愛してるからやらせてください ファンタジー

仲仁へび(旧:離久)

01



 ついさっきまでひどい戦いだった。

 魔族軍の力をそぐために人類軍は決死の思いで戦っていた。

 それのに、今は剣を打ち合わせる音も、魔法がさく裂する音も聞こえない。


 それもそのはず。

 私達は、巨大ながれきの中に埋まっているのだから。


 外の音は聞こえないし、様子も分からない。

 変化と言えば、時折り振動がして、上からパラパラ砂ぼこりが落ちてくるだけだった。


 様々な状況を想定してきたけれど、こんな事になるなんて思わなかった。

 私達は脱出不可能な場所に閉じ込められてしまったようだ。


 ここから出るためには魔法を使わなければならない。


 けれど、私も彼もボロボロ。

 次に魔法を使ったら命を落としてしまうだろう。


「僕にやらせてくれ。君を死なせるわけにはいかない」

「いいえ、私がやるわ。あなたは生きてここから出るのよ」

「君を必要としている人はたくさんいるんだ」

「あなたを必要としている人だって」


 けれど、どちらが魔法を使うかでもめてしまって、状況がまとまらない。

 互いが互いより重要な存在だと思ってるから、どちらも譲らないのだ。


 言い合いに疲れた私達は、一息ついた。


 先程から振動が大きくなっている。

 落ちてくるのも埃ではなくて、小さながれきの塊になっていた。


 もうじき、ここは崩落してしまうだろう。


 そうなると、二人共死んでしまう。


 だから、そうなる前に。


 あなたに恨まれてもいいから、私は魔法を使うつもりだ。


「だったら、ここで一緒に死にましょう」

「それもいいかもしれないな」

「その時まで抱きしめていて、怖いわ」

「ああ、分かったよ」


 彼を抱きしめたのとは別の腕で、ワンドを握る。


 魔力を込めて、魔法を発動させるために集中した。

 ごめんなさい。


 でも、あなたの事を愛してるから。

 愛してるからやらせてください。


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