『もの言わぬ迷い子③』
『もの言わぬ迷い子③』
「う、——"
腕の中で感じる"熱の急上昇"に『
(い、いや! もう
左右へ揺れる卵に慌てふためいて。
されど、抱える水の手は柔らかくも『決して落とさぬよう』と追加で生やして添える触手でも強固に命を離さず。
『あ——アデスさん! "純粋に
『はい。
『ど、どうしましょう?? とにかく自分じゃ、"
如何に触れる
『だ、だから、そのっ! これもまた後で何でもしますから——どうにか、"この
因りても当然の如く『己の
音波を放って動かすより情報伝達の素早く終えられる念話の
『ふむ。でしたら青年の
『——へ? ほ……本当に、ですか?』
『我とて貴方の許しなくば
『……そうなのです?』
『ええ。だから、内部で当事者が身を揺らして
「あ……本当です。また中で今度は『眠る』ように……波の感覚も少しずつ落ち着いてきました」
しかして博識の恩師より偽りない証言をもらっても、それと相違ない手中の現象に漸くが『事態に気の追いついてきた思い』で焦りを吐き出す一息とする。
「……それでも『念の為の現状維持』では『重圧による状態の固定』も可能でありますが?」
「え、それは『健康に問題ない範囲で』だと思いますけど……まだ『親を親』と"覚えて認識"する『
「はい。内部より他者の程よい熱に慣れ親しんだ
「な、なら…。
「さいですか」
「提案は有り難いのですけど『問題のない限りは特に干渉せず中で普通に動いていてもらう』のが、自分の気持ち的にはいいと思います」
「"
「それでも、"いざという時"は『
「
だがして聞き知る生態に件の生物種は『孵化した直後で身に寄り添う熱源を親と認識する』ともあり。
未だ不安の絶えぬ青年で『実の親が不在の今に周囲でそれらしいものがあっても何か危険ならば』と、冷静に気配も薄い己の玉体で腕の中に抱えた『
(周りの他のみんなも……傷はないようで本当に良かった)
予測される『もしも』の凡ゆる緊急事態には『死なぬようでも生まれぬよう』と大神の力を拝借可能とする『保険』の存在事実も再確認。
そうしての青混じる黒髪ごとに首を回して周囲を改める一先ずが此方も『神秘的な生物の到来』に興奮した人々を『肉体は勿論に家屋にも心にも被害なし』と見て取り、『龍が
「……それでは改めて、『これからどうするか』を考える前に自分の混乱を落ち着ける意味でも『状況の見直し』を少し」
しからば、その『青年女神の介入』を周囲の認識から巧妙に隠す暗黒の加護の只中にあっても。
自身に権能の力を有する川水だって己で念入りに指から空間へ引いて作る『水の境界』が『中の様子を光景に映らぬよう』と、人に獣に虫や微生物の気も払っての"安定した場所作り"を済ませた後に自らの置かれた状況の整理へと向かう。
「大きく事の発端は——なにか人の村の支援中に『いきなり空から卵』が降ってきて、それも"山に落ちて来るのを助けたら"、次にはその『
「……」
「それでも
「……」
「これを果たして……"どうするのが最善"なのでしょうか」
今も茶を楽しむ恩師を言葉掛けの相手とし、『その瞑目から指摘が飛ばぬ
(やはり『元いた場所に戻す』のが
(……それでも『
記憶の中の『学び得た生物に関する知識』から『野生との交流の難しさ』を再三に流し読みとしても熟考。
青年で如何に『周囲の協力者たちが万能』といえども身近で耳を傾けてくれる博識や
(だからやっぱり『知者からの意見を仰ぐ』のは確定として、いざとなったらアデスさんで全部なんとかしてくれるだろうけど……今日はもう少し、『自分でも勉強して頑張ってみる』方向で話をして——)
「——我が友に女神アデス。お待たせ致しました」
すると冷静に思考を努める其処へ。
既に側にあって喧騒なきに心安らぐのが『冷たい暗黒の恩恵』なら、片やの此方も"青年女神にとって麗しの色"。
「——イディアさん。御無事でしたか」
「はい、お陰様で。私でも遠目に拝見していたように貴方の成した咄嗟の対応は見事なものでしたよ」
「いえ。無事なら何よりです」
「そうして戻る道すがらに大神の彼女とも情報の共有は済ませてありますので、私からも『件の龍』について多少の手掛かりをお話しできると思います。」
「それもまた、御苦労さまです。対応に悩んでいた所で有り難く、是非にお聞かせ願います」
「"——"」
それは青年の俯き加減の顔に差した『
親しきイディアが朗らかにも笑んで歩み寄り、既に水の広がる拡張認識でも『彼女という美の女神が無事だ』とは知っていた青年さえ思わず『再びに見えた友の壮健の姿』で頬を緩ばせての喜色に彼女との合流を迎える。
「ならば早速と口火を切り——今まさに龍の飛来に応じて聞き直した人の伝承曰くでも『あれなるはかつて霊峰の切り離され、浮遊した更なる高みに棲まう者』と……村の
「……"
「既に近辺で簡単な地質の調査も行った所では、確かに過去の同地には『特定の条件下で強大な
その同地で支援に際して現地の文化を大まかに調べていた美神。
曰く『折れた山』とは一種の僻地にあたる現在の場所で、『簡単な食料や水以外にも適切に支援できることはあるか』と師弟より離れた場所で一時的に活動していた彼女の掌では拾得物の『青い
「このように『伝承を事実とする痕跡』も見て取れれば、『それが
「では、もしかして……先から一つの『小さな
青年の碧眼を細めて見遣る先には
その灰に濁った白色の間に覗く『乾いた岩石の集合』を指して言えばイディアも"予想の肯定"に頷き、二者の会話に補足を差し込んでくるアデスでも『伝承に語られる龍』についての理解を先に進めようとしてくれる。
「よっても、その伝説に語られる
「若しくは前人未到なら今現在の生態系は未知なれど、他の生物種の存在も仮定して『
「大神の私には見えていましたよ。誕生を間近に控えて
「——成る程。それで、『遥か空より落下してきた卵』という訳ですか」
「然り」
「すると残るは
「既に明らかとなった情報については
「あ、これはまた『思い当たる物を己で取りに行こう』と考えていた矢先に大神の力で態々と取り寄せて頂けて……
しからば、暗黒が
その厚意にも与っては若者たちで適切な順序を踏んで借りる『図鑑記録』に目を通すとし、力持ちのアデスそのまま触手が掲げてくれる間に要点を確認すると先までの種は『
「そうして誤解なきようの確認。過去のそれらしい記録も参照してみると——似ていますね」
「……確かに」
「先の個体と『鉄に覆われた骨格』に様相も殆ど等しく、それでも目に見える翼の数に『
「何か先までのは『上下の間に円を描いて展開する翼』で『風を掴む』ような素振りも見せていましたが……"あの重たそうな巨体を空に持ち上げる"とは相当に『
「はい。
「でも、自分の接した個体の攻め手は『
「ならば、力を練り上げる
「そうして人の記録に於いて僅かな
「アデスさん」
「やりましたね、我が弟子。実質的に人界で名もなきは『
「……いえ。別に前から断片的にも知られていたなら
「貴重な機会ですのに」
「それよりは注意事項として『そういった生き物がいて、人に攻撃することもあるから無闇に近付いたり・刺激しない方がいい』とだけ他の皆にも教えられれば」
「うむ。"如何にもな
そうして丁重に命名の提案をお断りとされても『安全を第一とする本願』を聞き届けて身を分けるアデスの分身二体。
村の中心広場に一体が創造して支える重厚の石板に、残る保護面をした一体で『龍の持つ人に危険な機能を示す
「他にも判明分は、なになに……『
「『翼で
「また再び
(……"幻想"?)
「その『人界を含む下界と接触の機会が殆どない』というのは即ち『生物間に於ける
「
「そうだ。("王より下々に星からの脱出を許さぬ中での慈悲"は)時折に星へと迫る隕石を迎撃して自らの体を作る
「
「幼体では空間で既に漂うだけの小さな
「「"——"」」
「そうして摂取した金属成分で自らの肉体や甲殻を固く編み、よっても当該の種で『重なる頑健な威容』の其れは『幾度もの
「成る程」
「……ではすると、聞くに宇宙空間の直ぐ近くにも耐えられるとても頑丈な体で、『卵も同様に鋼鉄の成分を含む』のであれば……『 "もしかすると高所から落ちるぐらいで傷は付かなかったのかもしれない"?」
「我が友?」
「それこそ『余計な世話』で、受け止めても頂戴してしまったような自分で大変な……"
「いえ。万一にも『傷を負う可能性』を見越しては、我が
「はい。古き女神の言う通りにあれば……何より『落ちてきた場所が人の集住であった』のですから『先んじて我が友が間に入ってくれたことで多くの者に降り掛かる衝突の危機を未然に防げた』とも言えて——十分に『お手柄』であったと思います」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます