることを望むかのようであり。 

 「……。」

 俺は、言葉を失うものの、スフィアがそう望むならと。

 また、それは同時に、人々の期待のようでもある。

 現に、スフィアの軌跡は追われていて。

 よって、その先に俺の姿を捉えるのは容易であり。

 結果として、注目もされてしまう。

 羨望もあるが、何よりも、彼らはその光輝く瞬間を待ちわびてもいる。

 ならばと、俺は手をそっと、そのスフィアに伸ばすなら。

 「!!」

 触れて。 

 その瞬間、待っていましたとばかりにスフィアは強く輝く。

 「!!わぁ?!」

 「?!ひぇっ!」

 合わせて、強い風が起こり、町中へと吹き渡っていくなら。

 町中にある、イルミと共に備えた、鈴の飾りを次々と鳴らして。

 音を今度は響かせていった。

 シャンシャンという清らかな音色が、町中に響き渡り。

 と、遠退いて一瞬の静寂が訪れる。

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