『約束を探して⑨』

『約束を探して⑨』




「……では『冥界めいかい』とは、"関わりのたれた世界"。謂わば『実質的には関係性という概念のないもの』?」

始終しじゅう完結かんけつするぶんには全てがあって、各位の望むままを自由に」

「……」

「『かみ』や『』や『はだいろ』や『性別せいべつ』、それらも好きに変えてよく、勿論に今を愛するなら『何を変えず』とも構わぬ」




 引き続き茶会で『魔王の作る異界』について明かされた中でも、『驚き』で情報処理に手間取る青年を側に暗黒と美が問答を重ねる。





「そうして個の満ち足りる期間を『無期限むきげん』と設けて、その必要となる資本も『無限むげん』と提供すれば、只管ひたすらに望むだけの支援が得られても『自己実現じこじつげんを助ける世界』」

「……ですが多く『とも』や『親族しんぞく』や『恋仲こいなか』などの『他者との関わり合いに見出される幸福』もあれば、そうしたものについては如何様いかよう御考おかんがえを?」

「『其処そこ』として認識してもらう。近しい例としては貴方方あなたがたに与えている『手伝いの道具』のように。厳密には『誰でもない"もの"』に他者の存在を見出してもらう」

「では、一切の『交流こうりゅう』や『越境えっきょう』のなくても『多元宇宙たげんうちゅう』——我が友にも感覚的な親しみを言えば『クロスオーバーのないマルチバース』として『世界の再編さいへん』を?」

「もしも『共演きょうえん』を望むなら、あくまで個の世界の中で『疑似的ぎじてき多様性たようせい』に色取いろとりを見るのだ」

「であれば本当に『個だけの世界うちゅう』……各位が変形に変色に『調整の自由な宇宙を己のもの』と掌握しょうあくして、謂わば『宇宙スペースそのものが皆の下支したざさえ』にある」

「……」

「それは、現行の皆を一つに支える『統合とうごう』へ正面から意を差し挟んでも何処か『反体制的はんたいせいてきなパンキッシュ』は——"永久機関えいきゅうきかんの成せる新時代しんじだい"……!」





 遅れては青年でも、イディアに続いて疑問を口に。





「……なら、『分断ぶんだん』と『充実じゅうじつ』のそれは……『すみけ』に見る究極のようなもの?」

「そうだ、我が弟子。私は皆を『互いに手の届かぬ場所』に置いて『苛烈かれつ競争きょうそうを回避する』ことにも"理想"を見ている」

「…………」

「よって先述の『他者へ示す趣味嗜好しゅみしこう』についても言及を深めれば——例えるなら青年だれかに好きなおんなのいて、それと『結ばれたい』と望めば実感として夢は叶い、それでも参考となった実際の他者は其処にいないのだ」

「……あくまで『ひと相撲ずもう』?」

「うむ。好き合っていない者同士を無理矢理と洗脳で両思いにさせたりもせず、恋の好敵手こうてきしゅもいなければ奪い合う争いもなしに。それらめぐ恋模様こいもようあいだなん感情かんじょうの『あった』・『なかった』に関わらず『不可侵ふかしん』の徹底てってい

「……"失恋しつれんの悲しみもない"——『"おもやぶれる"のをみずかあじわいたい』と望まぬ限り?」

「ああ。そうして複雑にもかれ彼女かのじょの其々に『固有こゆう幸福こうふく』があるのだから……やはり、『目指すべきは別の場所』へ向かわねば」

「……」





 "質問に口を利けるだけとなった青年の理解"を喜んでは、微笑みを見せてくれるアデス。





「そう、『誰も傷付かぬよう』との狙いは『傷付けあう可能性そのもの』を根扱ねこぎに奪って……身近な例としても私は貴方方あなたがたの存在さえ誰にも『傷付けさせたくはない』のです」





「……女神」

「……」





「同じくらいに貴方たちで……お前たちは『に自らの言動を選択できる者たち』だ」





 瞑目から周囲の二者に向けてみの思いを溢れさせる。





「『理解の及ばぬ相手』へ、また『ろう』に敬意を払っては、然して利益のない困難にも『きゅうする者を助けよう』と臨み」


「両者とも性質形成せいしつけいせいの段階で『模範もはんを示してくれる隣人りんじん(神)たち』という『掛け替えのない幸運こううんめぐまれた』のだろう」





「「……」」





「そうして見事に育てば『賢明けんめい』に、『聡明そうめいにも思慮深しりょぶかく』、『共感きょうかん』や『理知りち』が齎す『寛容かんよう』にさえいたって——」


「——なれど、『姿なぞ見たくはない』からこそ、『そう優しくあれるままにまもりたい』、『永久とわ保存ほぞんを成し遂げたい』とせつに思いは……だからこそ私で『皆という万民ばんみんさえ触れられなければ悪も生じ得ない世界』へとかこうのです」





(…………アデスさん)





「『私は青年せいねんがさない』という"魔王おうの確固たる決意"」


「なれど『自分のものとして占有せんゆうしたい』との"私欲しよくねがい"は叶わず……そうなのです。『青年は私に全てを支配される必要』も、『望まぬ事を強いられる理由』に『事情』さえのだ」





 "暗い瞳"と"真意"に様々な情を介在して『おうたるもの』の真剣しんけんの色味があおほうへと頷く。





「『誰もが誰かにとっての不快ふかい脅威きょういと成り得る事実』——つまりも多く『苦しみ』は『ままならぬものと関わり合いに生じる』」


「代表的な要所ようしょには『み』・『まれ』や『そだち』を『将来しょうらいかんがえのおよばぬおや』に『えらべぬ子』なども、その『うん』や『そなえ』が不足ふそくのことで生じる『虐待ぎゃくたい』さえ『我が不可視ふかしちから』に世界を預けてくれれば皆がそれらに悩まされることもなくなる」


「頭の割れるよう苦しく、やはり『望まず得たせい』に苦しむ心、『不快ふかい生理現象せいりげんしょう』にいたなげきも」


「『社会に関わることの利益を示さねばならぬ』とは『勤労きんろう義務ぎむ』さえ絶対でなく。よっても『ひく賃金ちんぎん』や『長時間労働ちょうじかんろうどう』に、また『十分な対価を払わぬ悪徳あくとく経営手腕けいえいしゅわん』さえるわれてなく」





「……」

「……」





そもそもの『労働の必要性』がなければ、『種族』だの『性別』だので『違い』あって一律に語れぬ者たちの『かいの見果てぬ機会均等きかいきんとう』に苦心くしんする必要こともない」


「『対面たいめん機会きかい』なども皆無なら『感染症かんせんしょう』のようなものさえ流行はやらぬ。影響の一つとして肉体に破壊を起こす『感染の構造体こうぞうたい』さえそうを出来ず……いや、青年や美神であれば理解を寄せてくれるかもしれませんが、『各種構造体かくしゅこうぞうたい病原菌びょうげんきんそれ自体も決して邪悪じゃあくなどとは決まっていない』」





「「……」」





只々ただただと多く皆は『自身じしん近縁きんえんものたちを繁栄はんえいさせねば』と不明ふめいに突き動かされただけのあって」


「そうした『生命根幹せいめいこんかんを成す意欲いよくしたがみな』が、『みならしくあることがあく』などと……そのようなことが——」





 けれども笑みを止めれば『揺るぎない眼』が『信念しんねん』の面構えも再びと見せる。





「——"あってはならぬ"」


「誰に対しても影響を及ばせぬなら『絶対の悪』などと誰にも『認定にんてい』はひょうする機会きかいのなくてあたわず。"させぬ"」





 果たして『多大ただい温情おんじょうを持っていよう』と『ただ自身の目的に向かって稼働かどうするのみ』が機械的に述べる事実で聴衆ちょうしゅう理想りそういざない続ける。





「例えば『青年のような者』に如何いか出自しゅつじがあろうと『世に存在する全てのいのち』は『おうまもるべきたみ』であり」


しからば、ひとしく。『美の女神イディア』。貴方あなたも……例え『女神めがみとしての貴方あなた』で如何様いかよう神格しんかくろうと、仮に"かろう"とも構わぬ」





「"……"」

「……」





「各位の願いは各位の世界にて実現を」





「……」

「……」





「そうして先で言ったよう『私で叶えられず許容も出来ぬもの』として、その『関係構築かんけいこうちくきん』には当然と『つようなことも含まれる』と重要を再三に」


「最大限に『えん』や『きずな』と呼ばれる『繋がり』を尊重しても、他者を求めるならそれは『精巧せいこう人形にんぎょう』のようなもので認識から"調整ちょうせい"を加えさせてもらう」





 その語りで『かつて光の戦いから護ってくれた戦士せんし』や『普段から生活を助けてくれる庇護者ひごしゃ』の面影も一旦に失せれば、『おうとして世界の在るべきを話す恩師』の姿は青年で何処か距離感のあって、遠く。

 以前から『ひと』や『かみ』と、若しくは『半端はんぱな神格』と『多面ためんの大神』などで『視座しざが違うのだ』という分かりきった事実も——それさえ聞こえる『人智を超えた発言の内容』からは見上げるような『高さ』が『及ばぬ想像』で実感を増してゆくばかりであった。





「広く世界には『猟奇的りょうきてき他者たしゃでる』ように理解し難くも『独特どくとくしあわせ』を持つ者が少なからずにいて、されど『実際の加害や被害に発展し得る可能性』は此処でも許されず」


はなはだしい其処までを行かずとも、やはり例えば……あいらしく『意中いちゅう相手あいて意識いしきされたい』と『無配慮ぶきよう好意こうい』が好む対象を軽く揶揄からかって——それでも『けなされた相手』には『一生もののきずとなる』事例だって往々にして存在するのだから」


「そういった行為の当事者では『悪気わるぎない』、『悪意あくいのない』ものさえ関わっては仕様もなく……管理する私でのだ」





 だがそれでも青年で『アデスのことを知りたい』と意欲のあれば『恩師の理想』を知って『に何が出来るか』と。

 "自他境界じたきょうかいの溶けた半端な存在"にも『自身にとっての理想を模索したい』姿勢が『異種の王』を前にして未だ聞く意識のかたむけをめることはできなかった。





「即ちでも『関係性のない断絶世界だんぜつせかい』こそが王として私の作る理想郷りそうきょう


「また極力に公平性こうへいせいす意味でも『神の言葉』が判断へ及ぼす影響も鑑みては、『魔王』のわたしことなるほか有力ゆうりょくな『王権候補者おうけんこうほしゃ』についても触れておく」





「"大神たいしん比肩ひけんする"それは……やはり?」

「"……"。第一には『神々かみがみおう』。"拡大かくだいつづけるひかりの"。あれなるは『まさしくの無限むげん』であって『際限さいげんなき幸福追求こうふくついきゅう』を世界に対して標榜ひょうぼうしている」

「女神アデスでも『個々の追求は極力に許す』としていましたが、貴方のそれとは違うのですか?」

「違う。神々の王で私の各論かくろんに対し『完全かんぜんもとめるもの』と呼んでは双方に何方どちらも『万民ばんみん幸福こうふく』を思って同じく——なれど、その『幸福こうふく定義ていぎ』に違いがあり、『目指す方法論』でも相容あいいれぬからこそ『対立たいりつを選ぶ』としている」

「"神王しんおうの定義する幸福"とは?」

「曰く『全て許される無限の世界では何もかもが取り返しのつくもの』と。『なぐられたほおれようとも即座そくざなおり、いたみをきらうなら苦痛くつう要素根本ようそこんぽんからを克服こくふくしてしまえばいい』と——『みな強者きょうしゃ理想』」

「そうして暗黒の女神では『そもそもなぐるような接触せっしよくゆるさぬ』と」

然様さようだ。私では『その僅か一時いっときでも不幸や苦痛が存在することが許せぬ』から——『狭量きょうりょうにも許してはならぬ』と信じるからこそ過去かつてに異を唱え、既にくだんの王が君臨する世の中へ『あらたなおう』として名乗りを上げた」





 そうして聞こえる"歴史的れきしてき"な言及が原初の古き女神で『過去に体験した事実』に基づいている。





「そういった差異さいの話では、"視点によって神王あれの方が器量きりょうまさっているのかもしれぬ"」

「……女神アデスでも『おくれを感じる』と言うのですか?」

「"ひかりさらなるさき見据みすえている"。『ざすやみ』と比しても『開放的かいほうてき』に、"私にはえぬ未来みらい"を見ている」

「……なんと」

われが到底と実現じつげんを信じられぬ領域に『あかるいゆめ』を掲げようとらしく……『他者への加害行為かどなせっしょくという幸せの形』さえ全て『自由じゆうで許さん』としては——正に現行世界でうつわひろい在り方が『広量こうりょう』にもはなはだしく」

「……」

「しかし時には些細ささいな理由でみな蹴散けちらして、気紛きまぐれに放任主義ほうにんしゅぎあきれるほど贔屓ひいきもしたと思えば、うつすら瞬間に行われてはや魔眼にもまらない……『大神の持つ多様の側面』を最もおもてあらわしたものが『自由じゆう化身けしん』だろう」

「……光の神の一柱ひとはしらにはそういった『しばられぬ側面』もおりになるのですね」





「そうして『無銘むめい王冠おうかん』の『大神ガイリオス』については言わずもがな……主義に主張を隠さぬは『全てを既知きち解明かいめいせん』。"目指す全知ぜんちすなわちが全能ぜんのう"」


大神あれ大神あれで『ただ只管ひたすら原初げんしょ衝動しょうどうに"知らん"』としては『皆の幸せ』や、『それを叶える方法論』を共に探すことも含まれ——けれど、『らずともいとする未知みち化身けしん』とではいずれに此処でも『神と神の利害の衝突』は避けられぬだろう」





 老婆で『邪魔じゃま面倒めんどう』を思っては杯の残りをあおるように。

 自らで新たに注ぎ直す青年ちゃあじに『今ぐらいは』と、老いても少女の姿で暗澹あんたんの気をまぎらわせてから言う。





「……よってもやはり『他者を脅かす言動の表れ以外で極力に全てを許そう』。それが魔王から皆に約束できる福利厚生ふくりこうせい、最大級の福祉ふくし


「私では『他者と関わり合いになる幸福それ以外』を認める」





「「……」」





「前提として如何いかな『』や『共同体きょうどうたい』や『思想しそう』にも、『千紫万紅せんしばんこうみなの我儘わがまま』に『せつ要望ようぼう』といった『異なる幸福論』を支え切ることなど不可能であり、"ひとにさえひとすべてはすくえない"」


「仮に『しんなる救済者きゅうさいしゃ』がいたとして『私利私欲しりしよく』や『苦境難局くきょうなんきょく』の対処に追われては、『"完全でない"なら狭い見識に他者への理解も及ばぬ』と……それこそまた『救済されるべき対象』や『ほどこす内容』を『恣意しいによって選別せんべつできてしまう』のだから」





 茶の湯を数杯に飲み干した神では『気分転換に冷水れいすいも欲しくなった』のだろう。

 アデスで触手が空間に開けた裂け目より『四角しかくこおり』を取り出しては杯に落とし入れ、中にかさを増した茶水ちゃみずは『四角そのままの形』に沿って急速に熱を冷やされてゆく。





「よってこそは『だれすくわない』、『だれにもすくわせない』」


「極力と何者の事情にも左右されぬ『構造こうぞうそのもの』が『たすけ』をそなえ、求められれば『各位の必要』をっても方円ほうえんしたがうは『願望がんぼううつわ』」





 するとおもむろに『鳴らす指』へ呼ばれては、女神たちの茶会も背景で色変いろがわり。





「その者にとって適した形へ……『戦い』を望むなら——"のようにそなえを"」





「「——"!!"」」





 其処は『天を突くたかきの宮殿きゅうでん』に、室内で立て掛けられるまばゆき『剣』や『槍』や『鎧』に『盾』に。

 何処からか『オオカミ』は吠えて『カラス』の鳴きも聞こえては、それら高く神経を逆立てさせる『ときこえ』の反響が館内部やかたないぶの情景一部。





「他方ではあたたかな陽光ようこうに、『恵みに満ちた生命の喜びを感じさせる場所』が良ければ……"こういったもの"なのでしょうか」





 だが、次の瞬間——魔眼の閉じて開いた直後には先の物々しさから一転して明朗の日差しの下に『白楊ハクヨウの木が茂る花園はなぞの』。

 更に加えて、ちょうど青年の座席をさかいにイディアのがわでは美神という大輪たいりんを中央に飾る上述のようであっても——かたやのアデスの鎮座する背景に『黄金おうごん燈芯草トウシンソウに満ちた葦原あしはら』などで各種理想的の自然風景が半分ずつに見えよう。





「……気に入れば『暫し現状維持このまま』として、適度にかぜでる感覚にもやすらげましょうか」





 言えば、穏やかな風が吹く。

 茶会で『突如として姿を現した絶景に見惚れる青年』や『植物の質感が実際のそれと遜色ないことを【せのちょう】のとまる花弁かべんの柔らかさに見て確かめる美神』も包んで——そより、そより。





くのごときにも『きな場所ばしょ』を愛し、『このかぜ』にも愛されればよい」


「『今まで誰に見向きもされなかった者』も含めて皆が手にする『機会きかい』は時間的じかんてき空間的くうかんてき……物質的ぶっしつてきにも『ゆとり』ある中で」





 するとまた魔眼の上には老眼鏡ろうがんきょうを付けて見せる女神でふところの本を取り出して言う。





「それまでは『とき余力よりょくのないことで出会えなかった作品』とも無限むげん時間じかんで向き合えれば……その『内容』や『予測よそく不可能性ふかのうせい』も各自の思い描くまま、好みのさまや身に馴染む速度でねがえ」





 そのまま読書の背後には『まれた本』や『多様のゲームソフト』、重なる四角の箱は『模型もけい』のもの?

 しかして、それらを背負っても手に持つは『完全幸福論かんぜんこうふくろん』と題された『中身が全て黒塗くろぬり』を頁捲ページめくりに流し見て、大いなる神が『楽しみの実演』を一端に示す。





ねがえ——"願望を叶える無限の力"へ」


「それも得てして『愛情を求める』なら『理解のある彼や彼女』のようにも振る舞い、『すこやか』を望もうと『める』を抱えたくも"常に貴方の側に寄り添ってくれる多機能の道具"を——『願いの形で顕現けんげんする万能ばんのううつわ』を各位に与えん」





 次で鳴らした指では背後に積み重なる物々を全て『おわん』や『はい』の即ち『うつわ』の形に変えても——今は『無用むよう長物ちょうぶつ』と。

 なんと『真新しい物』の数々を『屑籠くずかごらぬうつわと回収していく分身たち』で『てる』も『ひろう』もの『あつか自由じゆう』とさえ示して。





「より正確には。『運用うんようをしている』とも言えようが——『大きな注意点』としても『私から時空やの提供以外で何かを働きかけることはなく』、当然と覗き見ることもしません」


「密談にはばかりなく言って『一つ一つ私が案内してやるのも』に。何より『扱いの基準を好きにもできてしまう』と王たる神で『けて邪悪じゃあく』となってしまいますので……こればかりは仕方がない」


「ええ。仕方がありません。『内部にける贔屓ひいき』を許したとして、私も『個』である以上は『青年などばかり構ってしまいますから』ね?」





 そうして未知の観測者たちで話の『崇高』や『畏敬』に思えても、『死者の何もかもがひどあつかいを受ける訳でない』と知っては一つ『救われる』気持ちさえ青年にはあろう。




(……それなら、やっぱり——『これまでにくなったいのち全員すべて』が今も、冥界そこで……"安穏あんのん"と……?)




 なんと言っても『生命せいめい』と呼ばれる『霊魂れいこん始源しげん大神たいしん』で、『行き着く先』も『大神たいしんつくおだやかくらし』と分かっているなら——そうと神の言った『全てが完全なる無に終わる訳でもない』との事実で確かに『未知への恐怖』も此処に低減させられるものであった。





「そうして私は謂わば『万民ばんみん無害化むがいか』を為したいのかもしれません」


「しかし、『つめきばを引き抜いて取り上げる』ようなことをせず。ただそれらを持っていても『やいばが他者に届き得ぬ世界を作りたい』とは先刻に言い示した通り」





 斯くして、周囲一面と草花の茶会。

 女神らで"風景を楽しむ一服"を挟んだ後に白髪を揺らす魔王が再びと語る。





あたわず、みみくもおなじ。ふるわすこえとどかねば、手足てあしれることもなくの領域りょういきへ」


暗黒権能あんこくけんのうがそれを成す。一切全いっさいすべては『分断ぶんだん』によって」





「……」

「……」





「"しんに誰もがいこうむることのない世界"とは『誰がどうあっても構わぬもの』」


「言い換えては『だれ傷付きずつかぬ世界せかい』。私には、"その実現じつげんに向けたしき"がある」


「"御大層ごたいそうちから"もともなえば、残るは大神たいしんを筆頭にう相手を『撃砕げきさい』とするのみ」





(…………アデスさん)





「つまりも私は『他者と他者とをへだてられる自分』で『願う所を実現できる』と強く信じたからこそ、『くるしむたみ』のいて『自身におううつわ』即ちちからが『法整備ほうせいびそなえ』としてもあれば必然的にも『邪悪へ踏み出す』と決めたのだ」


「それは『さら悪魔あくま』、連れて二度と出さぬなら『拉致監禁らちかんきん』のようでも」


「時に強引でも虐待から遠ざける『救済』のようでも、そのどれも大きく間違いとは言い難いのだけれど——何より『死という確保』に『冥界への収容』は、他でもない『私で抱いた本願ほんがん』であって他者に如何な認識をされようと構わず」





(……そうまで、貴方は……——)





「優先すべきは『今ある苦痛』。皆を凡ゆる脅威から遠ざけねば——其れ、"流水りゅうすいかんがみるなくしても止水しすいかんがみることすら能わずに"」


「"理不尽に艱難辛苦かんなんしんくが平然とのさばる世界"から、『神々の王や我の如く身勝手みがって毒気どくけ』から離してやらねば……各位が各位の充足を己で見つけるのにさえいとまがない」





(——"みなを"……?)





「よっても最たる重要が『理解』、『邪悪な神の狂気』で皆に承認を取り付けられる訳もなければ『いたみの最中さなかつこと』も出来ず」


「"より具体的な思想を持ち合わせぬ皆"で、"私に比しても不完全"なら……『口にするだけの空虚くうきょ希望きぼう全幅ぜんぷくしんを置くことはできない』と——」





「「……」」





「『完全でなくば信用しきるに値しない』と一方的にも、荒々しくも——"魔王まおうかみで世界に理想りそう暗黒時代あんこくじだいもたらさん"」



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