04 比賀作太(前編)



 俺の名前は比賀作太。

 俺は自分の事を、どこにでもいる普通の人間だと思ってる。


 ただちょっと人と仲良くなるのが上手いだけで、テレビに出た事も表彰された事もない、ごくごく普通の人だ。


 そんな俺なのに、ある日変な連中に拉致られて、変な場所に連れて来られてしまった。


 それで、あれよあれよというままに、状況は進んでいき、どういうわけだかデスゲームに参加する事になってしまっていた。


 で、「はぁ?」と思ってる内に、何だか不穏な話の流れになっていって、偉そうな声の解説が終わった後、首輪が爆発するとかしないとかという話になった。


「冗談だろ」と思ってると、皆が悲鳴をあげだして、こりゃまずいと思った。


 でも、結局首輪は爆発する事なくて、周囲はどういう顔をして良いのか分からないといった空気になった。


 腰が抜けた俺は、その場に座り込んだんだ。


 だけど、その俺の前に人が立った。


 その人、いや子供は何でこんなところにいるんだろう。

 あきらかにこんな場所にいるべき人間でないはずなのに。


 その子供は、小さな十歳くらいの少年だった。

 でも普通の子とは違ってどこか浮世ばなれした感じがする。


 普通なら、こんな状況だったら泣き叫んでてもいいはずなのに、平然としていたのが不思議だ。


「大丈夫? お兄さん」

「えっ、ああ」


 この子は、周りの人間よりも大人びてて、人を気遣う余裕があるみたいだった。


「大丈夫だよ、お兄さん」


 その少年は先程と同じような事を言う。


「僕は異世界を救った英雄だから。皆の事も助けてあげるね」


 取りあえず表面上は「うん、そっか。期待しているよ」と返しておく。


 思わず、安心。

 やっぱり普通の子供だったみたいだ。

 ちょっと夢見がちなお年頃らしい。


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