『vs覇王少女⑨』

『vs覇王少女⑨』





「……」





 そのよう『奥義の目覚めた』と言った少し後に青年女神が『地母神レイママの長大むねに強い関心を示した』時は暗黒でも不貞腐れる時のありましたが——今でそんなことは重要ではない。





「"……"!"」

「"——"!"」





 極限に至った故からに。

 実戦で本格的な奥義運用を可能としても——"変わった流れ"。




「女神アデス。は……?」




 流れが尾を引く水の手裏剣に囲まれても炎の発気が吹き飛ばす様を眼下に美の女神が問いを掛ける。




「……」

「我が友の変わりよう。"私も未知とするあれ"は、一体……?」




 美神イディアで尋ねながら座る位置を口頭で問う対象の暗黒に寄せ直しては、『りをもどす』ような二者で髪のしろ黄色きいろ女神はなたち。




「……詳細は追って。他でもない『青年の許可ゆるし』も得てから『我々だけの秘密』としましょう」




 対するアデスでは虹髪にじがみの色彩に覗き込まれても、視線は教え子に向けるそのままに『内緒の話』と示し合わせて語る。




「それは……はい。ですが、"間違っても大きく危険なものではない"のですよね?」

「安全性に関しては私の下でも保証を」

「……」

「今に開示を許された情報として物は言い様だが、平易には『私』や『女神イディア』のように差のある者さえ——"例え差のあっても"、『平等に扱い難くとも全身全霊をってあいさん』とするが故の力でもある」

「……?」




 今に目覚めた青年は何か『精緻せいちな手付き』で『開発』のような技巧も凄く。

 例えるなら『何処をどう刺激すれば相手の心に波を起こせるか』も的確に把握できよう恐るべき力を持つから。

 因りて興味半分にも美の女神が呑まれぬよう『詳細告知は師の立ち合いの下で追々』として今は断片的にも安心の材料を与える。




「我々のような魔性ましょうにも多くの愛をいだいて、けれど自己本位に軽率と手出ししない事実でも……えらいのです。げられている」

「……そうした気遣いについては私でも早くから感じ取っていましたが、では、力とは『克己心こっきしん』のようなものと?」

「それもありましょうが……兎角、念の為で近しい者にも詳細は秘していたとして、あれこそが私と青年の鍛錬で編み出した『新たな奥義おうぎ』」

「"新たな"……?」

「生まれながらに完成した神が知るはずもない未熟みじゅくの——『水火すいかせず』の"青くも際立つ未知の領域"なのだ」

「……みずおぼれて、"あぶられようとの気勢きせい"が……?」

「"……"」




 観戦席の女神たちで語り合う時にも武舞台では『無心むしん』と『有心うしん』でも其々の奥義が互角。





「"——"!"」





 手裏剣で僅かに切断された銀髪を燃えるままに握り、束ねても聖剣とする刀鍛治かたなかじの猛攻。

 戦神ゲラスという『作り手』であって『使い手』としてもひじりが爆発的な踏み込みから仕掛けるが、迎え撃つ青年でも自らの身を覆うように伸ばす流水の青髪。





「"——"!"——"!!"」

「"……"!!"」





 髪の扱いをならうようで『傚流こうりゅう』、毛の根から先までげんに気を張り渡しても『亙流自在こうりゅうじざい』に操っての防御バリア

 散らす火花が水に溶けて、水素の燃えて輝く様は二者の衝突に極小な星々の生まれるようにも鮮明に。

 片や『戦闘狂せんとうきょうの究極』と、『乳狂ちちぐるいの究極』は——。

 いや、『くるう』と言っても何か『神に礼を欠く』感じのすれば『戦い好き(?)』と『乳房が好ましくなり過ぎて』の極地にまみえる華やかさが対照的の女神。





「「"——"!/!"……"」」





 赤と青で同じ光景に己の色を塗り替えるようにも身の振る軌跡は、何方どちらも『全て』にあって。

 そう、『全て』とは『戦』とも『乳房』ともを包括する『全容概念ぜんようがいねん』であるからして。

 やはりは此処に向かい合う二者でも『ディオス』や『ガイリオス』の始祖に連なり、それ以前にもの数多宇宙あまたうちゅうから続く世界の根源的な力を引き出しての——切り結ぶ武闘バトル

 変え難くとも打つかり合う己の在り方は、無言にも叫ぶ『たましい』の霊的れいてきが神の動作で実在の形を現わすだろう。




「時に『愛し、愛されたい』。『己の生きた足跡を残したい』、『己の生涯に意味を見出さん』とする……ある意味では何時何時いつなんどきの誰もが有して『永遠とわ普遍ふへん』の力」

「『私への愛』で其処までを……では、美の女神でまた『己の魅力が我が友を狂わせてしまう』ような——」

「勘違いをするな。"貴方だけのものではない"。『我々われわれへのあい』だ」

「は、はい」

「一つの到達点で極まって、世で最も困難にして偉大の行いは『他身たみのため』——『他者たしゃ』が『万民ばんみん』を意味しても『おううつわ』すら垣間見かいまみえる」

「……」

「『自他の境界線を希薄きはく』とした以降に『己の幸せは皆の幸せ』、『皆が幸せになってくれねば己で安らかに息をけぬ』のだと……何処か痛ましくも『"救済や願望"を叶える純粋な機構に成らん』として凄烈せいれつ





「"……"!"」





「よっては苦悩に己を探すほど『皆のため』、『自分だれかのため』」


「其れこそは『忘れてならぬ理想の最たる一つ』。即ち『原初の願い』に至っても、"長年を超えて現代いまに残る夢を当代とうだいに見限らず『背負わん』とする者"」




 それは、『失意』を知る暗黒で思わず語気に熱を与えるほどの。




「直に分かる。あの者は決して『仇敵きゅうてきであっても尊厳そんげんを破壊したい訳ではない』と態度によって示してくれるだろうから」


「青年は私のような『悪魔あくま』にさえ、"その幸福の道行みちゆきを案じてくれる"」




「……」




「『ぜんを知ってもどうにかあくを許そう』と、『あくに魅力を感じても善性ぜんせいの道を決して劣るものとはせず』に……『誰が誰であっても問題とならぬ究極の理想を探す』のだと努めてくれた」




 舞台で『相手を押し出さんとするてのひら』は。

 蛟竜こうりゅうは激しき流れを正面から身に知る受動にも『するりするり』と、『荒ぶる戦の化身』とさえ『己での落とし所』を探して止まることはない。




「『誰に愛されぬ者』も含めて『と模索を続ける』からこその無限むげんの力、奥義……『他者の幸福』を祈っても『世界で重大な一つの根源的こんげんてきしき』へと到達した極点きょくてんさまである」

「……」

「"今のあまね事物じぶつ事象じしょうを認めるあの者"で、『貴賎きせん』に『正誤せいご』などは心に固くある『絶対の価値基準』ではないのだろうよ」




 その『悩んでも迷いを感じさせぬ爽快そうかい』の様は『無限むげん』や『永久えいきゅう』の理を背負う多くの神々にさえ各位の『目指す所』を思わせる。

 若くも『初心しょしん』に立ち返らせては『目的を再び明確とさせてくれるかい』で尊大たちの難しい気すらやわらげる。




「神で『変化を起こし得た内側の理由』は分からぬ……だが、思えば『裁判さいばん』の時から見所みどころはあった」

「"天上の神をも恐れぬ"なら、其れは真理探究しんりたんきゅうに臨む『有望な学びの姿勢』もあるのだということ……『一度は学徒としても指導をしてみたい』ものだ」




「一度二度に顔を合わせた程度で何を言う。つばを付けようと目論んでも無駄だ。れは『真っ先に暗黒わたしが教え子とした者』。ぞ」




「『活躍すると急に親しき間柄が増える現象やつ』ではないか」




 川水が戦神に対抗して見せる『大元の原因』は未だ不明なれど『知のある若者の成長』に感心するプロムにワイゼンへは暗黒と光の大神で指摘を述べた。




「……しかし、元はと言えば『川水』であろうと『物質はうちから生じた一部』なのだが」

「そうまでを言えばきりがないだろう。『現世の全てに通ずる創造主』なら直接的にも間接的にも、"誰にも恩恵は授けている"のだから」




 残る大神のガイリオスまでも関わりを言えば、遠因えんいんたる太祖たいそとしての自負心じふしんか。

 各位が好き勝手に調子の良くては神々の王さえ突っ込みに回らざるを得ず、観戦者たちで自身の『審美眼しんびがん』や『洞察力どうさつりょく』を誇る——やいのやいの。




 ————————————————




 舞台から離れた遠方では青年を『可愛い後輩』と思っていた第三世代の女神たちでも空に映る中継で『戦いに際して引き締まる表情』の差異ギャップに驚き、騒ぎ。




「……我が、同士どうし




 また別の某所では『古き女神たち』のグラウ。

 その事実として『不壊の暗黒』に喫した敗北から疑問を抱いた『破壊神格』の彼女や——『己らが予備のようなものである』と知らされて無気力でいたのに精力的に世界を知らんと目的に邁進する知識の神との出会いに苛立ちを見せても、負かされてから己でも『こいつの先を見てみたい』と燃えるようになったプロムのような者で。




 ————————————————




「……」




 つまり『敗北や衝突によって変化を経験した光の神々』は、『己の気に入らぬを全て吹き飛ばしてこその自由』との燃える性根を有して苛烈な神性たち。

 そうした神性にとっては今現在に『青年女神が単に意地を張る以上の意味合い』、『ともすれば女神ルティスによって誰の目にも明らかな敗戦を元とはいえ光神ゲラスが経たのなら』——『それこそ未知の何かが起こるのではないか』という『興味』とも『期待』とも言えよう『疑惑ぎわくの眼差し』もあり。




「……何かボクでも『暗黒の女神に暗殺されかけた時』を思い出します。『宇宙創世の光』たるこのかみを」




 果たして『慈悲なき戦争に何が起こるか』と。

 王の手掛けた『かみ傑作けっさくへの影響』も『流水りゅうすい』にかんがみては諸神でも目の離せぬ戦。




「……しかして、成る程? "水を変えるもの"といえばやはり、ねつからは『温度おんど』のようなものであるか」

あわを『情報収集の先触れ』として『やんわり』敵の攻勢についてを分析し、ぬるくも熱の齎す現象は、それこそ『膨張ぼうちょう』のようなものへ半自動的にも素早く対処しているのだろう」

「これも大神われらで再現は出来るだろうか。大神ガイリオスで『川水』に成ってもらって」




 話を世間話から観戦の真面目に戻しても他の神に先んじて変化に気付いた大神。

 高位中の高位の神の二者で、『大神なら似た様な事を更に精度高くで秒の内に再現可能』と言ってのける。




「吾はゲラスをやる。気付けば『銀髪女神』でそれらしいので」

「では、システマチックが分かり易くも余は寝ています——zzZ」

「そうして『火炎かえん』と『光炎こうえん』ではまた事情が異なるのだが、『既に燃えている』のと『燃えるより速くの熱』では対応コストが段違いなのだが……つまり、"前者なら川水で追い付けても然したる不思議はない"か」




 実際にガイリオスが鼻から泡を吹いて寝入り、ディオスが拳に炎を出しても素早いパンチ連続を泡の破裂に押してもらっても首振りで易々に避けてみせた。




「……だが、問題はそれをやっているのが下位かい下位かい、"若年じゃくねんの川水である"ということ」




 そうして考察を引き継いだのが黄金に発色しても舞台上の光景を領域の壁越しにも確と照らして見定めんとするプロム。




「なら果たして、その"真なる理由りゆう"? "原因げんいん"? "動機どうき"とは?」


「『生まれてこのかたを戦いの為に費やしてきた神』なら理解できる、『納得のいく理由』がある。ゲで武の極地に行き着いていて何ら不思議なく……だが——」




 暗黒に許可される範囲で隻眼が注視しても舞台上の其処にはやはり——燃える白銀に対して濡れる黒髪で鍔迫つばぜいをしてみせる勇ましい若武者わかむしゃの姿。




「——『似て非なる領域に踏み込む川水』で、が……?」




 やはりの殆ど互角が何方も劣勢とは見えない。

 正に至近距離に迫る肉迫で、こうも変調が著しければ『序盤に一方的な遅れを取っていた』ことさえ不可解に思えるほどが『詳細な事情』を知るだろう『ダーク・X・フォース』の二柱に怪訝の視線を投げる。





「"いくさ大馬鹿おおばかに迫るそれ程の動機"や、"執念しゅうねんのようなものが生後数年せいごすうねんの神"に?」





「……」

「……」





 しかし勿論、細かに教えてやる義理も理由もない女神たちでの沈黙。

 美の女神を不可視の加護で庇う状態の暗黒で引き続き僅かにも勘付いたのだろう神王には『世界全体ごとに掛ける口封じ』としつつ今は口数少なくも戦場に立つ青年女神の応援に徹する。





("…………")





 そうして戦場には念も情も捨てずに高みへ昇る華。

 地に堕ちて尚は果てのない世界を歩み続ける者同士で飛沫しぶき火花ひばなが絶えぬ派手の衝突。





「"……"!"……"!"」

「"——"、"————"」





 共に髪で切り合えば、熱ごとに刀身を水が絡め取っても『冷却の掌を打たん』と、"次第に鈍重となる聖剣の振り"で戦神ゲラスが守勢に。

 その遅くなる事実として今度は『染み込む水』が不純物を持って刃を錆び付かせ、しかし巧者は伸びてくる触手への回避と同時にも舞台のはがねに削らせるぎ姿で刀身の更に鋭利が赤く。

 軸合わせも一瞬に叩き付ける赤熱の刃で、砕ける足場に飛び散った破片さえ耳飾りの放つ風圧が押して『弾丸』として飛ばしても。

 早くに風に揺れる熱の変化から動きを予測出来ている青年でも厚み持たせる水圧の膜が弾を破砕し、そのまま単一の規模で上回る自身を壁ごと質量を押し付けるようにの体当たり。





「"——"!!"——"!!"——"!!"——"!!"——"!!"——"!!"——"!!!"」





 対する迅速の神は対応にも横に回転するゲラスで両手に持つ双聖剣と長髪が凄まじい勢いで回転鋸かいてんのこぎりの如くも壁に切れ込みを入れるようと挑み。

 練り上げられた水圧と熱の交差し、接触の度に弾けて爆ぜる耳鳴りのような音の連続が徐々に高音域こうおんいきと移って人の耳に捉えられなくなっても——聞こえぬ音より速くの光景が大規模な爆発として見える。





「"———"」

「"…………"」





 しかして勢いで後退する最中にも相手への補足を止めぬ気の鋭さが片や『水の滴って湿気』の、片や『水を寄せ付けぬ熱気』の映えて見目良い女ども。

 それは『感覚的にも無意識に後出し最善手を打てるゲラス』と、一方は『細かな膨張と振動を見極めてに解を導き出す実証的にも意識で先読みのルティス』で舞台に残る二者。

 共に『超高精度の近未来予測演算きんみらいよそくえんざん』を持てば、技の極まる神の戦いは往々にして『最適解をどれだけ早く算出』し、『実際の行動として相手より速く・多くを無限で上回るまで繰り出せるか』を虎視眈々こしたんたんと狙っても眼力に回路で走る輝き失せずが生物発光の『赤』に『青』。





「だが今や『光の神格』を失って、その万能波ばんのうウェイブの定石たる『火攻ひぜめ・水攻みずぜめ・ビッグバンめ』——」


「それら超光神ちょうこうしんの『究極閃光きゅうきょくせんこうワンショットキル。手札補充てふだほじゅうの間すら与えずの『スーパー電撃戦でんげきせん』を不可能とした吾が子で——"果たして氾濫暴威はんらんぼうい如何いかんする"?」





 碧眼の青年では『ちち』をはじめとしたいろに狂って、『生存』に『幸福』を望み続ける根源的な力の結集。

 今や身に触れる乳糖の香り、それにいだいてふるつ思いさえ『膨れ上がる力』と呑んで。

 "何かを成したい"、"残したい"。

 "命ある限り諦めきれぬ生への渇望"、その極地。

 現実的に夢を考え始めた多感の時期へ臨死の刻み付けた喪失そうしつの恐怖で極まりに極まっては『諦めて動きを止めれば死が近付くのみ』、『止まるな』、『生きることを望むなら座して死を待つなおのれ』と無限の原動力を半端の青二才にさえ齎す。





「"……"!"……"!"」





 相手の足下から『間欠泉かんけつせん』の噴出を起こさせる足踏みで、その連続に回避を強いた後方転回こうほうてんかいの落下予測地点に先んじて設置する水——大きな熱の触れて弾ければ、波の溢れて女神の体を濡らしても粘性に張り付く包囲の水風船を置き。





「"————"!!"」





 だが自由落下していたゲラスで背を下にしていた体勢からの自爆で身を入れ替える反転。

 続けて自身に起こす幾つもの爆発の勢いで荒々しく狂気が乱舞で回転しながらも、撒き散らす疾風と爆風で設置兵器のことごとくを一掃する『美少女爆撃機びしょうじょばくげきき』の壊滅的な有り様が『焦土作戦しょうどさくせんを単騎で実現した』ようなもの。

 この少女の身に詰まる絶大の火力には、熱を持った風の刃と爆発を溶けて辛くも水で鋼を固めた防空壕ぼうくうごうに躱す青年で——燃えても冷めても女神の形を浮上し直した場所に再び向かい合う位置関係の二者。





「「"——"!!"——"/"……"!!"……"」」





 赤きは『内燃機関』に蓄積した物質を『可燃物』として利用の出来る玉体に大きくさんそを吸ってから——酸化の反応が『高圧縮の息吹ブレス』としてを吐き。

 青きは舞台全体を灼熱に呑まれても吹き飛ばされないようにはねじる体の屈んだ自身を起点に、急速と湧かせる水の——その『渦巻大河うずまきたいが』に作る連続的な振動の波紋はもんで息遣いを押し返して消化する青年。





「"……"!"」

「"——"!!"」





 だかするとまるで『意思持つ火山と河川が敵対する』ような光景の直後にはぬる水霧すいむの隙間を縫う煌めき。

 吹き抜ける一陣の風が水にくぐもる光の反射を塗り替えるようにも明瞭と乾かして、縫うのないなら殴り。

 蹴っても、己の道を切り開いた聖拳せいけんの炎熱が爆発的にも距離を縮めて『近接格闘主体』に迫り来る。





「危険を押しても遠距離に撃ち合う速度や重量などの性能差を鑑みて、殆ど動き出しに初速しょそくも誤差となる『至近距離の攻防』に勝機を見ている?」





 その不屈の闘志を前にはプロムが現状を分析に言っても。

 例え流れを五分ごぶとされても『未だ老兵の方が上手く対応に回り』、『上回るような兆しさえ見える』との物言い。





「真面に食らえば一撃が重大でも、『攻勢を掛け続けることで処理に多大な負荷も掛けるのが最善』としているのか」





 そうして、残る一方に実を言っては『圧縮思考の負荷は若き未熟の女神にとって非常に大きく』、即ち『有心の秘奥の使用時間は極めて限られるだろう』ことも指導を担った神で側の美神に漏らす実状。





「……しかし、どうなのでしょうか?」

「……」

「一応に形勢を立て直したとはいえ、"未だ我が友にも明確な勝算が掴み切れていない"、見方によっては『攻めあぐねる』ようでもありますが……果たして『奥義とやらの持続』は如何程いかほどに?」

「……強敵相手を想定しての模擬戦の例から考えれば……間もなく、"最長記録を更新する"」

「……では、もう"何時いつに解除されてもおかしくない"と?」

「……これよりは『未知の領域』となる」

「……未知の女神に未知そうを言われては不安です。ともすれば五分ごぶでなく、寧ろ『粘り勝ち』のすじが相手にあるようなら『実質的には我が友の不利』なのではありませんか?」

「……今日は負けてよいよい。例え敗北を喫したとして青年は魅力的です」

「女神……」

「よっても時に我々でも甘々あまあまと、失意を包容でも慰めてから適切な指導を考えてやりましょう」

「……我が友。私には応援することしか出来ないようです」

「ふむ。それでも私という大神で一つ当たりを付けるなら、若干の贔屓目に見ても『最後の一撃が出し切れるかどうか』が勝負の大きな別れ目になるでしょうか」





 幾ら流れの『互角』に変われども『逆転』とまではいかぬ。

 女神の心配も壁に隔たれて聞こえぬなら、『このまま押し切れなければズルズルと劣勢へ戻されるだろう』ことも自覚のある青年で危惧さえ力に乗せて『只管に全力あるのみ』と変わらぬ意気で進めば——。





「だが、これ程までの時間には戦神でも連続した奥義の使用にデータがなく、『ゲラスにとっても未知の領域』が、今」





 ——神と神の水火すいかで切り結ぶ戦場に『更なる変化』が『おと』を現す。





「よって、もし仮に、剰え先に『聖剣で集中を切らす』ような『前代未聞』のことあれば——」







「"——、お——ま、え——!"」







「——……なんと?」





 そうして聞こえたのが女寄り《おんなより》ののどからの玉声。

 しかし、『発声の主』は各位に目を見開くなど驚きに口を開いたままなどの『アデス』でも『ディオス』でも『ガイリオス』でも『イディア』でも——よもや『集中を続ける青年女神ルティス』でもなければ。






「"……"」

さま——っ"!」






「いや別に今回は発言を禁止されていなくとも、まさか、ゲラスが——奴がだと?」






「"……"」

「"貴様"——ッ! ごときがっ!」






なみへんだ! !?」






 炎熱と水冷に等しき勢力を競う——いや、後者に傾いても『大きく後退りした前者』が何やら言葉を発し始める。





「唯一だろう負け筋を言った側から! 『それなら俺の未來視みらいしもまだそれなり』と——いや、"性能で勝る相手を前に無駄口を叩く余裕はない"だろう!」






「オレ、の——っ"!」






「な、なんだ!? "明らかに無心ではない"! よもや『戦いのプロ』が何をやっている——まさか、『私情しじょうでプロにてっするのをめた』とでも言うのかっ!??」





 因りては先行して集中を続けていた戦神の方が『まさかまさか』と先に気を切らす緊急事態で——今再び、戦場の流れが変わり出す。






「オレで——!」

「"……"」

「——"貴様を"!!」






 寡黙で語るようになっても容赦なく、今や『贄の如き少女の立場』も入れ替わった。

 即ち、気流からは水流へ。

 風上かざかみから川下かわしもにあった気体を、流体が呑みはじても『川上かわかみから風下かざしもへ』と『逆転する』ように蛇の構えが牙を剥く。






「"……"!"」

「ぅ——っ"——っ、ぁ"あ"——ッ!!」






 すっかりに勢力を弱くしはじめた炎へ。

 その『戦意の灯火を消し切らん』と絶えぬ水の波が押し寄せる!





「『無と戦うのに心は要らぬとの奥義』で、——が、どうして……!」

「これは未知の領域。『更なる未知のデータ』だ」

「ワイゼン! 何か気付いたのか!?」

「事は単純。『無敵に思えた戦の神にも敗因に繋がり得る未知の要素Xエックスがあった』ということ。恐らくは我らの与り知れぬ内部で『他者に理解できぬ何か』が」

「では……つまり」

「つまり、『我々にデータがない』ということに他ならず。そして『我々にデータがない』ということは、"俺たちでさえ正確な現有戦力を測れない"『未知のデータが戦神にはある』ということだ!」

「あの川水だけでなく、未知のデータ!」

「ああ!」

「それは、『俺たちに内覧ないらんを許されぬもの』は何なのだ」

「『ないデータ』即ち『あるデータ』ということだ!」

「くっ! 良く分からんくて……知りたい!」






「"教えてくれ"——女神アデス!」






 水の化身が冷める少女を襲う前にも、立てた小指を唇の側に。







「……秘密ヒミツです」







 瞑る片目でも暗黒の女神が『小悪魔こあくま』のように言って秘す。



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