第07話 幼馴染
現在、ガイアと国軍が睨みあうそんな構図となってはいるが、国軍にとって龍と対峙するなんて多分初めてのことだろう。態勢はとっているがどこかぎこちない様に僕には見えた。
そしてそんな睨み合いがしばらく続いた後に国軍は攻撃してくることもなく、集団から3騎飛び出しガイアとある程度距離を取りながら近付いてくる。
そして中央の1騎に乗る顔を隠した青い服を着た兵士が声を上げた。
「そちらはこの山の主ガイアと思われますが、何故こちらに居られるのでしょう? 」
と。それにガイアはすぐに答える。
「山に侵入しようとする輩が来ると聞いてね。たまには相手でもしようかと出てきたわけだ、人の子よ。もし山を、村を傷付けるのなら容赦はしないよ? 」
その答えに顔を隠した人は
「失礼しました。では、まずはなぜこのようなことになったのか話をさせてもらいたいと思うのですがよろしいですか? 」
とガイアへと説明をしたい旨を伝えてきた。そのため、僕はガイアへ鱗の下に隠れたまま頷きを見せ話を聞いてもらうことにした。
龍の住む山はここ以外にもあると言われている。そして実際この村より首都の近い場所にも山があり、そこはザイール山と言われているらしい。その麓にある村もこの村と同じように使獣の対処をしていたが、同様に被害を受けなくなっていた。そのため、村に話を聞き、調査も隠密的に行っていると山には使獣がいなくなっていることがわかった。そしてもっと調べてみると龍さえいないことがわかったということだ。
それだけなら良いのだが、村はそれを隠し山の資源、食料を独り占めにし国には報告をしなかった。そのため、国は動いて村に対して処罰を行った。
そのような事があり、この村に対しても不審に思い今回の対応を行ったということだった。ただし、今回は前回の村と違い調査不足もあるため大規模な軍隊でここまで赴いたという事だ。
その話を聞いたガイアは
「それなら私はあの山に居る。もう問題はないだろう。さっさと帰ることだ」
そう対話する顔を隠した人に告げるがついて来た2騎は早く帰りたそうにしている中、顔を隠した人はまだガイアを見つめていた。それに気付いたガイアは不思議そうに
「まだなにか話があるのか? 」
と尋ねると、顔を隠した人はなぜか震えながらも
「ガイア。頼みがあります。この村を滅ぼして頂けないでしょうか? 」
そう願い出てきたのだった。
僕は驚きガイアを見る。そんな様子の僕が相手の話を聞きたいとわかったのだろうガイアは顔を隠した人へ
「理由を聞かせてくれぬか? 私にはお前が何故そんなことを望むのかわからん」
と言葉を促す。すると顔を隠した人は堰を切ったように2騎の兵士を相手にせず話し出した。
「私はこの村の出身です。私は訳もわからず国により村から連れ出されました。その時私を本気で助けようとしてくれたのは幼馴染だけだったと思います。そして、その幼馴染も村に見捨てられ使獣に殺されたと聞いています。私の事は良いのです。ですが幼馴染を、私を思ってくれた幼馴染を見捨てたこの村は許せません。なぜガイアがこの村を守っているのか分かりません。ですがこの村はそんな村です。残っていても意味がありません! 」
顔を隠した人のその言葉に何を言っているのかわからないという感じの付き添った2騎の兵士。それとは別に話を聞いたガイアはこの人が誰か感づいたのだろう僕を見てきた。そして僕も顔を隠した人が誰かわかった気がした。だからガイアに小さな声で
「ごめん、ガイア。関係ない2騎を後ろに下がるように言ってくれないか? 」
とお願いをする。その言葉にわかったと
「悪いがこの者と話がある。付き添いの者は下がってくれるか? 」
と国軍に向かってガイアは言葉を発した。それにびくつきながらも付き添いの2騎は顔を隠した人へと言葉をかけた後、軍本体へと下がっていったのだった。
退却を確認した僕は
「もしかしてアヤかい? 」
そう顔を隠した人へ声をかける。するとガイア以外の声が聞こえた事で吃驚し辺りを見回した。そんな相手に
「トキ、僕は生きてるよ。村は僕を見捨ててないよ」
僕はガイアの鱗の下から顔を出しアヤと思われる人に再度声をかけた。すると
「え? トキ? 生きてたの? 国からは死んだと聞かされていたのに……良かった。本当に良かった」
そう言葉を発した後泣き崩れそうになってしまう。そんなアヤに
「なんでアヤがこんな前線にいるのかはわからない。けれど、アヤ。今度は助けられる。こっちに来るかい? 」
僕は以前は伝えられなかった言葉を告げる。するとアヤは
「うん。トキがいるならそちら側へ戻りたい」
僕にそう答えてくれたのだった。
それから僕はガイアに次になにをしてもらうかを説明し行動してもらった。
ガイアはアヤに近付き、脚を上げた。国軍はガイアが動き脚を上げたことに驚愕し動きを止めていた。驚愕の声を上げながら。
そんな中ガイアはアヤを踏み潰そうと脚を下ろす。その瞬間僕は
「アヤ、前に飛んで避けて! 」
と叫びアヤへと予定通りの行動を呼び掛ける。アヤはその声で馬から飛び降りガイアの足を避ける。申し訳ないが、馬には踏み潰される犠牲になってもらった。そうしなければアヤが無事に見えてしまうからと。そしてアヤにはその後直ぐにガイアの鱗の裏へと隠れてもらう。
そして最後に
「こやつは私を怒らせた。だから踏み潰す。お前たちもこうなりたくなければさっさと戻るのだな」
ガイアに最後の言葉を告げてもらう。すると国軍は話し合いをした後、しばらくの後撤退して行った。
今回の諍いを尊い1騎の馬の犠牲で僕達はなんとか収めることが出来たのだった。
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