ふくびきでおおあたりー!!

 「……さあ、買い物は終わったんだし、そろそろ帰らないとね。」

 「!」

 俺が調子を取り戻したところでと、マフィンが言い示すのは。

 目的は終わったのだからと、帰路のことであり。

 また、表すように、時間もだいぶ夕方に迫ってもいた。

 冬のこの時期、暮れるのは早くあり。

 あんまり遅いと、暗い夜道をわざわざ歩かないといけなくなる。 

 村は、明かりこそあっても、夜道を照らす街灯はないに等しいし。

 「……アビー?」

 俺は反応したが、一人返事がない。 

 マフィンが言うなら、アビーは夕暮れる街並みにて。

 彩られつつあるイルミの輝きに、我を失って見入っていて。

 マフィンが声を掛けても、反応がなかった。

 「……はぁ。見入っちゃってる。」

 マフィンは呆れて、ぽつりと呟いた。

 「あ!そうだ……!」

 「!」

 「?」

 などと、こちらが注目していたなら何を思い出したか、思い付いたか。

 不意にアビーが声を上げる。

 アビーへの注目は、その一声で一層高まる。

 「福引!しないと……!」

 「!!」

 アビーの思い付きだかの答えは、福引についてであり。

 「……。」

 俺は気付いたものの、だがマフィンは珍しくピンと来ていない?

 リアクションがあまりない。

 ちらりとマフィンを見たなら。

 「……はぁぁ。引いてハズレを見るだけでしょうに……。早くいかないと、便がなくなるのに。」 

 「……。」 

 いや、はっとするリアクションではなく、どうせ、という決めつけのようであり。

 結果、時間を無駄にすると反発もある。

 「ふぇ?」

 アビーは、不思議そうにマフィンや俺を見るが。

 すぐに首を横に振る。

 「ん~ん!無駄じゃないと思うよ!だって、今日は幸せの日。願いが叶うかもしれないよ!」

 マフィンの諦め、拭うか、アビーはやけに自信満々に言ってくる。 

 その自信の、根拠とは?

 「やけに自信満々ね。……それで、その根拠は?」

 「!」

 俺と同じことはマフィンも思っていたらしく。

 ではその根拠はと、アビーに聞いてきた。

 同意に、俺は頷きを返す。

 「ん!スフィアの導き!」

 「!」

 「……スフィアの導き……ね。」 

 アビーは、笑顔で自信満々に告げることは。 

 スフィアの導きであり。

 俺はピンと来て、マフィンは懐疑的。

 さて、スフィアの導きか。 

 ジンクスであり、スフィアを扱う時に、祝福を貰える。

 具体的に言って、運のいいことが起こるというジンクス。

 「……アビー、あのね。それは、言い伝えであって、実際起こったとかいう記録はないのよ。結構眉唾物よ。」

 「えぇ~?」

 「あと、アビーはそもそも、スフィアを使いこなせないじゃない。」

 「えぅ~……。」

 なお、マフィンは懐疑的そのままに、注意することには。 

 それは、所詮都市伝説だとして。

 ついでに、スフィアを使いこなせないアビーが言えるものかとも、言い。

 アビーは、すっかりしょげて、項垂れてしまった。

 「……でもでも!!それだったら大和ちゃんのは、それじゃないの?きっと、そうだよ!!祝福があったんだよ!!」

 「?!え、そう?」

 と思ったら、すぐにあることを引き合いに出しては。

 顔を上げて、ぱっと顔を明るくする。

 引き合いに出したのは、俺。

 なお、出された俺は、堪らずぎょっとする。

 「……ふぅ。あのね、大和は……。」

 それにさえ、マフィンは言いくるめるとして、続けようと。

 「……あら?」

 「?」

 俺を見て、アビーを見て、軽く逡巡したが、途端マフィンは言葉を失って。

 困ったように、目を点にしてしまう。

 「……そう言えば……。どうなのかしら……?」

 困ったような口調になり。

 俺のことがよく分からなくなってしまい、最終的には首を傾げてしまう。

 「えへへっ!ねっ!」

 「……うぅ~ん……。」

 アビーは純粋に信じていて、マフィンは信じられていないと。

 マフィンは頭を抱えてしまう。

 「だからっ!沢山スフィアがあるんだから、きっと祝福もすっごーい!って思うんだ!」

 「……。」 

 純粋に、ジンクスを信じるものだからで。

 アビーはさらに言葉を重ねるなら、祝福を祈ってもいて。

 アビーがそうならと、俺は特に何も言えないでいた。

 マフィンも、頭を抱えたままであり。

 「だから行こっ!」

 結局はアビーに従う形になり、その福引がある場所まで行くことになる。

 「……うぅ。私は多分、ハズレばかりと思うのに……。」

 マフィンは、アビーに引きずられるような形であっても。

 自分の予想が正しいのではと続けていて。

 「……。」

 俺は、ずっと、静かについて行くことにする。

 そうして、町を進むなら。

 別のちょっと開けた場所にて。

 客引きか、あるいは、当たりでも出たか。

 手持ちのベルが威勢よく鳴り響いている。

 見れば、福引会場らしく。人だかりもそれなりにあり。

 簡素なテントの下に、スフィアとかのある文明らしくなく。

 アナログなガラガラの抽選機が備えられ。

 その側に、ハンドベルを鳴らす人がいて、やはり威勢よく声を出していた。

 なお、そのテントの中には、商品が展示されていて。

 出てきたボールの色に対応して、商品が渡される、まあ、よくあるパターン。

 一等賞は金貨とか。他にも、やたら豪勢に。

 俺が知ったるガラガラ抽選とは違い、一等賞といい景品が豪華な気がするが。

 そこは、文化の違いとしておこう。

 「ねねね!楽しそー!!」

 「……そうね。まあ、大した物は当たらないと思っているけどね。」

 会場に着き、アビーは楽しそうに弾み、一方マフィンは諦めている。

 進み、俺たちの番になるなら、それぞれチケットを提示する。

 「!あいよ!一人一回ね!」

 「うん!よろしくね!」

 側にいた人は案内して。

 アビーは真っ先に進み出て、ガラガラに手をやる。

 「えーい!!!」

 「……。」

 なお、アビーは勢いよく回す。

 普通は、そんな勢いよくやらない方がいいのに。

 傍らの、係の人は、注意することもなく、ただ見守っている。

 そうして、勢いよくやった抽選は。

 「はい!残念!ハズレでしたー!ありがとうございました!」

 「えー!」

 勢いにもかかわらず、出てきた球体はハズレの色であった。

 係の人は、残念だったと告げて、アビーは言われて、ショックを受けていた。

 「はい!ハズレは幸せの日のお菓子セット!」

 「うぅ~……。いい日だと思ったのに……。」

 「……へぇ。」

 そうして、ハズレの品が渡されるが、それでも結構いい物だと思う。

 アビーは残念がるが。

 渡されたのは、小さくまとめられた、クッキーやチョコレートのセット。

 俺は想像していたのと違うと、意外そうに溜息をついた。

 何せ、ポケットティッシュのような物だと思っていたから。

 「……ふぅ。やっぱり。」

 アビーの後ろに並んでいたマフィンは、やっぱりといった感じに、溜息を。

 言われたアビーは、何も言わず。

 残念に項垂れながらも、そこから離れて。マフィンの番になる。

 マフィンは、指示されている通りの速度で回しては。

 「はい!残念!ハズレでしたー!ありがとうございました!」

 「ほら、やっぱり。」 

 マフィンのもハズレ。

 なお、マフィンは残念がる様子もなく。

 やっぱりだとして。

 その裏には、スフィアの導きとやらを、信じてはいないと。

 お菓子セットを丁寧に貰っては、下がった。

 最後は俺。

 「……。」

 軽く息を吐いては、進み出る。

 ガラガラ抽選機に手をやると、嫌に緊張してしまった。

 大したことじゃないのに。

 後は、ただ単に回すだけだとして、レバーを動かした。

 「?!」

 その瞬間に、妙な感覚がして、目を丸くする。

 「――来る?!……何が?」

 ただ、その感覚だけであり、何が来るかは分からない。

 ガラガラ抽選機を、それでも一蹴回すなら。

 「!」

 玉が落ちる瞬間に、清らかに透き通る音を耳にする。

 それは、スフィアの音色。

 現に、抽選機の口から、煌めきを発する透明な玉が出てきた。

 「……?スフィア……?」

 それが、スフィアであると分かるならぽつりと呟いてしまう。

 そう、スフィアだ。

 小さいが、気高く光を発している、立派なスフィアだ。

 ……でも、それが何を意味するかは、分からない。

 結果を判別するお皿に、ゆっくりと浮遊しては着地するなら。

 「大当たりー!!!!」

 「?!」

 係の人は、高らかに、それこそ町中に響きそうなほどハンドベルを鳴らして。

 知らせるのは、大当たりだと。

 何事と俺は思ってしまう。 

 そうは言っても、大当たりだとして。

 近くにいた人たちも手を叩いて、当てた俺を称えてくる。

 「特賞・〝ニコのウィザード〟なりきりセット!!」

 「……?」

 その拍手のファンファーレの中。

 俺に手渡されてくるのは、いわゆるコスプレセットのようであり。

 何事と首を傾げてしまうものの、丁寧に受け取る。

 「……ええと、ありがとう……ございます。」

 やや呆然とした具合でありながらも、俺はお礼を言って。

 その呆然としたまま、下がり、アビーやマフィンの元に。 

 「!!大和ちゃんすっごーい!!」 

 戻ったなら、早速アビーが言ってきた。

 さも、自分のことのように喜びを露にして、飛び跳ねながら。

 「……おかえり。不思議なこともあるのね。」

 マフィンが次に言うが、俺同様呆然としながらも言って。

 信じられないといった様子。

 「……。」 

 そこから、どう言おうか分からずにいて。

 「……。」

 軽く息を吸っては落ち着かせ、貰った商品をよく見るならば。

 コスプレセットと同じような、赤色の三角帽子と。

 ローブなど、伝説上のその人なりきりセットだと感じて。

 「……?」

 であるからこそ、不思議そうに首を傾げる。

 何だか、特賞という割には、安っぽいような。 

 気になり首を傾げてしまう。 

 「!大和ちゃんどうしたの?何か具合でも悪いの?」

 「!……いや、具合は悪くない。けど、ちょっと特賞という割には、安っぽいような……。」 

 「?そう?」

 その様子をアビーが気付いて聞いてくるが。

 俺は首を横に振り、そうではないとしても、感じたことを素直に述べる。

 アビーはよく分からないと、首を傾げて。

 「いいえ、安くないわ。」

 「!え?そう?」

 マフィンは、俺の呟きを耳にして、よく見たらしく。

 俺の言った意見を否定してきた。 

 なぜと、俺は余計に不思議に首を傾げたら。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る