第06話 国軍



 村に着くと僕はすぐに、体が大きく村に入れないガイアを置き中へと入る。そして急ぎ村の長のもとへと向かい話を聞いた。


 村の長によると国の兵士が一騎、村へと命令を通達する為にやって来て


 村は国への報告を怠り、山の資源を独占しているという疑いがあること。

 使獣はもういないと考えられるため、山を今回探索するということ。

 使獣がいた場合は村の存在理由として退治すること。

 通達に従わない場合村を殲滅するということ。

 

 という内容を伝えられたことを教えてもらう。なお、国軍はもう歩いて2日先の距離に近づいているらしい。

 村の長は、国軍は入山しようと考えているため村だけの問題ではないと僕らにも慌てて連絡をしてくれたようだった。その話を聞いた僕はなんて無茶な命令だと呆れてしまう。そしてなんて人は愚かだと。疑うしか道はないのか、もっと話し合いができないのかと。


 その話を聞いた僕は急いでガイアの元へと戻り説明をした。けれども話を聞いたガイアは慌てもせずただ僕を見ていた。


「うん? ガイアどうした? 」


 その落ち着きように僕は気になりガイアに声をかける。すると


「うん? 別になにもないぞ? 私はただトキの考える事に付き合うだけだよ。旦那さんの側で寄り添って付いていく。私にはそれしかない。私はトキの側にいるだけだ」


 ガイアは人の愚かな行動に何を言うこともなくただ僕とともに行動してくれるという事だけを伝えてきた。そんなガイアに僕はお礼を言った後


「村の為に前に出ることになるけれど一緒に居てもらってもいいかな? 」


 これからの行動に着いてきてもらうそれだけをお願いした。そんな僕にガイアはただ微笑みを見せるのみだった。




 僕は村のみんなに村から離れ山で待機してもらうように伝えた。村のみんなは「ふたりに任せるだけでは」と申し訳なく考えているようだったが、僕としては怪我人が出る方が嫌だとなんとか説得した。ガイアが居れば心配はなにもないと。大丈夫だと。


 時間がかかりながらもなんとか村のみんなは説得に応じてくれた。それに伴い僕とガイアは村の入口前で待機をすることにする。まだ1日程時間があるものんびりとふたりで寄り添って。


「ガイア、ごめんな。こんな人のくだらない事に付き合わせて」


「もういいんだよ、トキ。言い方が悪いかもしれないが、人の諍い等そんな事私にはどうでもいいんだ。さっきも言っただろう? 私にとって何が大事か、それはトキ。お前が1番大事なんだよ。まあ、村のみんなも大事にはなってきているがね」


 そう言うガイアは月明かりに照らされているからか銀色に光っていた。そしてそんな輝きの中で僕に笑いかけるガイアの姿はとても神々しく見えるのだった。




 そんな時を過ごしている中、僕はいつの間にか寝ていたようでガイアの優しい声で起こされることになった。


「トキよ。やって来たようだぞ」


 僕は目をこすりながら村の前方を見た。すると土煙を上げながら数千の兵がこちらに向かってきているようだった。そう、ようだった。僕には土煙ばかりで姿はあまり見えない。けれど大群で人がこの村に向かってきていることだけはわかる、そんな状況だった。


「トキよ。大丈夫か? 」


 ガイアはそう言って僕を気にかけてくれる。そんなガイアに


「僕は大丈夫。ほとんどガイアに頼むことになってるのに僕が参ってもね」


 僕は笑いながらそう答えた。そう、今回矢面に立ってもらうのはガイアだった。というのもガイアは僕を表に出したくないと最後まで言い張った。私なら怪我などしないと。そんなガイアに本来なら関わる必要のないことだと僕は断り続けたが、珍しくガイアは引かなかったため結局頼る事になってしまったのだった。

 

 僕にも国軍がはっきりとわかる距離になると


「お前達、この山に何をしに来た! 」


 そうガイアが叫ぶ。その声を聞いた国軍は初めて見る巨大な銀色に輝く龍に気付き足を止め、直ぐにガイアと国軍が睨み合うそんな態勢へと移行していったのだった。


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