しあわせのひってなぁに?

 「……。」

 俺は、アビーとマフィンと一緒に、町に買い出しに来たのだが。

 町の様子は、少し幻想的な感じになっている。午後も過ぎた、その先の時刻。

 イルミネーション、赤と緑の色合いの、独特な飾り。

 ヒイラギの葉っぱと金色の鐘を取り付けたリース。

 プレゼントの箱を模した飾り、玉のような飾り。

 遠くには、大きな木があり、それにも同じようにイルミネーションやら。

 らしい飾り付けが成されていた。

 知ったる、クリスマスの様相だろうか、形容にはその言葉が浮かぶ。

 まあ、違いとしては、似つかわしくない透明な球体があり。

 いわゆる、クリスマスツリーの頂点には、一般的な星型のそれではなく。

 これも球体。

 「!」

 色合い的に、不釣り合いではないが。

 何だか味気もないと感じていたころであるものの。

 そっと、近くのその球体に触れるなら、クリスマスとは別だが。

 らしい物を感じる。 

 当然、スフィアである。

 見れば、イルミネーションの電飾のリズムに合わせて、明滅を繰り返して。

 また、副作用であるか分からないが、その度に光の粒を弾けさせ。

 辺りにより幻想的な雰囲気を作り出している。

 寒空の下、舞う光の粒と、雪。

 ふと吐いた息は、白く、つまりは寒さを示す。

 「……ぬぅぅ。」

 軽く身震いしてしまい、どうしたものかと考えてしまう。

 この時だというのに、俺は、いつもの服装のままだ。

 上着を着ればよかったが、生憎と、それを持ち合わせていない。

 「……?」

 だのに、他二人はどうも寒くなさそうである。

 なぜかと、首をつい傾げてしまう。 

 「ええと……アビー、マフィン?」

 「え?」

 「ん?」

 側にいた二人に、声を掛けたなら。

 なお、二人はそれぞれ、振り向いて。

 また俺が不思議そうにしているものだから、二人とも、不思議そうな顔を返す。

 「……寒くないの?マフィンはともかく、アビーは……。」

 そのことを、つい聞いてしまう。

 もう少し、この場に合ったことを聞けばいいのだが。

 まず気になった二人の姿についてであり。

 マフィンはゆったりとした、長袖の服装であり、この場にらしくあるものの。

 まあ、それでも寒さを感じないわけじゃあるまいて。

 一方で、アビーは、明らかに寒そうな服装だ。

 いつもの、半袖、短めのスカート。

 寒さに、耐えられないのでは、疑問に思う。

 「ん~ん!寒くないよ!」

 「私もよ。……というか、何でその質問するの?」

 「!……。」

 アビーは元気よく寒くないと言い。

 マフィンは、その質問の意図が分からないという様子。

 そうされると、逆に俺がおかしいのではないかと思えてならない。

 おかしいのだろうか、首をつい傾げてしまう。

 「!!」

 マフィンは何か気付いたか、目を見開いて。

 「……ちょっと、大和……。震えているじゃない。」

 「!……ってそうなんだよ。」

 それは、俺が震えていると軽く驚いていて。

 そも、それを聞いたのだと俺は返した。

 「……ねぇ、大和。あなた、スフィアを使えるんだから、使いなさいよ。別に減るもんじゃないし。」 

 「……?スフィアを?」

 さて、まずと解決策を言いだすが。

 それもどうも、スフィアを使うことのようであり。

 だが、いまいちピンとこない俺は、またまた首を傾げてしまう。

 「……私、時折思うのだけど、あなた、抜けてるときあるわね。」

 「!……ううむ……。」

 解決策があるのだから、すぐ気付くものだとしても。

 マフィンは、呆れて続ける。

 俺は何とも言えないでいるが。

 「……どう使うの?」

 呆れへの反論よりも、どう使えば、解決するのかと聞いた。

 「簡単よ。起動させて、後はポケットにでも入れればいいの。簡単なことよ、ほらアビーだってやってるし。」

 「え?!」

 意外そうに答えられ、ぎょっとしてしまう。

 たった、それだけでいいと。

 やれ、フォトンシールドを張るだの、レーザーを放つだのなんだの。

 他、何やら複雑な操作なんて、必要なく。

 簡単が意外で、目を丸くしてしまった。

 アビーをつい見たら。

 「えへへっ!これは大和ちゃんに勝っちゃったね!」

 「……ぬぅ。」 

 簡単なのだからと、軽く笑われてしまう。

 少しだけ、歯痒い思いをしてしまった。

 「……。」 

 このまま、笑われてばかりも癪だ、俺は、ポケットに手を入れるなら。

 スフィアを一つ取り出して、両手に包む。

 光が溢れるなら、またポケットに入れると。

 「!!」

 急に、体が温まりだす。 

 見れば、光は全身を包み込むように発生していて。

 そう、自分自身が輝いているかのよう。

 影響にか、外の様相とは裏腹に、スフィアを持つ自分自身は、やたら温かく。

 そうであっても、吐いた息が自分より遠ざかれば、白く寒そう。

 「……へぇ。」

 その光景に、つい感心の溜息をついた。

 「これで、便利な使い方を覚えたわね。まあ、スフィアを使って暖を取る、なんて、昔話じゃよく聞くことよ。」

 「だね。」

 俺がそうするものだから、多分理解したとしてマフィンは言う。

 ついでに、どうも昔話にも話されるほどだとして。

 そのことは別としても、俺は頷いた。

 「さて……。」

 温かくなったところで、町の周りをよりよく見るなら。 

 この、クリスマス真っ盛りのような光景に、何かあるかと。

 「!」

 子どもたちの歓声が聞こえて、つい注目するなら。

 寒空なのに、アビー同様半袖。下は短パンの子どもたち。 

 何か、ごっこ遊びのような姿をしている。

 丁度、虎猫のような柄の。

 また、その子どもたちの全員、片方の腕には何か板のような物を付けていて。

 さながら、盾だ。

 そう、俺のような。 

 「!もしかして……。」

 つい言葉を漏らすと。

 「あら。すっかり有名ね。」

 「あ!大和ちゃんみたい!」

 マフィンとアビー、それぞれ見ては、口走るなら、そう、俺だと。

 俺の真似をして、子どもたちは遊んでいたのだ。

 「今回は、特に盛り上がるでしょうね。」

 「!」

 マフィンは含みのある言いようで続けて。

 耳をピンと立て、気付くことには。 

 それは、帝国が崩壊した後だとして。 

 「もしかして、帝国が崩壊したから、なおさら?」

 「ええ。そうよ。毎年、この時期にはいつもこんな飾りつけだけど、皆どこか後ろめたい感じがしていたのよ。でも、今回は特別。あなたが言った通り、帝国が崩壊したからね、心の底から、祝福するのね。」

 「……。」  

 もしかしてと、尋ねたなら。

 マフィンは、そっと、柔らかな笑みを口元に浮かべてはそうだと言い。

 俺は、感心にか、つい黙ってまた、町の様子を見渡してしまう。

 マフィンの言う通り、後ろめたい様子は感じない。

 子どもも、その様子を見る大人たちも、また、行き交う人たちも。

 笑みを浮かべているが、そのどれも、心の底からのよう。

 それは、平和になった情景であった。

 「あなたのおかげね、〝ウィザード〟。」

 「!!……う、うん……?う~……。」

 だからこそ、マフィンはそう、お礼も含めて言う。

 誉れ高き、存在の名前を。

 が、言われた俺は、複雑で。素直に頷けないでいた。

 「ふふっ。まあ、見とれていないで、早く買い物して帰らないと。暗くなるとお婆さまが心配なさるわ。」 

 「!」

 俺が逡巡しているものだから、軽くマフィンは笑い。

 また、このままいてもいいが、心配する誰かがいるからと。

 早く買い物を済ませて帰ろうと催促する。

 気付いて、俺とアビーもマフィンのそれに従った。

 「……。」

 そうしてまた、町を歩くことにあるが。

 「……?」

 クリスマスだろうけれども。

 しかしどこにも、それらしい文字が見受けられないでいる。

 なぜだろうかとさえ。

 BGMだって、それらしい、透き通るような音色の音楽だというのに。

 歌詞にも、ない。 

 疑問に俺は、首を傾げてしまう。

 「ねぇ……。」

 「ん?」

 「あら?」

 疑問につい、声を掛けて。

 すると、二人は足を止めてまた、俺を見て。

 「今日って何の日?クリスマス?」

 「え?!」 

 「ふぇ?!」

 「……あれなんかまた、変なこと聞いた?」

 聞くと、また、マフィンとアビーは、不思議そうにしてしまう。 

 俺はまたまた変なことを聞いてしまったのかと、困りに、首を傾げて。

 「くりすますってなぁに?」 

 「?!えぇ?!」

 その二人の中で口を開いたのは、アビーで。

 聞かれるものの、言ったアビーから感じることは、ほとんど知らない様子。

 つい戸惑う。

 マフィンについ目配せするが、マフィンも首を横に振り。

 やはり知らないという様子だ。

 「……。」

 つい、困ってしまう。

 知らないとなると、どう説明したものか。珍しく俺は、頭を抱えた。

 「じ、じゃあ、サンタクロースとか?」

 「さんた?さんどいっち?食べれるの?」

 「サンタ……ん?聖なる……とかの名称?」

 「……。」

 試しに話題に上がりそうな名前を告げるが、二人とも首を傾げるばかり。

 アビーに至っては、食べ物と勘違いされる。

 「ええと、有名な人の誕生日とか、プレゼント配るとか、後はケーキを食べるとか……。」

 「え?!誰かの誕生日?お祝い?ううん、ケーキ?!」

 「……誕生日の方はピンとこないわ。けど、プレゼントを配るというのなら、ピンと来るわね。」

 「!」 

 やや、必死になって、該当するワードを続けては。

 アビーは相変わらず、食べ物のことばかり。

 特にケーキという単語には過剰に反応を見せる。

 とても、食べたそう。

 一方のマフィンには、何か該当する言葉があるらしく。 

 俺は希望を見出して、つい顔を明るくした。

 マフィンは俺の言葉を聞き、軽く思考するように、顎に手を当てては。

 「大和、あなたが言っているのは、いいえ、聞きたいのは今日この日のこと、つまりは〝幸せの日〟のことね?」

 「うん。……うん?」

 「あら?何かおかしかったかしら?」

 紡ぎ出すことは、〝幸せの日〟ということで。

 それは、聞きたかった答えでしょうという感じにマフィンは告げるが。

 俺は、最初頷きはしたが。

 だが今度はこっちがピンと来なく、また首を傾げてしまう。

 〝幸せの日〟?何それ?

 その疑問が噴出する。

 「……何それ?」

 勢いは、口をついて出た。

 「え?!」

 「え?!」

 「……えぇ~……。」 

 本当は、そういうだけで通じただろうに。

 だのに、俺がそう言うものだから、二人は逆に驚いてしまう。

 「……もしかして、知らないの?」

 「あ、うん。」

 マフィンは、その驚きながらも、聞いてくる。

 俺は、素直に頷いた。

 「……子供でも知っていることなのに……。」

 マフィンは、あまりにも知らなさすぎることに困惑。

 「うぅ~……。ごめんよ。」

 困惑させたと、俺はつい謝り、頭を下げてしまう。

 「!!あ、待ってマフィンちゃん!大和ちゃん、知らないんだよ!だって、あたしが出会ったの、ちょっと前だもん!」

 「!!」

 「!」

 謝り、頭を下げていた俺と、困惑のマフィンにアビーが一言。

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