第10話 射撃
「ネイピア、ザコい」
「射心ちゃんひどいっ!」
「でも、仇は撃つ」
「あぁぁ! ぁじがどぉーいごごちゃんっ!」
涙目になりながら話しているので、何を言っているか分からない。
あと、いらない情報だがこのボーイッシュな少女の名前はネイピアと言うらしい。
「ねえ、そこの金属バカ」
「き、金属バカ……だと?!」
「さっきは私の攻撃を変な方法で避けてたけど、あれは金属の形状を変えてたんだ」
「っ、てめえかよ。ヒーローたちをほとんど無力化したのは」
「うん。まあでも、今度は君とも、後ろにいる白くてちっちゃいのともサヨナラ」
「し、白くてちっちゃいのですって?!」
「おい、そんな見えすいた挑発にのるなよ、白くてちっちゃいの」
「うるさいわね、金属バカ!」
ガガガッ!!
またも俺たちが不毛なやりとりをしていると、再び空気が圧縮されるような感じがして、射心の背中から羽のように伸びている不思議な形状の銃から金属球が飛び出した。
俺はとっさにチビリカを抱き着けて、攻撃を無力化する。
「ちょ! ちょっと離れなさいよ!!」
「今離れたらお前死ぬぞ!」
「けど、操り人形のユウスケ君がぁ!」
「おい、それって俺が作った金属のゴーレムか?」
「そ、そうよっ。なんか文句ある?!」
「いや、ネーミングセンス皆無だな」
「うるさいわね!!」
「お前、子供の頃おもちゃに名前つけて可愛がってただろ?」
「な、何故そのことをっ?!」
「あってんのかよ」
ドガガガッ!!
再び鉄の雨が俺たちを襲う。
「っ! このままじゃジリ貧よ! シルバーさっき幹部への対策があるって言ってたわよね?! 早くそれで倒してよ!」
「いや、無理だ! あいつは何丁ものライフルを同時に操るとしか情報がない! だが、妙だなあいつの弾丸は普通の銃とは形状がかけ離れてる……。それになんだよ、この無尽蔵な装弾数は! ファンタジーじゃねえんだぞ……!」
射心の使っているライフルからは、鉄の玉が発射されていた。
普通の弾丸であれば空気抵抗を減らし、威力を増すために形状がシャープになっている。
しかし、完全な球体であるのだ。
また、威力が落ちると言ってもかなりの速度で射出されているため、当たり所が悪ければ致命傷は免れない。
「ほんと妙ね。火薬の匂いとか、炸裂音もしないじゃない」
「ああ……けど、カチカチと妙な音が聞こえる」
俺たちがなんとか活路を見出そうとしていると、
「ネタバレしてあげるよ。この子達はね、ガウス式加速器銃(アクセラレートガン タイプ:ガウス)だよ。私の能力は磁気を強めたり弱めたり出来るの」
射心は自ら自分の能力を晒してきた。
「そうかっ! そういう事だったのか……」
「ちょっと、一人で完結しないで教えてよ!」
「あいつのもっている武器は、強力な磁石を使って鉄球を高速で撃ち出す、ガウス式加速器だ。その威力を銃と呼べるまで高めているが、あいつの能力が磁気を操れるなら納得だ。このファンタジーな装弾数も鉄球なら嵩張らないから動かしやすいバッグに詰め込めば幾らでも持つ事が出来るんだろうな……」
「そうだったのね……けど、どうしてこうもあっさり自分の能力を話したのかしら」
「自身の現れか……あるいは……」
豪雨のように注ぐ鉄球の形状を変化させ、チビリカをなんとかガードする。
「シルバー、ほんとにまずいでしょ! 貴方さっきから攻撃受けてるじゃない!」
「だっ、大丈夫だ。あと少し、少しなんだ!」
「何を企んでるか知らないけど、君は白くてちっちゃいのがいる限りそこを離れられない。さらに能力の使い過ぎと出血多量で判断力も落ちてる。私の残弾数は9丁ある全てのライフルから毎秒2発ずつ撃っても三分は持つ。私の見立てだと、あなたは1分後には弾丸を避けられなくなって蜂の巣ね。さあ、どうする?」
あと、五秒……、四、三、二、一!
「受け取れ! チビリカ!!」
「ふえっ? うっああ!」
俺は金属製の盾をチビリカに投げつけた。
「っ! どうして!? もう使える金属は無いんじゃなかったの?!」
「あるじゃねぇか! 今から雨みたいに降り注いでるこれだよ!」
「まさか、私の弾丸を回避しつつ攻撃の起点にしていたのか?!」
「ああ、そうだ! 余裕そうな表情が崩れたな! 金属球バカ!!」
ガッキン!!
俺は剣の形に金属を形成し、射心のライフルをぶった斬った。
同時に金属球を供給していたパイプも切り離し、これで完全な無力化だ。
「うそだ、亜音速で飛ばした弾丸をどうやって回収してたの?!」
「攻撃をあえて受けて、威力を殺す。あとは俺の能力で形状を極細の繊維に変えて、少しずつバレないように金属を溜めていたんだ」
「そんな事が……」
「サヨナラするのはお前だったな!」
ガツン!
「がはぁっ!……」
射心の腹部に強烈な一撃を叩き込み、地面へと沈めた。
「シルバー、女の子にも容赦ないね……」
「男女平等だ。つか、試験始まってからまだ女としか戦ってねぇ気がするぜ……」
「ふふふっ、あははははっ!」
「?!」
そうだ、まだこいつが残ってた。
ブラックローズのリーダー、猫の仮面を被った不気味な少女だ。
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