第8話 二度目
「オマエならどうする? コースジャン」
「土塁を二重三重に築きます。しかしながら、これらの土塁はすべてダミーで、敵を奥へ奥へ誘き寄せます。土塁はだんだん狭くなるように作ります。それから、誘導した先の行き止まりにわらを敷き詰めます。大軍がなだれ込んで来た先に火油をまき、おまけに火矢を放つと、ヤツら押すも引くもできず、火だるまになるでしょう」
「いい作戦だ。しかし、誘いに乗ってこなかったらどうする?」
「ヤツらが船から降りたら、最後。海では小船で本船に近づき、火矢を放ち、船を燃やします。さらに保険もかけておきましょう。泳ぎの得意なものを船まで泳がせ、船体に穴を開けさせます。船が燃え、沈み、本国へ帰ることができないとわかれば、兵どもの士気はかなり落ちることでしょう」
「その作戦で行こう」
ミニングアック将軍とコースジャン部隊長は作戦会議を終え、神聖サハルト帝国の襲来に備えるべく、各所へ指示を飛ばした。
一度目の侵攻作戦より船団を十増やしての再戦だった。ゼックハウザー海将の率いる船団が湾に入ろうとしたその時、
「閣下。変です」とナガメが忠告した。「静かすぎます。我々が来ていることはすでに知っているでしょうに、迎え撃つ気配がまったくありません。これは、我々に来いと誘っているようなものです」
ナガメは望遠レンズをのぞき、湾上の高台に目をやった。何人か動きがあった。敵兵が待ち構えていることを確認し、彼女の懸念を確かなものとした。
「閣下。これはおそらく、我々が上陸を果たした瞬間にこの船に火矢を放ち、沈没させる腹づもりでありましょう。そして、この静けさ。おそらくは兵を内陸奥深くへと誘い込み、何らかの策で一網打尽にするつもりでしょう」
「軍師。ではどうする?」
「上陸場所を変えましょう。ヤツらもびっくりするはずです。おそらくは土塁かなにかを築いているでしょうから。それが使えない場所に上陸するとは、夢にも思わないはずです」
実際にその通りになった。
飛鳥ノ国側では船団が進路を変えた時には、焦った。すぐに早馬を飛ばし、上陸の可能性のある場所を調べさせ、迎え撃つ準備をしたものの、これは実はフェイクで、行ったと見せかけて、実はふたたび戻ってくる可能性もあったため、対応が遅れたのだ。
ところが、幸運はまたしても飛鳥ノ国に味方した。今度は海上で突然竜巻が起こり、船団がめちゃくちゃに破壊されたのだ。これには、沈着冷静なゼックハウザー海将の堪忍袋の緒が切れた。
「ナガメ…天体博士を呼んでこい! 一度ならずも二度までも。この俺、自らの手で首を跳ねてやるわッ」
船団は壊滅し、ふたたび飛鳥ノ国は戦わずして勝利を収めたのだった。
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