第05話 祝い事と気になる事



 番としての誓いを交しふたり寄り添って眠った次の日、僕らは村へと向かった。ガイアの背に乗って。僕らが番となったことを報告に行くために。

 背へと乗る際、ガイアは僕に顔を近づけてくる。当初は頑張って背へと自力で登っていたのだが、左腕の無い僕を気遣うガイアは僕の側へと顔を低く持ってきて僕を咥え背中へと乗せてくれるようになっていた。


 さて、村とも2年の時を一緒に過ごしたこともありガイアがやって来れば気付いた子供たちは嬉しそうに走ってきてガイアを囲む。そして子供たちは元気よく「おはよう」と挨拶を。

 その後には用事を済ませた大人たちもガイアの元へとやって来る。そして挨拶の後には子供たちと一緒にガイアを撫で回し始める。ガイアの肌、銀の鱗は気持ち良いのだ。


 ガイアはそんな村のみんなに静かに撫でられる。暴れることなどない。触れるみんなを見守るような優しい瞳で見つめているのだった。




 番となったことを村へと報告するとさすがに大人たちの多くは驚いていた。種族も違う「人」と「龍」なのだから。それでも僕とガイアが共に生きてきたことをわかっている村の大人たちは自分たちのことのように喜んでくれた。けれど、子どもたちにいたっては「羨ましい」「僕もガイアと結婚したい」と喜びよりも嫉妬のほうが多かった。


 そしてその夜はいつものようにみんなで騒ぎ飲んで食べて。いや祝い事のためかいつも以上にみんなで騒いだのだった。


 そんな中ひとつ気になる話を村の人から耳にした。ガイアと出会い使獣に襲われなくなったこの村。その事について定期的に偵察に来る国の兵士からいろいろと尋ねられるようになっているとの話だった。しかし尋ねられるそれだけなら良いのだが不正をしていないか? 山の様子はどうなのか? 等尋ねられ、村に対してなにか疑惑の目を向けられているようだと教えられたのだ。


 その話を聞いた僕は村として襲われない安全な村というのは住む者にとってとても良いことであるはずなのに外側、国から見ればおかしいと不正等を疑われるなんて人とはなんて悲しい生き物なんだと思ってしまうのだった。


 そのうえ、その話を一緒に聞いていたガイアも


「私のせいでなにか迷惑がかかっているのか? 」


 と心配そうに尋ねてきてしまう。けれど村のみんなは


「そんなわけないだろう。ガイアと会えてトキだけでなく我々も襲われもせず、怪我もなく幸せに生きられてるんだ。そんな事はない。気にするな」


 村のみんなは不安になったガイアにそう声をかけた後、不安を掻き消すように撫で回し始めたのだった。




 それからしばらく経ったある日、山の頂上でガイアと剣の訓練をしていた僕らに村に設置した、僕らとの連絡用の鐘が鳴り響くのが聞こえた。それも慌てたように何回も。


 その音に僕らは驚いた。こんな鳴り方をしたのは初めての事だったから。

 その鳴らし方に僕らは違和感を感じ、直ぐにガイアの背に乗り村へと赴く。


 何があったのかを確認するために。

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