『vs覇王少女⑩』

『vs覇王少女⑩』





「だが、気の巡りにとどこおりを生み出すほど、『機械の如き整然せいぜんの神に身心しんしんみだなにか』とは——……一体?」





 神々の眼下にも、波に当てられる中で『聖剣そのものたる神』は早急に金属と合わせて束ねる炎を地面に打つ『くい』として『いかり』の如く留まっても——地面から抉るのが水の波濤はとう





「"……"!"」

「く"——っ"、!!"」





 激しく波が撫でるのは『ただ外へ流さん』として優しく。

 されど、冷却で奪われる炎熱には赤き明度や輝度の勢いも次第と失せ、玉体の燐光りんこうも暗く『み』のようとされるのは正に『輝かしき戦歴の汚点おてん』にも見える表象か。

 生涯の全てを戦うことに費やして、『大神に挑んで健闘に敗れる』ならまだしも。

 "目の前の柱が如何に得意な存在"であろうと、『そのささやかな足引あしひきによって敗れた過去』は今に連綿れんめんと続いて変わることはない。





「——っ"!」

「"……"!"……"!!"」





 その『敗北に繋がった一因』は今でざつな炎のなわの拘束も、水で冷静に極まる黙考が即座に気体と溶けて身軽に乗りこなす上昇気流——続けての上空で雨のように凝固が降り出しても集まる実体が重みと加速で舞台を砕く降流掌こうりゅうしょう





「"……"」

「き——っ、さま……ッ"!」





 "例外中の例外"を前にしてまたも生じる『粗雑そざつほころび』は戦事に徹してきた神で『敵』に、いや『明確な敵とも成ろうとしない何か』に見るそれ以上の意味合い。

 因りても『修正しゅうせい』、『修正しゅうせいをせねば』。

 "高みへと再びに登り詰めるためには誤差のあった式を直してからでないと"。

 一つでも『あの程度の敗因』を不明のままに、克服こくふくせぬ間に残しては——『同じてつを踏まずが全てを超えてのいくさ究極きゅうきょく』と。

 即ち『僅かにも瑕疵かし』を残しては、"戦いに生きる神での極地"たる『最強さいきょう証明しょうめい』になど決して至れぬのだ。





「——ッ"! 、ッッ"——"!!"」





 故にも戦闘の天才は気の乱れた状態で乱れるなりの戦い方へ即座に適応開始。

 不調にあっても目的は明確、『戦うため』に戦いの中で編み出す技。





「ッ"——"!" 、—、——"!"」

「"……"!"」





 鋭い掌の水にかすめられて重く冷やし固められる肩を爆破パージから余波で蹴り出す動きにも集中。

 口を開く前と然して変わらぬように思える流麗は攻撃に、防御に。

 何と限界を超える今にも『必要な衝突インパクトの瞬間だけを奥義』に戻して互角の兆しさえ『己で強く手繰り寄せん』とするのか。






「う"ぅ"あ"ぁァ"——ッ"ッッあ"っ!!」

「"…………"!!!"」






 対しても玉体全身に張り巡らす水は『自分に勢いある今が、相手が体勢を立て直す前の』と、常軌じょうきいっした不測ふそくに備えての貯蓄も惜しみなく吐き出す決意に。

 正しく見上げる眼前で『かみおくのぞいた』たる、腕のない肩口から溢れ出す暴風ぼうふうを伴っての炎熱——鋼や岩との『爆破融合エクスプローシブ・マージ』を経て『巨大にうねる岩漿マグマそのものが鉄槌てっつい怪腕かいわん』へ恐れも胸に立ち向かう水流果断すいりゅうかだん

 爆熱の迫る前へ突き出す両腕より圧力でも散らす水で『あみを張る』ようの『絋流こうりゅう』に受けてを阻み、その攻防一体とする極小微細の隙間から各部位がしずくとなって飛び出ては——走る。






「"………………"!!!"」






 熱源に向かって走る。

 その涼しげに瞬く青色で目標を目指す間も対するゲラスでは『残る女神の玉手で迎え撃たん』と放つ炎の弾幕に豪腕を振りかざす様のありて。

 肩口より滲出しんしゅつする赤き熱の線も宛ら『聖剣を横に縦に』と身ごと翻す乱舞。

 なれど『薙ぐ描写にも恐れず』が隙間を縫う青年さえ『飛沫しぶきの舞う』ようにもみかわしの回転で滑って紙一重に滑走プレーニング——舞台に刻みし蛇行描写の軌跡スネークムーブ






「——が…っ、は……!」

「"……"!!"」






 突き刺した蛟竜掌こうりゅうしょうが炎を吹き散らすようにも。

 至る腹から神の玉体を震撼しんかんさせ——そうしてさきさきへ!





「"……"!"……"!"……"!"……"!"……"!"……"!"……"!"……"!"……"!"……"!"……"!"……"!"……"!"っ——"!!"」





 絶えぬ行く川の表象が相手が抜け出せぬまでの必殺。

 密着させた掌から更につつみつよう振動を深くの『鼛流こうりゅう』——吹き飛ばすかの勢いを寸前に引き戻すようでは『控流こうりゅう』——また前に進もうとするのを押さえてめるなら『扣流掌こうりゅうしょう』——そうして初めの太鼓打たいこうちに戻っての繰り返しが循環じゅんかん連鎖れんさ

 大きく相手の保有する永久機関の火力を同機関に成せる『永遠を体現する』かの動作で削って、此処に神をも弱らせて。






「"…………"!!"」






 囲む水の障壁に阻まれて声も漏らせぬ神に、締めに吹き飛ばす青の発気。

 同時には玉体から手をも使わず飛び出た多くの渦巻うずまきが手裏剣の如くでも一つ一つで相手を吸い寄せ、遠心力では飛ばし。

 最後に空中で合わさって『大きな渦』の顕現に引き寄せる拘束が『排水溝はいすいこうを渦巻く水』のようにも、『宇宙そらあなにも物質が落ちて行く際の挙動』とよく似ていた。

 例えて『武舞台という浴槽の内部』を移動する排水によって起こされるなみは、青年の定める『場外への排水溝でぐち』に向かって余分な水を押し込むことでも『降着こうちゃく』の現象を大幅に加速させ——相手の炎熱を逃がさない『坑流こうりゅう』の導き。







「"…………"!!"…………"」







 そうして遂に熱膨張の身動きの止まる所へ。

 螺旋構造らせんこうぞうを纏う掌が天に掲げるよう突き出しても"己にも理解しきれぬ思い"を、そのままに。

 飛び出た先の世界で辛苦しんく神秘しんぴ翻弄ほんろうされながらも複雑怪奇ふくざつかいきの胸中を止めぬ思考——いや、のだ。

 悲嘆に暮れても心で折れても、止められず。

 終わりの先で『未だ続く己』の苦悩を止め処なければ『渦巻いた力』としても、心の如くに描きし結晶。

 青く水の逆巻まいて練り上げ続ける腕から『最後の必殺を放たん』との瞬間が————"いま"。







「"……蛟竜こうりゅう、しょぅ、らせんし、き…………————」







 だが、とどめを刺そうとする激闘の果てに——"青年でも奥義状態の解除"。

 風に散るようでも集めていた水の勢いが飛び去り、清潔でも制御困難となった流れが口内より染み出して、剰え面頬の下から首筋にまでつやあるざまで舞台に顔からを倒れ伏す。





「——!? 我が友!」

「甘さが出たか……いや。"戦神にも粘り"のあれば、『時間切れ』。青年に初の本格運用でも『持続の限界』だ」





 恩師の言及通りに奥義の継続使用時間としては最長記録を更新しながら、けれど、事実として『武神の劣勢でする足掻き』に『止まらぬ戦意』も見事であったから。

 即ち『青年の優勢でも相手の奮闘によって押し切るまでの時間も削られた』のであり、水のけて拘束から解放される女神も含めて今の『共倒ともだおれ』の状況が観衆の前に姿を現す。





「あれなるは『奥義おうぎ』であり、『極まっている』のだぞ。そう易々と使いこなせるものではなく、初の本格なら使用中に前後で少なからずの『不測ふそく』がある」

「やはり危険な状態では……ないのですよね?」

「『単に疲弊ひへいした』ようなものであって案ずるな。されど、『神に必要ない呼吸なぞが詰まっている』に明らかと循環機能が上手く運んでいない」





 よって、舞台上には共に息が切れるような二柱が地に伏す。





「……っ"、く"、……っ"、……!」





 面頬から整うあごふちに液体を垂らしては水のしたたおんな





「——、、"——ぁ"、ッ"……ぐ、ぅ、ぬ"……!!"」





 片や弱まる火力で身の乾燥処置の出来ずに。

 ぬるれても薄い衣の張り付いて山形やまなりと淡い下着の透けて見える女。






「…………っ"、っっ!」

「————ッ"!」






 各位で青や黒や白銀の髪に、衣服が水浸しに。

 また蒸気やの湿気でもわずらわしく吸着して身の重く——だが、『それでも負けぬ』と泥まみれ。






「っ……はぁ……は、っ……」

「——ッ……っ……お、わり……だ……ッ"!」






 舞台の下から覗く、若しくは液状化した諸々の泥濘でいねいに足を取られながら。

 相手と仮面越しに睨み合う向きから『立ち上がる』のも共通。

 双方に息の荒ければ、記録が許されるなら生物学者せいぶつがくしゃなどにとって歴史的なものになるだろう光景で——『神が呼吸をしている』。

 "補給ほきゅうをしている"。

 非常時に於ける緊急エネルギー生産にも補助的に使う口腔部こうこうぶから大気中の物質を呼吸として取り込み、原素変換が更なる起爆剤を作っている。






「これ、で————"!!"」

「……っ"!! (流れ、を————)っ"、"————!"!"」






 そうして、それら間延びの間には活動に必要な力を最低限に取り戻し始めた永久無限の神。

 両者に苦悶の感情を露わとする表情にも『泥臭く相手を押しやろう』とする直線的な出力勝負が——佳境かきょうへ。







「————『終わり』だあ"ぁ"ぁ————!"!"」

「——"!!?" ぐっっ"……!?" っ、ぁ"ぁぁ"ぁ"ぁぁぁぁ"——っ!!"!"」







 水と炎を振り絞って、共に片手より撃ち合う流力放射ストリーム

 対照的な色と回転方向の渦が噛み付き合うようにも正面から衝突しての勢いが、『相手を呑み切らん』とせめう。





「——うぉぉぉぉぉぉッ!! いけ〜〜! 川水女神かわみずめがみ〜〜ッ!!!」

「良きデータだ」





何方どちら味方みかたなのだ。知性おまえたちは」





「行ってしまうのですか? おいおい! やっちまうのですか? 『極神ジャイアント殺しキリング』を!?」


「それも『爆熱光輝ばくねつこうきの吾が傑作』に、『その光の失せた所にどろなぞを掛ける』ようでも興奮する王道——だが、『吾ぐらいはゲラスを応援してやらないと可哀想』だから! う、うぉぉぉぉぉ! 頑張れゲイル・ブラスト! 負けるなゲイル・ブラスト!!」





 見所のある若者を好んで知者たちも川水の応援に加わる中。

 場では互いに押し切る目的で力を比べ合い。

 青年で『はずかしめる目的』もなければ純粋に『場外へと相手を運び出したい』一心で流れを押しても——。







「「——"最強戦オレみち"から退けッ! "通過点つうかてん"!!/——っ"! ……ぐ、っ"!?"」」







「だが、極限ここまでを来ても! 同じような条件であれば! どれだけ制限を受けようが——『戦士としての力量はゲラスがうえ』ッ!!」





 知者プロムの語って見せた真実として油断ならぬは強兵きょうへい

 先見に奥義解除の青年でも熱感知に鈍くなった頃合いを見計らい、拘束も解かれて高所から舞台に落下で衝突した時で——身から弾けた土煙の中には

 即ちが今で粉塵ふんじん、気流と送られても。

 青年女神の現在地に『予測して置いてあった爆弾』の一つで足場が沈んだ。

 炎熱放射のストリームで着火しても爆発に身の傾いた一瞬で競り合う主導権を握り、比較して『青年の方が速く場外の際へと追いやられる』ようにしている。







「……ぐっ!? っ、ぁぁ"……っ"っ……あぁ、ぐぅ、ッ"!!?"」







「わ——"我が友"!」

「…………」





 だが、そうしての暗い黙考が『こうも力を出し切ってに完全と負けては青年の今後に重大な影響を及ぼすだろう』ことも考慮して『程々ほどほどに』と。

 現実的な選択肢として『横槍よこやり棄権きけん』も視野に決定を下す判断基準の到達より僅かに——早く。





(——……もう…、っ…——!、!)





 神々でも適切な形容を思わず探すのが言葉なき間での『勝利』へ。

 今のこれは『戦い』であっても『相手の存在や価値を否定するものでなかった』。

 即ち規則ルールという線引きのある競技であったから、故には『執着からの張り合い』を選んだ者へ。





(げん、……か、い————っ"!)





 青年は決着の場面で『張り合いに勝負しない』こと選ぶ。

 比較して相手ほど『目前の』にこだわってはいなかったから。

 この戦いは『戦の神を含めた世の理不尽』への『己が屈さぬ』と何より自身に行動で決意を再確認する場であったから——『勝負事自体しょうぶごとじたい』へは冷めている思考で冷静に。






(ふるえが止まらなくても、もう……っ! ————"!")






 両手に触手も加えて支える水流と限界間際ギリギリに踏み止まる中——『最後の勝機』を見据えては惑乱から引き締まる眼光。

 滑り、後退りの止まらぬ足場で『どうせ力負けでも滑るなら』と、鬩ぎ合いに突き出して使う腕より流用する振動を自らの『泥を吸って固まった右足』へ。

 そうしては、その震わす軸足を何時に『液体と変える波』を備えても『姿勢の崩れ去る瞬間』こそが舞台という土俵どひょうきわで決着に向かう『まり』の起こる時であった。






(————"!")






 そう、ただ青年で『一瞬の一手に力の流域制御りゅういきせいぎょを上回っただけ』でも、此処は『血生臭いいくさ』でもなければ『競技の場』には『その一瞬だけ』で充分じゅうぶんだ。

 その決着へ導く様は崩す足と一気に腰を落とし、体を捻って——ようでは『り』だろう。







貴様きさま"はっ、オレの"!! 『だい』に————」








「————っ! (っ"——ぁぁぁぁぁ"ぁ"ぁ"—————!!」








 今は女神のゲラス自身でも生涯で初めて抱いた『弱敵なれどの打ち倒せぬ不可解な敵』への未知なる熱を。

 燃える女神で肩を入れ込み、前のめりとなっていた執拗しつようの勢いをストリームごとを投げる。

 相手に向けて対抗するより寧ろ『自身に向かう』ようの『引きの渦穴』を掌に添えても『打ちのめしてこそ』とは取り合わず。

 敵の攻勢をただけて、めても。

 終いには『流す』結果で『赤』と『青』の二つの波長はちょうが擦れ違う。











「…………っ」——/——「————"!"」











 斜めに入れ替えた肩の横に仮面が過ぎ去って。

 やはり、戦いの中にも二者の視点が合うことはなく。

 青年では『理解の遠い相手』へ掛ける一言も見つからなければ『ただいなした相手』として背後の場外にねつぎるのを見送みおくった。




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