おしはらいとにもつはこびっ!
「あ!ねねね!ウィザードセットってあるよ!大和ちゃんにピッタリ?」
アビーもまた、興味津々として見ているが。
言ってきたのはそれで。
「……アビー……。本人が本人のフリをして、どうなるの?……。」
返事に俺は、複雑な思いを吐露した。
ここに本人がいるのだ、わざわざ扮する意味がない。
「あれ?あ、そうだった!てへへっ!」
「……。」
本気で思っているのか、冗談かは分からないでいるが。
アビーは、舌を出し、おどけたように振舞う。
俺はまだ、複雑であるが。
まあ、アビーらしいで片付けよう。
「ちょっと!!あなたたち!!見て回っていないで、手伝いなさい!!」
「!あ、うん!」
「!あ、は~い!!」
そんなやり取りしていたら、遠くの方からマフィンが声を上げてきて。
手伝ってと言ってきて。
なら、このやり取りもここまでにして、早速マフィンの手伝いに向かう。
そうして、買い込む手伝いに向かうが。
村中のプレゼントや、必要な飾りやらで、大量。
……新年用にも何かあるようで。
ちょっとした座布団のような物。
なお、ボロ布で作った物ではなく、やたらとちゃんとして。
そう、高級そうな雰囲気漂う物。
なお、人が座るにはあまりにも小さいのだが。
「!ああ、これ。」
「!」
つい見ていたら、マフィンが幸い、説明をしてくれるよう。
「新年を迎えるように、ってね。」
「へぇ。」
「この上にスフィアを載せて、神棚とかに置くの。新しい年を、スフィアの祝福と共に迎えるってね。」
「……なるほど。」
マフィンが言うことには、これはスフィアを載せるための物らしく。
新年を迎えるにあたって、スフィアをそこに載せて、一緒に祝うのだとか。
納得に、頷く。
「……。」
なお、それだけを買いにわざわざ町に出向くわけではない。
他にも、子どもたちへのプレゼントもあり。
結果、荷物は膨大。
抱えて持っても、眼前が塞がり、色々と危なく思える。
苦戦しながらも、レジに持って行った。
「おや!今日は多いね、お客さん。」
「……。」
レジにて、店員さんが世間話一つ、言ってくるが。
俺は、荷物持ちと、苦戦にやや疲弊して、何も答えられないでいるが。
「まあ、上の村の子どもたちや、家族の分もありますから。」
代わりに、マフィンが答える。
「!はぁ!あの、ウィザードの住む!!いやはや!これはこれは、大変なことで、全く!ありがたいものですわ!」
「ええ。こちらこそ、幸いですわ。」
店員さんは上機嫌になり、ありがたがる。
マフィンはマフィンで、幸いな時間だと喜んでいた。
「……っと、話はそこそこに、お会計をお願いします。」
「!!おぉ!すみません!ウィザードの住む村の人と聞いたものだから!」
「……。」
その世間話もそこそこに。
それは、店員さんの仕事にも差し支えるとして。
切り上げては、目的に興じるとして。
店員さんも、ついうっかりとしていたと、自分の仕事に戻り、会計を始めた。
なお、ウィザードの住む村から来たとしても。
誰も本人が今、巨大な荷物を抱えて佇んでいたとは思っていまい。
寂しくもあるが、幸いにも思える。
「……っと、会計は以上です。」
「ええ。」
計算が終わると、金額が表示されて。
マフィンは支払うとして、ポケットに手を入れたが。
「はい!」
「?!」
先に手を出して、支払いをしようとしたのはアビーである。
さらに、取り出したのは20mmの水晶玉、いやスフィアだ。
「えへへっ!マフィンちゃんに払わせると、何だか悪いかなーって。」
「……。」
「……。」
何を思って取り出したか知らないが。
とりあえず、アビーはマフィンを気遣って。
何かしたといしてそうしたのだろうが。
そうなると提示した店員さんも、支払おうとしたマフィンも。
なぜだか唖然としてしまう。
「……?」
なお、よく分からないでいて、俺は首を傾げた。
「……アビー。スフィア一個どれぐらいすると思っているの?」
「?」
「……思っていないようね。」
マフィンは、唖然としたままだが、注意しようとして。
始めに価値を尋ねると、アビーはよく分かっていない様子。
「!」
また、ちらりと俺を見てもきて。
何でだろうと、ついびくりと体を跳ねさせるなら。
「はぁ。この際、二人に教えておこうかしらね。」
溜息つくなら、何か注意をしだそうと。
それも、アビーだけじゃなく、俺も含めて。
「そんなにスフィアをポイポイ出さないの!」
「!」
「スフィア一個で、最大までエネルギーがあったら、普通2か月生活できる分はあるのよ。それに、今日買う分だと、お釣りがくるレベルなのよ。店員さんを困らせないことね。」
「え?そーなんだ。」
「……いつも一緒にいるのに、気付かなかったのかしら。」
注意に次いで、価値の説明をするなら。
スフィアにはその、普通に生活するなら。
2か月は余裕で暮らせる価値があるとのことであり。
今日買う雑貨には、それほどの値段はしないのだから。
うかうか出すと、大量のお釣りが出るほどだとして。
なお、言われた本人は、価値があることを気付いていないようで。
言ってマフィンは頭を抱えた。
「……ああ……。」
一方で俺は、何となく理解しそうになる。
以前、鉱山に向かう途中で、お弁当代わりにパンを買って行ったが。
その時店員さんが困っていたのはそういうことかと。
あまりにもお釣りが出るほどの価値がために。
……どうりで……。
「話はそうとして、支払いは私のを見なさいな。」
「!」
話は変わって、支払いは実演するから覚えるようにと、示して来て。
俺は、マフィンをちゃんと見つめた。
マフィンもまた、アビー同様スフィアを取り出すが。
「?」
置いた所は、レジすぐ側、円形の金属製の皿にそっと置く。
アビーと似たような感じがするが。
「!」
すると、何をしたか、スフィアが明滅して。
「はい!お買い上げありがとうございます!いやはや、賑やかですな。嬉しい限りですわ!」
「?」
店員さんの一言によって、会計が終了したと分かる。
分かるが、……実感がない。
疑問に首を傾げていると。
「これが、支払いよ。」
「!」
マフィンは言って、自分のスフィアを戻し。
また、アビーのスフィアも戻す。
「……?」
丁寧に説明したので、失礼かもしれないが、俺にはやっぱりピンとこない。
「エネルギーを移譲したのよ。……あなただって、前世とか、前の世界でもそうしていたのでしょ?」
「!!……う~ん。」
俺がまだ、腑に落ちない様子に。
重ねては前世とか、前の世界のことを引き合いに出して言うが。
悩む。
基本は、普通に硬貨やお札で払い、時にはクレジットカード。
人によっては、ケータイやスマホで支払う、なんとかペイとか?
エネルギーのやり取りではないが、普通に通貨のやり取りでなら。
「前世だと、硬貨やお札とかが基本であったからなぁ。あ、でも、スマホとか通信機器に、タッチして払うようなやり方なら、あった。」
悩み思考した先に、マフィンへの返事に告げて。
「……硬貨がどうの、は分からないけど、機械に触れての支払いなら、全く異なることでもないわよね。」
「……そういうものか。そういうことにしよう。」
マフィンには、その通貨とか硬貨とかの概念は通じていないが。
なんとかペイのようなやり方は理解してくれたようで。
なら、俺もそう言うことにしておく。
形容するなら、この支払いをスフィアペイとでもしておくか。
「……まあそれよりも。覚えておきなさいよ!」
「……はい。」
なお、マフィンは先ほどの話はどうであれ、覚えておくようにと言ってきた。
俺は、素直に従っておく。
「……アビーも!」
なお、俺だけではなく、アビーにも言っていたつもりだったが。
当の本人はどこ吹く風、支払い終わったとして。
暇潰しにまた、レジ横を見て回っていた。
そこでマフィンは注意したなら。
「!!あ、はぁ~い!」
「……。」
遅れて、アビーはちゃんと返事はした。
明るく、能天気ならしい笑顔での返事であるが。
はたして聞いているのかどうか不安になる。
「……。」
マフィンもまた、同様に思っているようだ。
「!おっと!お客さん!ついでにこれも持って行ってよ!」
「!……あら。福引券。」
「!」
そのやり取りは、別としても。
買い物して帰ろうとした矢先に、店員さんが止めるなら。
その手には、ちょっとした紙が握られていて。
見ると、福引券らしく、それも3枚。
「結構な買い物をしてくれたからね。これもよろしく!」
「ありがとう。いただきます。」
「……ありがとうございます。」
「ありがとー!!」
どうやら、結構な額の買い物をしたがために。
おまけをつけてくれるといった感じでの配布らしく。
好意を無駄にすまいと、俺、マフィン、アビーはお礼を言って。
丁寧にそれぞれ受け取った。
そうして、雑貨屋を後にする。
「……。」
問題は、外からこの大荷物をどうするかといった具合。
店の中では、店員さんが持ってきてくれたが、さて。
「!」
と、荷物抱えて前が見えない中、不意に重みがなくなる。
「……?」
何でと思うなら。
「!」
スフィアが数個、荷物の周りを舞い。
なんと、重そうな荷物を光で包み、持ち上げていたのだ。
やったのは……。
探せば見つかる、その人物は。
「マフィン……。」
マフィンだった。
呟くなら、寒空に手を晒しているマフィンがいて。
微かに動くマフィンの指や手の動きに合わせるように、スフィアは動く。
「……。」
視界は開けて。
だが、この不思議そうな光景に、何も言えないで。
その大量の荷物浮遊を見つめてしまう。
「……これぐらい、できないとね。」
「!」
俺が見つめている側で、マフィンは、当然だという風で言い。
「……ぬぅ。そっか。」
敵わないなと、思ってしまう。
マフィンの器用さは知っている。
スフィアが搭載されている物なら、何でも扱える。
まして、スフィア自体でなら、フォトンシールドを器用に展開して。
このようにキャリーケースよろしく、荷物を持つことも可能。
器用にスフィアを扱る、マフィンならではだな。
感心と共に、軽く未熟さを感じて、残念がる思いをする。
「……まあ、料理は難しいかもしれないけれど、荷物の持ち運びぐらいは、あなたでもできるわよ。」
「!……そっか。」
なお、俺が残念がるものだからと、マフィンがフォローを入れてくれる。
それに元気付けられ、俺はぱっと顔を上げた。
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