『もの言わぬ迷い子⑥』
『もの言わぬ迷い子⑥』
・・・
その後、空飛ぶ機体に乗り込んだ三女神で至るは返還を執り行う大地。
今回の『落下事故の発生』に対しては目的地とする
『——各種反応にも依然として大きな変わりなければ……"計画通り"に』
『ええ。
『……了解です』
そのまま視認距離に於ける再警戒と安全確保を担うイディアとアデスで先行の現地が浮遊する陸地。
伝承と生き
またなんと水と空の青を下に眺める
(卵の状態にも異常は見受けられないなら、"
二者を追う動きの青年でも前日の遠目に見つけた巣の近くで卵を取り出すと『
極地に棲まう種で
(……慎重に)
だからして目的とした場所に違いなく、安全が保証される環境で見回す首の回しも手短に。
青の混じる黒髪の揺れが停車した
『我が弟子にも目立った動揺はありませんか?』
『……大丈夫だと思います』
『よろしい。事実として"
その横穴を『次なる通過点』と見据えては、外気と然して温度の変わらぬ水の体が『重要物の卵を確と抱えて
それと言うのも本来なら『ごく短い距離の運搬』さえ今も周囲に『不可視の
だから『
『では暫し、私の先導にて進みます』
『——はい。お願いします』
よっても青年で『一応は自身にも【父親】や【母親】に繋がり得る心の動きは備わっていたのだろう』と不思議な気分を抱えつつ。
なれども今は人ならざる神秘的なまでの美貌の直下で卵に回す手と腕では前後左右に上下でも『受け水』を用意して足取りにも油断なく。
地上にあっても宛らは一歩ごとに『濁った河川の深さを測り確かめる』ように。
起伏ある足場を慎重に乗り越え、無言で門を
(……"親の息遣い"も感じ取れる)
"近い"——水の色を湛える眼差しは険しく。
だが、それでも止まらぬのは『親』と『子』の"両者のため"。
先には子を探して空を彷徨っていた親の個体にも羽根を仕切りなしに動かす飛行の疲れは見え、それこそ『自身が力尽きては
「……」
「……」
「……」
場合に応じて『
それら頼もしき先達に挟まて行く事実として、それでも『自身に命を預かる身』が酷く重く感じられる青年で三者の足音もない進みが洞窟の——"龍の待つ巣穴"の中へ。
(……"いた"……)
其処は円筒状にも上部で穴の空いたかつての
過去には『ぐつぐつ』と『今か今か』と噴出のエネルギーを
(……
そう、かつて盛んに人々から『神秘』と崇め立てられた山の産出物たる鉱石とて今は下界の喧騒と無縁が『自発に輝く
それら洞窟内で大小様々に突き出す岩々の黒ずんだ鈍色の中に内包されては朧げな発光の青や赤が神の肌身に電磁の波を感じさせ、力を感じさせる輝きは太古の昔に噴火のエネルギーと併さっても
『そうして決行の時。大方も残るは【抱える卵を目前の巣へと返すのみ】で【一先ずの最善を尽くした】と言えるだろう』
女神たちが暗に話を交わす最中でも翼の生えた蛇の如きは照らされながらの休眠。
光を反射する鱗や甲殻が周囲の物質と酷似の色でも
『即ちの後が【青年の望むまま】に』
『は、はい。後は【返して、様子見】。"場合によっては再び間に割って入っても記憶や認識の調整"』
『はい。我々は此処で見ててやりますから、
『……分かりました。行ってきます』
再確認の済んだ頷きの後には軽く手を振る恩師と、その小柄の横で長身の美女の頼もしく脇を締める様が『応援』の意を示すだろう友の姿にも見送られて目的とするは目と鼻の近くへと出発。
『でも、もしもの時は本当に頼みますよ』
念入りには自身と同様に気配の隠れた女神たちへ言い残し、卵を抱える青年のみが龍に肉薄の足取りを再開とする。
『案ずるなかれ。さてもあり。
『ファイトですよ、我が友。後ろには我々が付いてます……!』
「"……"」
進める足にも万全を期しては親の長い巨躯より少し離れた場所を目指しての『ぐるり』と迂回する遠回り。
膨らんだ軌跡を描く理由としては地に横倒しとされる頭部よりの鼻息が身近に感じられる
時として『親の寝返りなどにも子が押し潰されぬように』と、間近に見る生体の全長を目幅に計算の修正としつつ物を置くのに相応しい位置決めも神の速度で
「"…………"」
最終的な決定は卵は親の目の向かう位置の直線上、"目覚めて直ぐに認識できるよう"にも。
今まさに中から揺れの間隔頻度が短くなってきた鉄の揺り籠を優しく。
そっとの、
("…………")
その僅かな時は例え秒で終わりを迎える簡単な仕事であっても、手に汗を握るかの思い。
青の女神ではくれぐれも速まる流れを外に噴出しないよう内に押し留めたまま——"大切としていたもの"を地に置いて。
(……"常人の身では匂い消しだったり記憶や認識の調整だったりを此処までは出来ないから不用意に手を出す真似など絶対にしてはいけない")
「……」
「……」
("残酷な例には浜辺から海へ一斉に駆け出す生後間もない
などと秒の間に己を戒める注意事項として説明的な口調が心に
(そうして……うん。今の自分は——"大丈夫"のはず)
安定した窪みの場所で『迷い子を手放す不安』に構えを直ぐには解けねども、それでも『自分の干渉はここまででよい』と。
慎重に引き戻してゆく開きかけの掌に、腕に、何処か
(そうしたら、オッケー。これでいい。やった。やりました——)
(よ"————"")
それは奥義の切れ際。
振動の伝わる地面より離れては常に展開していた自前の
己の流れを取り戻し始めた気に滑る足は宛ら『プール清掃でぬめりに捕まった者』で時折に見せる
『わ、我が友』
『許容の範囲内でしょう。"あの者のぼんやりうっかりとした
『ぉ"、"————"ん……っ"!』
『立て
『無駄に妙な動きだ』
だとして僅かとも『他者に
"卵に倒れ込まぬよう"。
"どうせ倒れる"なら自身の後ろ足から身を引いて、背後へ女神の玉体を
(なんか——変な動きをしてしまった……!)
だがやはり、仮に転けようが大して問題もない現状では心配性の独り相撲。
無機質な地面の冷たさに触れての冷静を取り戻す思考が『例え卵の方向に倒れたとして凡ゆる波を呑み込んでくれる暗黒の加護に割れぬようの配慮が健在であった』ことも一段落の現状に思い出し、自己完結する領域の中にも大きく息をを吐かんとすれば——。
(今のだと『また詰めが甘い』と詰められる……! けど、"卵に何もない"なら、どうあれ結果は望ましいもので————)
近くでは遂に『バキッ』と——"
(——え"……"??")
内側に波を鎮めたり立てたりで忙しい青年が心の底からの焦る思いに見上げた表情を硬くする。
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