第04話 なりたい



 ガイアと過ごすようになり、温かい時期が2度目。約2年一緒に過ごしていた。学など無いため、寒い時期と温かい時期が過ぎると1年経ったんだと季節で判断する僕ら。

 だからはっきりとした年齢も知らない。ただ温かい時期にひとつ歳を取ったとお祝いをする。そんな曖昧な判断をした2年であったが。


 僕は普段山の山頂でガイアとともに暮らしていた。住むに困ることは特に無い。水は近くに湧き出る水から出来た湖があり、そこで得ることができた。そこで体も洗えた。ガイアも水浴びできるほどの場所もあった。


 たまに僕がガイアの体を洗ってやった。大きいため隅々まで洗えるかというと無理ではあったがそれでも気持ちよさそうにするガイアを見ているのが僕の楽しみにもなっていた。


 食事は使獣も居り、その他に山には人が全く入ってこないため山菜、果実など豊富にあった。そんな十分な食料があり、僕の分だけでなくたまに取っては村に持っていったりもした。


 そうして住むうちにわかったこと、ガイアに関係あるものを持っていると使獣が襲ってこないこともわかった。だからガイアから落ちた鱗を持って僕は活動するようになった。

 そしてガイアに許可を取って鱗を渡したことから村のみんなも安全に山で活動できるようにもなっていた。




 そんなある日、ガイアに寄りかかり僕は呟く。


「なんだか僕とガイアって夫婦みたいだね」


 そんな僕にガイアは不思議そうに


「夫婦とは何だ? 」


 と尋ねてくる。そうか、夫婦と言ってもガイアには分からないのかと思い


「ガイアたちは夫婦って使わないんだね。番ってことだよ」


 僕がそう言うときれいな銀色の鱗がピンク色に染まっていた。


「なっなっなんだって! 」


 そう叫びを上げるように答えるガイア。ピンク色に染まりながらも驚いたように。もしかして嫌な言葉だったのかと僕は


「ごめん、嫌だった? もう2年もこうやって一緒にいたから思わずそう思ったんだけど」


 と僕が告げると


「私とトキは種族が違う。見た目も。生き方も。そんな私でもそう思ってくれるのか? 」


 そうガイアは僕に困惑したように、そして不安そうにそう尋ねてきた。だから僕は


「こんなにふたりでいいのかな? ずっと一緒に生きたことって初めてだよ。最初はね。ガイアと会えばなにかしら村が変わるんじゃないかって思ってここに来たんだ。僕に幼馴染がいてね。よく一緒にいたんだけど、この国の偉い人に連れて行かれてね。結構自暴自棄になっていたのかもしれない。死んでもいいって思ってた。いや死にに来たのかもしれないかな? 閉鎖された村で幼馴染を失って何もなかったから。それが今ではガイアが居ないとなんだか不安で寂しくて。種族がどうのとかどうでも良いかな? 今は死ぬまで一緒に居られるといいなって。僕の方が早く逝っちゃうけど……」


 そんな僕の言葉を聞いたガイアは


「その幼馴染はいいのか? 」


 心配そうにそう尋ねてきた。


「うん。勝手かもしれないけれど、今はガイアの方が大事。それにこんな僕には幼馴染に対してもう何も出来ないことはわかっているし……ね」


 僕がそういうとガイアは


「なりたい……」


 ぽつりと呟く。そして


「幼馴染には申し訳ないが、トキ。私にとっては一時になるかもしれない。それでも良い。寿命が違うことはわかっている。それでもトキと居たい。だからトキを私にくれないか? 番になってくれないか? 私は最後までトキと居たい。トキの命を私にくれないか? 」


 ガイアは大きな目に涙をためながら僕に真剣に言葉を返してくれた。そんなガイアに逆らう僕では無かった。だから


「うん。僕が生きている最後までガイアと一緒にいるよ。ガイア、僕の側に顔を近づけてくれる? 」


 そう伝えてガイアに顔を近づけてくれるようお願いする。ガイアは不思議そうに僕へと言われるまま顔を近付け


「これで良いか? 」


 と告げるガイアの顔に僕も近付き、ガイアの流れ落ちそうな涙を舐めて、そしてガイアの口へと口づけをした。


「これは誓いのキスだよ」


 僕はガイアの目を見つめてそう伝えたのだった。





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