第9話 初心者ダンジョン攻略

 2階層からはゴブリンに加え、時折オークが出始めていたが順調に進み、3階層、4階層と進んで行くと割合いが変わってきた。

 ルナには後方を守って貰い、基本的には後方から来る奴だけは都度倒し、それ以外は当夜の指示がなければピンチでの緊急時を除き助太刀しない事にして、基本的にシャクラ、アモネス、レグナスの3人の戦闘経験を積ませる事を優先にした。当夜は戦闘経験は皆無に等しいが、規格外の魔法の強さから経験を積む必要がなく、魔法の試し打ちで時折魔物を倒す程度で良かった。


 おそらく途中でレベルが上がった為だろうか、シャクラとアモネスの魔法の威力も上がっている気かするし、レグナスの剣の早さが上がっているようだと当夜は感じていた。

 レベルはギルド等でキューブを魔道具にかざすと出るが、ステータスの表示が出来ないので、レベルとギルドランクがある意味強さの指標となっていた。今現在知られている最高のレベルはSSS級の者のレベル10だった。レベルが上がるとステータスが上がるのだが、残念ながらステータスを確認する術が無いという。


 当夜がアイスアローを試した所、皆が絶句していた。

 数発を【ドドトド】との音と共に連続発射したからだ。


 三人も余裕で戦っていたので5階層に降りた所で昼食昼タイムにした。

 階段を降りた所はセーフティーエリアらしいので魔物は湧かない筈だが、当夜の指示で一応背中合わせで警戒しながら食べていた。


 荷物が軽くなり、万全の状態でボス部屋に向かっていったのだ。

 昼食にしたのには荷物を減らしたいというのが大きかった。


 ボス部屋に着くと先客がいたのだが、誰かが入っていて終わり待ちだった。


 講習でルナに色目を使い、ナンパしてきていた粗暴な奴等だった。


 15分位して扉が開き、一時間もちんたらしやがって等と聞こえたがいそいそと男4人組の奴等が入っていった。


 ボス部屋は誰かが戦っていると扉が閉まり、終わると開く。

 もし冒険者が死ぬと装備とお金、キューブがその場に残ると聞いていた。もし見つけたら見つけた者に所有権があるが、少なくともその冒険者を殺したボスを倒さないといけない。キューブだけはギルドに持ち帰るのが、冒険者としての暗黙のルールだ。


 1分程で扉が開き早いなと皆が驚いていたが、早くやっつけて宿で休みたいなとなり、余りにも早く扉が開いた意味を、誰も考えなかった。


 早速部屋に入ると入り口近くに何やら物が有るので、皆で近付くと驚いた事に先の奴等の装備品とキューブがあった。

 あっ!と思うと無情にも扉がギギギと音を立てながら閉まっていったのだ。


 当夜は4人に奴等の剣に持ち変えるよう指示をした。奴等の装備の方こちらの武器よりかなり上等だからだ。


 部屋は15m四方位の部屋で中央付近に何かが輝き出したので三人を角に押しやり、魔法で援護するように指示をして、ルナと現れる奴に対峙した。

 出てきたのはケルベロスでB級モンスターとルナが言う。角に向かっていたレグナスに向けて火球を放ち、後ろを向いていたレグナスが気が付くのが遅れ、振り向きざまにまともに喰らってしまい火ダルマだった。当夜が即、ウォーターボールで火を消した。お陰で装備がオシャカになったのと、レグナスが動けないが一刻を争うような致命傷でない。しかし、放置すると死に至る状況と確信した。当夜が斬りかかったが、前肢で蹴飛ばされ吹き飛んでいった。シャクラとレグナスが魔法で援護をしてくれている。


 追撃しようとしたケルベロスに、ルナが斬りかかり、途中でお互い一旦距離を置いたので、当夜は隙をついて20発位のアイスアローを、ドドトドドドトドと連射し、更にケルベロスへ連続発射していった。そして遂に、前肢を吹き飛ばした。その後体に数発当たると動きが悪くなり、ルナが首を刎ねて終わった。


 ドロップは魔石と2人分のドラゴンの皮鎧で、最初に血を垂らした者に合わせたサイズへ、適切なサイズに変わるマジック装備だ。当夜も鎧がオシャカになったので有りがたかった。大きさからして当夜とルナに合いそうだ。流石にサイズが変わるといっても胸囲が調整されるレベルで、鎧の高さまでは変わらないのだ。シャクラ達には大き過ぎる。


 取り敢えず気絶しているレグナスを見ると火傷が酷く、服も上半身から下腹部にかけて半ば焼けていてズボンは脚の所だけが残っている状態だ。抱き寄せて鎧を脱がせヒールを掛けるが、鎧を脱がせた時に違和感があった。何故かサラシの残骸があり、胸元がやけに厚いのだ。

 しかしそんな事に構っている暇はなく、魔力を強く込めてヒールを使うとみるみる回復してお腹の火傷が治り、半ば炭化した胸元だったが、どんどん癒されて、なんと徐々に膨らんできた。そして見事な双丘が現れたのだ。

 ついでに生活魔法にあるクリーンを使うと煤も失くなり、その白い柔肌と完全な姿の双丘がお目見えし、当夜は口をポカーンと開けていたが、ふと思い至り、念の為ズボンが焼けて露になった股間を確かめると、男性のシンボルは無かったのだ。そうなのだ、今まで男と思っていたレグナスだが、とても綺麗で誰もが羨む見事な双丘を持つボーイッシュな美少女だったのだ。

 慌ててルナに身に付けているマントを外して貰い、レグナスに掛けてあげて、後れ馳せながら自分自身にヒールを掛けて打撲を治した。

 次に壊れた鎧を外して、当夜は自らの上衣を脱ぎ、当夜の着ていた服をシャクラとアモネスによってなんとか着させた。


 ボスを倒した周辺を確認すると宝箱があり、中を確認すると残りの3人が装着できそうな鎧が入っていた。何の事はない、全員分の同じ種類の鎧が手に入ったのだ。


 鎧は手と脚は出るが体はすっぽり覆ってくれる。アモネスとシャクラにドロップの鎧にレグナスの血を垂らしての装着を頼み、鎧を着させて血を垂らすと、鎧の大きさが微妙に変わり始めてピッタリの大きさの鎧に変わってくれた。


 倒されていた冒険者の装備を確認したが鎧は普通の物で特にこれと言って特徴がなかった。お金が約30万G位で、他には魔石と回復薬以外が合ったが、他にはアイテム等は無かった。出口が開いているので、鎧を出口から外に放り出してキューブを袋に詰めてから背嚢にしまった。


 交代交代で全員この場で鎧を着替え始めた。当夜の鎧はおしゃかになったので、今までのは捨て置く。


 ドロップの鎧を全員が装着したのを確かめて、当夜がレグナスをお姫様抱っこしてボス部屋から出たのだった。

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