『vs覇王少女⑦』

『vs覇王少女⑦』





「急激に、『流れが変化』を——いや、のか……!?」





 炎の奔流に『細かいくだ』のような構造を見出せば、後はさかのぼるよう。

 水で『ほそい場所に入り込む性質』は『模型プラモ墨入スミいれ』などにも見られる『毛細管現象もうさいかんげんしょう』の中途で弾けさせ、攻撃を霧散させても膝を伸ばしての柱。




「わ——とも……!」




 捩じ伏せるかの如き回転を、手に。

 遂には『消化』で炎を散らし、右の腕を突き出したままの碧眼が武舞台に『目標あいて』を臨んで立ち直る。






「"…………"」






 玉体の周囲では『水光すいこう』に『水影みずかげ』と呼ばれる煌めきも纏って奥底では熱意に沸き立つ心を表すようの発泡はっぽう——スパークリングが清涼せいりょうに。

 輝いても『ソノルミネッセンス』は、"液体中の気泡きほう超音波ちょうおんぱによって圧壊あっかいして起こる発光はっこう"。

 不純物の一切も水圧の破砕から吐き出してその発色の一部とし、従来の回路権能行使かいろけんのうこうしより一層と爽快感のあって軽げの印象が薄青くも周囲の気として浮上する。





「"————"」





 仮面に視線を隠しても戦神が眺めるような直線上には、ほし





「"…………"」





 青の夢見ゆめみまたたひとみにも絶え間なく泡が昇っている。

 恩師によって『封印処置』を取られていた眼力がんりきは、『境界河川きょうかいかせんいのちわたりを見守みまもかみ』が持つ『本来の能力』としても解放。

 時に『死した者』で『体の温度おんど』や『うごき』が失われるなら——その支える根源的とは『たましいを見定める魔眼もの』として。

 平易には『熱感知ねつかんち』にけても邪魔の入らぬ戦闘で一際にまばゆついが据えられている。





「……突然に、『ランクアップ』の——」





 そうして、新しく覗いた神の眼力。

 神座では『知識ワイゼンの再計算を助ける』意でも知恵ちえの神プロムが状況をつまびらかに述べる御前ごぜん

 有り触れた『野原』や『河川』で配慮かごなく使ってしまえば、当たり前として認識に飛び込んでくる『おくちょうを優に超えるせい連鎖れんさ』——『一度の死を経て罅割ひびわれた人の心』として『見るだけでも狂ってしまう危険なもの』が『微生物すらなく区切られた領域』の限定的にも、十全に。




("…………")




 見開かれ、前方に『燃える神』を捉えて逃すことはない。





「——いや、より正確には『経験を積んで急激な成長レベルアップを果たした』ようにも」





 故からに、当然と『今が戦いの場である』ことも眼中がんちゅう

 視野にえてしずまった境地で『忘却に流された覚え』もなければ。





「"……"」





 突き出した腕を『妙に下げぬ』と人の観衆で訝しんだ瞬間——五指から『みず』が等しい数の射出しゃしゅつ





「"——"」





 其れ、如何いかにもがうみけものが獲物を拘束する『アクアバブルリング』なれば。

 咄嗟に脚部から炎を吐いて横に跳んだゲラスで——しかし。






「"——"」

「"……"!"」






 その回避先へ水膜を滑る走行ハイドロプレーニングで到達していた女神が肩から背中に掛けても掌の表面に厚く水量を展開した接近で『挟撃きょうげき』を仕掛けている。





「——『熟練じゅくれん戦士せんし』や『冷徹れいてつ暗殺者あんさつしゃ』のように『急速きゅうそく洗練せんれんされる動き』は……!?」





 驚きであんに『さぐり』を入れられても『川水の指導者』は身じろぎ一つせずに無言でいる。





「"——"」





 一方の現場で対処するゲラスでも『語る暇なく』は『けん』を象った耳飾りに振って乗せる疾風で己を『縛らん』とする輪の全てを切り刻んでの霧散。





「"……"」





 だが、『難なくの対処』を目で追わずとも青年が『風の動きに微細とされる水』を感じ取るのが——人で例えるならば『静寂の中に電子機器でコイルの鳴きを聞こえる』ように。

 今に『水で受け取る神』の感覚それは更に鮮明、詳細に『波長はちょう』を捉える情報世界じょうほうせかい

 炎に燃やされて物質の変化を伴っても触れ合う動きは幾重にも重ねる水を伝い、その熱の起こす『膨張ぼうちょう』と『振動しんどう』から立てる式で『対処の為の適した解』を導き出し——曲げた指を『きば』にも『蛇の多頭たとう』にも見立てる水の装着が必殺・基本の『蛟竜掌こうりゅうしょう』!






「「"!"……"/"——"!"」」






 間の距離をなくした両者。

 互い同時に全てが必殺に繋がり得る拳の『青き水』を纏ったみぎ——『赤き炎』のひだり

 展開される『水冷すいれい』と『炎熱えんねつ』のきわで、衝突が詰まっては何方も右足みぎあし左足ひだりあし

 神と神の振りで『一投足いっとうそく』に見える中にも、細かい振動の『せん』や『二千にせん』を重ねる衝撃波の相殺が極微ミクロの世界に弾けても爆発はっこう





「"……"!"」

「"——"!"」

「"……"!!"」

「"——"!!"」





 仮面に、面頬に。

 鋭い波の撃ち合いでも薄皮を削り合う『赤混じりの白銀』と『青混じりの黒』で、『美少女は何方も麗しく女神』なれど。

 単純と比較した玉体性能で劣る『いくさ』の方では『同じ時間を競り合っても負けるなら』——突き出すうでひじ後方こうほうで、蹴り出すあし踵裏かかとうらで。

 爆ぜるゲラスは『要所に要所に狙って起こす小規模の爆発』で己に外部的な力を加えても『加速かそく』し、『一部でもほし輪郭りんかくたる川水の化身』に半神的ながらも肉迫にくはくする。





あまつさえ、『互角ごかくひとしい』と……!?」





 胸元から流出生産も急がせては増やす質量に、熱量に、より重く。

 加熱の中では輝いて、間を置かずの冷却に対しては乳糖で結晶構造の、より鋭く。

 半神の如きから見ても『性能で上回る神』を相手には何であっても利用せざるを得ない。

 即ち、『萎縮』が先か『気遅れ』が先かは兎角に序盤から流れを取られていた青年が『己の最高最善を遺漏いろうなく引き出し始めた』ということに他ならず。





「"……"!"」

「"——"!"」





 互いに渦巻く嵐を引き連れて、『竜巻同士がしのぎを削る』ようにも至近距離での神速が入り乱れる攻防。

 こと此処の競技規則に『あからさまな危険物の持ち込みは禁止』とされていようとも、『手足てあし延長線上えんちょうせんじょうばすのには制限がなかった』——だから、神と神は鎬を削っている。

 さすれば、とげの如く鋭くあるふち摩擦まさつ切磋せっさを重ねる力でも『連続的な誘爆ゆうばく』の様が削り合う二者に再びの距離を置かせんとして。





「"————"」





「"…………"」





 故からに再度も睨み合って立ち、湿気のある風が晴らして行く白煙の中。

 先から見違えている川水の立ち姿は『右の上段で下に向ける右掌うわあご』と、『左の下段では上に向ける左掌したあご』で——顎門あぎとを開いて威嚇いかくするへびの如く。




("…………")




 身に纏う青の闘気、揺らめいて。

 予備動作なく透明に滑り出している身は迎撃する火炎の波を『するりするり』と、宛ら『熱波の中を泳ぐ』ようの流麗。

 実際に水で感じ取る『各所の熱の細かな差異』から気流を読み、敵の熱き攻撃の隙間を『飛沫の見せる爽やかな光景』に変えても『最大の熱源』へと迫って止まらない。





「"…………''!!!"」





 そうしての攻撃は上からと水圧、押し潰すようにも『降流掌こうりゅうしょう』。

 進路を立ち塞ぐ『炎の壁』を左右に避けては『迷路の如き誘導』を読んでも『攻略のおきて』がなければ跳躍ちょうやく

 壁上より見えている炎へ『堰堤決壊えんていけっかい』の激流げきりゅが、即応に集められて『防壁』となる何十という炎熱の重ねにも怯まず噛み砕きながらの急降下。





「"——"」





 対しては防壁の最奥にいたゲラスで障害物の稼いだ余裕でも低い姿勢の側転一度と軽く掌の破滅的な重圧を避け、同時には熱を帯びたかみを振り乱す形にも見得みえって撃ち込んだせん剣圧はんどうでの吹き飛ぶ脱出。





「"……"」





 だがして、奥義中の必殺を容易く逃げられては直ぐに追わぬ女神。

 不意に動体目標を見据えたまま静止する構えでも時は止まらない。





「"…………——〜〜」





 一瞬にも流水河川に止まりなく。

 神の背後や足元から『地上に出でよ』が荒波あらなみ

 近くに寄れば如何な大樹も根刮ねこそぎにさらう勢いで、『己という水』さえも『生け贄の如き少女』は恐れの色ひとつなく従容しょうよう蛇型へびがたの流れに溶かして呑み——『呷流掌こうりゅうしょう』。





「〜〜——……"」





 "河川が自ら攻撃となって獲物を追う神秘の姿"。

 また相手とて『神話に名高き伝説的英雄』なら『闘竜士とうりゅうし』のようにも紙一重で『主流しゅりゅう』を避け——避けられたとして。





「"……"!"……"!"」





 分かれ出ては『支流しりゅう』すら伸びて来る。

 先の先で、次と次と。

 生半可な戦士には予測困難にも撥ねる水飛沫みずしぶきを集めて、『つめのような突起から順に形を取り戻す少女』がなみより『へび』を伸ばしても圧を乗せた掌で打つ。





「"——"、"——"」





 ならば、『対応の出来る戦神』は水に触れて反応する小規模の爆発を顔近くに加速しながらも身を上下で入れ替え、『浄化の炎』に燃える脚が『恐ろしき触手』を蹴りで焼き尽くしても風起こしに舞い飛んで追撃をかわす。





「……だが、"熱に触れてから動いている"。『炎から自然と身を引く水』が能動的のうどうてきと言うよりかは『受動的じゅどうてき』の——」





 そうしては『僅かにも先で動くのは大抵でゲラス』と観戦から分析で知見を得る知性ジーニアスたち。





「——『うごす』よりも『される』ような、あの妙な『しなやかさ』は、一体……?」

「……」

「それも『下位の水神が単独』で、落ちてもあの『強兵きょうへいの速度に対応』とは……『仕組み』は読めてきても本当に『どういう理由ワケ』があるのだ?」

「詳細な成因せいいんのデータのない確率は九十九点きゅうじゅうきゅうてん……ふっ。もはや計算せずともデテ分かる」

「……!」





 "未知"を前にしては、寝起きに本調子。

 知性の溢れても、この宇宙に於ける『データキャラ』の形とした始祖たる神でも愈々に調子が出てくるほど。





「『俺のデータにはない』ということがな」

「ワイゼン……!」





 知識の神は『不明瞭であるが故に越えるべき明確な課題』を前にして苛立ちつつも喜んでいる。

 仮にも『全知』を目指すなら『未知の存在を認識出来た瞬間』ほど『為すべき』を認識に捉えられる時もないから。

 因りて『知識欲』を軸とする神で『未だ知らぬ』と相対している時ほど『自己が自己たる所以ゆえん』を『最も自然と当て嵌まる』ようにも感じられるのだろう。





「"……"!"」





 他方に未だ続く戦場では、青年女神で両掌に展開する渦巻と渦巻。

 それら上下から『へびくちを閉じる』ように重ねれば、対流摩擦たいりゅうまさつの中から『無限に産み出して放つ水手裏剣みずしゅりけん』の構え——迎え撃つ究極聖剣でも幾度に激しく動いても軸のブレない『剣舞ソード・ダンス』が身の回りで蹴り出す旋風の脚技を繰り出し続ける相殺。






「"——"!"——"!"——"!"——"!"——"!"——"!"——"!"」

「"……"!"……"!"……"!"……"!"……"!"……"!"……"!"」






 武舞台に双方で息継ぎの必要なければ。

 流れ出す投擲スロウで手裏剣を撃ち出し続ける掌に——『振る手足に水流が常に寄り添う神』で正しくも『水の尾を引く姿のへびりゅう』が現実として光景に浮き上がる有り様。

 また分かり易く武器の形を持たぬ『火炎で清浄しょうじょうの女』でも『振り乱す肢体したいえる妖艶ようえん』——動作の一つ一つに『剣光けんこうひらめづ』が風光明媚ふうこうめいび怒涛どとうなり。





「フォッハッハ! 『くのごとき』がのか!? ——『ゆるす』!!」





 この不思議な現実展開を前には暗黙より『口封じの圧力』を身に感じながら神王、女神ソルディナ——混ざった神王ソルディナ様もオッタマゲる。

 世界を見渡す大神でも『中々に覚えのないこと』を楽しんで、『奥義の真相』に察しが付いても気分が面白かったので先んじて『心当たりのある核心』を黙っていてくれる。





「『きわまる馬鹿ばか』へは——『世界神格せかいしんかく』の名においてッ!!」

「聞き取れんが『何か』をおうまで笑って……ならそして、馬鹿な」

「で、でも『本当にいい』のでしょうか? こ、こんな、"青少年せいしょうねんの何かがあやうく魔的まてきいざない"——あ! 『誘惑ゆうわく』の其れでも"魔王まおう"!?」

「『戦神の狂気にせまれる理由りゆう』が、剰えも『動機どうき』が——」






「まさか。『計上けいじょうし難い無限むげん狂気きょうき』が、あの真新しくある、————」






 斯くして。

 遂には『黙りを決め込んでいた大神』でも細まる魔眼あかに、微かでも上げられる口角こうかく——"くらあやしいほこらしがお使つかどころ"。






「男神プロム、ワイゼン。多くを知る貴公きこうらへ、"未知みち女神めがみより深淵しんえんなる感謝かんしゃを"」

「——"!?" 女神アデス……!」

「"誠心誠意せいしんせいい感謝かんしゃ"を。貴方らが『戦上手いくさじょうず』を掘り出し、また『再度に使えるようとしてくれたおかげ』で……"弟子でし"——」






 "褒美ほうびたまわす機会"にも『だいをくれた神ら』に——『奥義おうぎ秘密しんそうを知る神』で心よりの謝意が口を開く。









「あの者は——"さらなるたかみへ到達とうたつする"」







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