『vs覇王少女⑤』

『vs覇王少女⑤』





如何いかに『未知の暗黒神から技を授かった』とはいえ、基礎きそは広く知られたみずで……世界たいしんのような出力が有ればだしも」





 青年女神の相手は格が落ちても『きわみの武神ぶしん』たるゲラス。

 それも単純な『戦士せんし』としての比べ合いで『勝てる訳がない』だろう事実は変わらない。





「"——"、"——"」

「く、っ……! (一撃も——当たらない!!)」





 左右に身を揺らす炎。

 ただ涼しく水の弾丸の速度や軌道を完全に未来いまで読み切って、『しゃなりしゃなり』が難なく舞い踊るようにかわす『先見せんけんめい』でもすぐれたことは自明じめい




「っ……やはり、今の我が友では」

「しかし、ゆえにこそ。『けてかまわぬいくさ』だからこそ私は『あの者を送り出した』のだ」

「……しかし」

「『おのれなんであるか』・『どうあるべきかを悩む若者』に、『いくさじゅんずる聖剣せいけん確固かっこたるかた』は『を示すもの』と——『青年自身で納得の期待きたい』もけての選択なのだ」

「……」




 だが、それでも案じて見守るイディアの横でアデスが『降参こうさんぬの』を投げ込む用意も、僅かな素振りすらもなく。





「"——"」

「ぐっ——ッ"ッ!」

「"——"!"」

「!? ——ぅ、ぁ"——ッ"!"!"?"」





 交差する腕の守りごと吹き飛ばされ、再度再度と身近に有効打を決められる青年。

 自身の場外へ飛ぶ速度を辛くも渦の中に殺しても、先回りに身を置いた柱の長脚に衝突しても無様に転がる少女の姿。





「『大勢たいせいが決まった』ようでもつまらず……そうしてあとは『我らかみ予想よそうる』ものとしよう」





 そうして観戦者の王からは、その『余りに一方的でも諸神は観戦が退屈だろう』などとの提案。





「向かって『暗黒アデスのいるだろう左側ひだりがわ川水かわみず』の、『反対の右が武神ぶしんゲラスの勝利予想』として座る位置を分けよう」





 有無を挟む余地なく『勝敗予想』を勝手に楽しみ始めれば『青年を思う女神たち』と『戦神を計測する男神たち』の綺麗に左右で分かれる現在の位置を利用し、中間に座るようの自分たち大神で『予見よけんの性能を知らしめん』とする。





「……また藪から棒に……それは『強制きょうせい』か?」

「まぁまぁ。単に『たわむれ』と思って」

「……」

「大した移動の距離でもなければ、隻眼の吾が子でも如何にさきを見ようか?」

「……現在のこの位置が『戦の神である奴の勝利を意味する』ならば——」

「ふむ?」

「——特に"席を変える予定もない"」

「ほう。『順当にゲラスが勝つ』と?」

「……『戦いならば戦いの神』で、『川水に勝算がある』と思うのか?」

「それは……——」





 聖剣ゲラスを擁するチームよりは、プロムの横もワイゼンでも述べられた論に口を挟まない様子から『知性の二柱は戦神の勝利を予想する』と神王で決定を確かめて。





「——……実際の所でどうなのだ? アデス?」





 次に虹彩異色を流される先、女神たち。




「……」

「……暗黒の女神」

「私は此処を動かぬ」

「……」

今暫いましばらくして『苦境に変化がない』ならば、私がめに入る」

「……分かりました」

「……」




 今も『青年が戦場で火炎の猛威に晒される現状』を前には、『複雑な思い』に髪色を『あか』や『あお』や『みどり』に『むらさき』などとの『にじ』に変え続ける美の女神で——『多くを語らぬ抗議こうぎ』の意を含んでも暗黒の側を離れて大神二柱の直下にある『真中まなか』が『良い結果を祈ってはいるが事実として勝利は困難である』との『無言に態度で示す』座席の位置へ。





「……」





「では、『予想も大方が決まった』として『間もなくの決着』を見てみよう」





「……」

「……」





 そうして何故か言い出しておいて『その中間から動かぬ大神』もいたが兎角は不動のアデスを除いて、プロムやワイゼンに。

 加えて実質的には『青年と親しくあるイディア』さえも『戦神の勝利を予想』して、外野でさえも意見の傾いた試合の流れ。





「"——"」

「っ、ぎ……ッ、——!!」





 流れは、未だ巧者の優位で変わらず。

 白色から汚れて今まさに乾いた熱風で風化して行く舞台上を己に含んだちりほこりとう岩石がんせきの破片でも玉体の末端まったんは『重い泥水どろみず』となって上下左右に翻弄される青の色。




(! あつ"っ——"はやい"……っ!?)




 またまだ押される。

 現状が続くだけなら直に押し切られてしまうだろう劣位では内心に様々の思いが交錯し、しかして、その言葉にする間もなければ胸に浮かぶ『正体不明の不安』で自身も未だ完全には使いこなせてはいない『本格始動の切り替えスイッチ』を入れるのに『気の乱れ』が困難として立ちはだかる。




(と、とにかくっ! でも——ッ! 『奥義おうぎ』を!)




 神の熱に晒されて苦しいながらも無理に力を引き出そうとして。

 回路に走らせる水が何やら輝度きどを上げようとしても青い炯眼けいがんや髪の内色は弱々しく不規則に点滅するのみで、『力を勝利に向かわせる為の意思統一いしとういつ』がなっていない。




(そもそも、なんでっ、こんな——)




 勝利の手順が分からなければ目的あっての技や道具の使いようもなく、『この場に勝利を目指す理由』を己に改めて知らなければ身が入らぬ。

 "内から自然と湧き出る"ようにの『本心からの行い』でなくばなん専門職せんもんしょくでもなかった一個人いちこじんに『専念せんねんきわめる』など程遠い。




「——っ、ぁ"、!、ぐっ——?! (こん、な——)」




 熱で水を削られ、己の制御認識が届かぬ場へはじかれては、より非力に。

 時に『ながれ』とは『蛇竜じゃりゅう』である筈の自己が、その瑞々しい身が鈍重にも『ただ少女しょうじょ』の如き規模に叩き落とされて行く感覚で相対的に『強大となって行く相手』への恐怖も増すばかりだ。





(——『自分じぶん』で、どう—、すれば————)





 よって止まる、思考判断。

 今に立つ『戦場』で『やるべきこと』など分かっているだろうに。

 それでも何度も巡りに巡る『余計な考えのみ』で多く己をめてしまい、目に見えても手足の端からは反応する不純物とで起こるび付き。





「"——"」





 対して、燃え続ける戦いの神にそれはない。

 ただ只管と『おのれで何をも思わぬ無心に戦うのみ』が、内心のまなこにブレずと『乗り越えるべき相手』を見据えては『明確な戦略意図なきへびの巨大化』で『まとが大きくなるだけのかみ』をもしのぐ。





「"————"」

「——っ"!?」





 鎌首に見下げる下へ噛み付く圧力。

 押し止めようとする水を爆破で擦れ違う神は上へと——『格の違い』を見せる空気や水の流れの『風上かざかみ』には戦神、『川下かわしも』には青年。





「っ!?" っ、—、っっ——ぐ、ぁ、、ッッ——!!?」





 続いて燃える神の拳から目にも止まらず放たれのだろう——蛇体を連続に撃つ無数の火の粉。

 この『熱を点で押しつけられるような不快』には忽ち遅れて『巨大化の失敗』を悟った青年のいて。

 対する戦神では『脱皮だっぴの如く蛇の背から飛び出る女神の形』が『水でを幾度も描いて跳躍』する芸術的の様に回避をされても『置いた粉塵ふんじん』を手堅く利用





「"——"」





 また『乳房ちぶさからの攻勢』に対して『何故か青年が特に間を取る』ことも既に見切っていたから。

 その回避先で足の止まるだろう場所へは張り詰める大胸筋で衣に覗いた隙間の、『わきから勢いよく閉める胸部きょうぶ谷間たにま』で『粉ごとを目標に向かうように作り出す気流』の"送風そうふう"。





「"——"!"」





 そうして次も乳の技。

 燃えても乾きに乾いた谷間という火照った『せきリン』の如きを左右の乳房で其々が上下に擦れるよう——『摩擦まさつ』に起こす熱での『発火現象』!





「"!?" ——っ"、——"!" ぁ、——"ぁぁぁ"————ッッ!!?」





 起こした爆発は悠長が身動きにも現れた青年を、その複数に設置された薄靄うすもやからの段階的に吹き飛ばして舞台を弾ませ——先回っても青黒の柱を蹴り上げる戦神。

 しなやかにも力強く蹴り飛ばしては相手の身を上方へね上げ、また爆発的な跳躍から上で追い越して待つ同じ神に振り下ろされる両腕は舞台の地へと水神を叩き落とす衝撃波。





「——ッ、ッッ! っ、ぁ"、あ"……く——っ"っ!」





 押しやられる風やの音だけでも割れる鋼に染みる水。

 それでも、敗色濃厚の流れでも。

 泥にまみれて『何故だか諦めきれぬ気持ち』は、せめて『次の回避に移れるように』と舞台への激突を反転させた身で四肢の支えに踏ん張る。




(っ!、でもっ——はっ!!)




 面頬の裏に食い縛る上下のあごにも回る神気が『立ち直らん』と全身への指示伝達と——するが。






(——"!")






 元より髪に目で青くも、更なる気の発色で蒼白の表情。

 顔の其処で水の粒子と粒子の間の窪みピットに感じられる側面——離れた位置から迫っているのは『渦巻く炎の連続的な流れ』。

 赤く燃える銀の柱で掌に凝縮された力は既に放たれた『決定的なもの』だ。

 かつての青年が『破壊神の盾の力も借りて降り注ぐ光の雨に耐えている時』の、その『無防備な側面からを矢が射抜いた時』のようでも。

 熱の接近を感じる当事者すら『己を射抜いた熱の記憶』を想起し、今で観衆の神の誰もが『当たる』との確信を抱いたのだろう——"神との勝負を決着に向かわせる攻撃"。





「——ぐ、っ!、ぅ……!(この、ままは————)!"、!!"」





 よって、二足で立ち直ったばかりでも。

 迫る『旋風せんぷうの攻撃』へ反対の回転を備える両掌の防御みずで受け止めても愈々いよいよもって舞台の端で遂に追い込まれた青年へ——押し付けられる流れの力ストリーム・パワー!!





「(あ"い、つに……!)ぐ、っ——('こんな一方的に"は負け、たく——)ッ、ぁ"ぁ""!!」





 そうは思えども。

 何を言っても、流水の化身で滑らぬように脚の形を固く明確とさせても『舞台のえぐれる後退こうたい』は着実に青年で『場外へ押されている』ことの証左。





「このままを行けば、『川水の女神ルティスの敗北確率』は九十九点きゅうじゅうきゅうてん九九九きゅうきゅうきゅう……"極僅かを除けば事実としての敗北は免れない"」

「だろうよ」





 知識の神たる賢者ワイゼンでも『殆ど結果は戦神の勝利で確定』と言っている。




めの場面でこうなれば、知者おれたちの立てた予測でも『残りは精々が二十秒もない』だろう」

「……う〜む?」

「……なんだ?」

「『完全なひゃく』でもなければぞ? 小川おがわみずとて『未知みち使徒しと』でもあれば、大なり小なりで『いまかくされた秘密ひみつ』がある」




 王が己の長子に早合点を指摘する場面にも戦神は戦闘中に蓄積してきた炎熱の力を未だ突き出す掌から放ち、その流れは勝敗を決するまで止まる気配などある筈もなく。




「……『終わり間際のここふだを切ってくる』と? 『で切れるおくがある』と?」

「それだって吾に言われてもあずかり知らぬが……どれ」

「?」

「『しんただ女神めがみなれば予測よそく範疇はんちゅうむもの』と、『世界の王』でも『お前たちに見落としはないか』と『残りを数えてやろう』から『しき』をせ」

「……"めの"だけだぞ」

「構わん。大方は勝手に埋めて逆算する」




 そうして、『何かが決まるか』との頃合い。

 それでも『何か起こらぬか』と無聊ぶりょうの神王ディオス。

 更なる賑やかしの一つとしても極小の光線に送られるプロムやワイゼンやの知者の『予測計算式』を汲み取り。




「……」

「有難う。では——"えほん"」

「……」

「忙しくある吾が身での、今度に出す予定の……『音声作品おんせいさくひん録音ろくおん』も兼ねて」




 身軽にも男神から『女神ソルディナ』の姿へ変じる。





——"きますよ"」





 喉に、声も取って。

 ゲラスに一位の座を追われてから活動の幅を広げるアイドルで通りや聞こえのよい正しくの玉声ぎょくせいが。

 身と同じくいつの間にやら用意した、人の頭部を模した録音機材を前に——その背後から耳元へ『じゅうからのかぞえ』を始めて行けば。






「——じゅ〜〜う、きゅ〜〜う」






「ぐ、ぁ"……ぁ"——ッ……く、ッ"————!!」






 引き続き舞台上では火炎のストリームが川水を焼き、その全身から逃げる気化したもの。






「はぁ〜〜ち、なぁ〜〜な」






 力を刻一刻と熱に奪われて弱められる川水は『自身を外に押し出そう』とする激しい流れへ。

 咄嗟に突き出した両手の、掌に展開する『逆回転で相殺しよう』としても足りぬ。






「ろぉ〜〜く」






「っ——っ"! (おう——ぎ——)っ"——!!"」






 地に膝すら付いた苦しい姿勢。

 何とか『押し返そう』と残りの気を振り絞っても、背部で自らを押す水の吹き出させても。

 力も、何よりそれを用意するのだ。






「ごぉ〜〜お」






「くっ——(おうぎ——おうっ、……!)」






 共に永久を宿す神で中長期なら力の無限なれど。

 これまでの戦いぶりから『両者の力の発揮に差がある』ことも熟知するゲラスで、その計算高く『周囲から奪っても溜めておいて放出する力は今にさえ川水の十秒に出来る生産量を上回る』から。






「よぉ〜〜ん」






("奥義おうぎ"——"奥義おうぎ"……!!)






 よって、今から単純な押し合いをしようとしても時は既に遅く。






「さぁ〜〜〜ん」






("奥義おうぎ"、"奥義おうぎ"——"奥義おうぎ"!!!)






 後退あとずさりが止まらぬ身で『それでも切り替えさん』とするならば。






「にぃ〜〜〜い」






("奥義おうぎ"、"奥義おうぎ"、"奥義おうぎ"——"奥義おうぎ"!!!!)






 可能性が残されるとすれば間に合わぬりょうでなく、"技巧テクニックしつ"。

 乱れた心でも『極小ごくしょう針穴はりあなに一度の挑戦で糸を通す』ように。

 残る力で熱き奔流ほんりゅうの、その渦巻く粒子と粒子の隙間に対して『完璧かんぺき逆回転ぎゃくかいてん』を差し挟むことの出来れば——『歯車の如き噛み合い』から一時的にも流れを止めて『新たな回転ながれ』を作り出せる『今一度の転機てんき』を得るだろう。






「いぃ〜〜〜ち」






「————("奥義おうぎ")」






 そうして、何を思ったか。

 最後の『数え上げ』と『舞台端』が背後のそばへ迫る中。

 既に四角の縁たる直線に膝を残すのみの青年は一度、『はっきり』とまぶたつぶって。







「——ぜぇ〜〜〜〜〜ろ♡」







 その『再びに開眼かいがんする』直前が赤い炎の波に顔ごとを呑まれ——しばらく。







「"————"!"」







「……ふふっ」

「……?」

「ぜぇ〜〜〜ろ♡」

「……"?"」

「ぜろ♡ ぜろ♡ ぜろ♡」

「……"なに"?」







 今の此処に『決着』を告げる筈の時報を王が複数回に言い終えて——しかし、"それでも途切れぬ流れ"。





「どういうことだ」





 即ち驚くプロムの前にも

 何かを『真っ先に気付いた戦神』で片腕だけでなく両腕を力の放出に『追加の補助』として添えるようでも





「俺は、『ゼロを連呼しろ』とは言っていない」

「いえ。繰り返す二度三度は録音の都合、『私的な作品のこだわり』でしたので」

「立てた式の通りでは『繰り返す必要もなくの一度』で、





 観戦する神の目前には予測時刻を超過しても神は場外におらず。

 即ち『場内に踏み留まっている』ようなら、『予見の式と違って敗北を喫していない』のが川水の女神だろう。





「なのに——ぞ」

「……」

「俺と横のワイゼンの情報データ通りなら……、『敗北』を」

「……?」





 動揺を隠せない知の二柱から左右の逆に目を向ければ。

 此方も少なからず『目を見開く美神』が同じ陣営の大神に目線をくれても——。





「……」





 未だ無言は動きすらなく、『計算違いを小馬鹿にするような笑み』も『教え子の予想を超えた奮闘を誇る』ようなも——『沈黙ちんもく暗黒卿あんこくきょう』で色の一切がなくの腕組み。

 もしやの『負けを認めたくないアデスが現実を捻じ曲げて暴れる素振り』も『落ち着き払った他の大神』の様子からして起こってはいないのだろう。





「そうして、『今更いまさら席替せきがえ』はか——いや、いい。『行動に他者の許可を得る』なんて『自由じゆうわれ』らしくもない」





 よっての、"広がる光景が真実"。

 ワイゼンも『明らかな見込み違い』を前に再計算の回路を走らせる時には数えていた大神よりの"仮的な一つの結論"。





「それに大神が『あり』と言えば、それはもう『世界に容認されて然るべき』であって……気に入らんが『暗黒アデス特別とくべつあいする川水かわみず』とは、やはり『只女神ただめがみであるだけではない』のだろう」





 そのディオスで子たる神より速く流れの変化を気付き——いや。

 今や『時に暴威的なまでの雄大な大神らしい男神の形』へ姿を戻すのを『場の流れ』への興味に忘れ、厳しい語りもすずを転がすようなままで発する女神のソルディナと。





「……太祖たいそ。貴方まで」

ひかりで言ったよう単に『楽しませてくれるもの』として——『entertainmentエンターティぃメン』などへの『面白さ』で評した所もあるからして、そう己の劣等れっとうを感じる必要もない」

「……」

「其方で大きく判断の式も間違ってはいない。ただ『見通せぬ空白にこそ考慮すべき要素があった』のだとして……実際に見える結果とを照らし合わせ、より詳しくに真実を探し出してみようぞ」

「……はっ」





 のみならずの『世界の三分の二が女神』となったことで自身にも『女性』を思い出して釣られつつ仲間に合わせたガイリオス。

 頭頂部に稲妻を持つ銀の横で同じ高さに三叉さんさを有する構造色の黒髪の美少女となった上で、彼女らは勝敗予想までも等しく。

 まさかアデスの当初からたたずんでいる『ルティスの勝利を予想する』と己らの決めたがわへと——ように席を移動して『小数点以下に賭ける考え』を示すのだ。





「賭けるなら『川水こっちの方が面白そう』だ。時に論理的帰結ろんりてききけつもそこそこに『大穴おおあなへ無視できぬ可能性を見出す』のも……『博打ばくちうちの王道おうどう』よ」





 そうして間もなくには、実際として今なお続く戦場に。

 眼力を見張る神々で、"未だ全容を知らぬ隠された要素"の——『青年女神の未だかつておおやけに見せたことのない冷徹れいてつ表情いろ』を目の当たりにする。





「——む!? 渦巻く音を立てても突如としてあふれるのはあおの、"プラズマ発光はっこう"」

「……」

「"キャビテーションの破裂する"? びの不純物も砕いてはたいらげるようにも壊食エロージョン——生まれては激しくに、『はじけるあわ』の数々はなんなのだ!?」

「……データ?」

いくさ拮抗きっこうする光波こうはに、音波おんぱ……"プラズマ同士のつかり合う衝撃しょうげき"……!?」

「……た……? ——!!?」

調!? では、まさか本当に——『川水かわみず未知みち情報要素データ』が!!」






「フォハハ! 『一皮ひとかわ二皮ふたかわいだ』な! 『へび羽化うかりゅうの如く』!」






 戦場の上回っていた熱の膨張から下の寒冷に流れる風も止み、次第にストリームの最中でも立て直す二足だそくに再起する柱。







「"…………"」







 波の隙間に見え出す碧眼にも、未だ静かな『きていたい』という意志の失せず。

 王の思わず讃える『静謐せいひつ』で、『冷厳れいげん』で、それも『女神めがみ』の姿に『暗黒』を重ねても『劣勢の水流』がのだ。







いだな! 疾風あらしまえみずき——『逆波さかなみ起こすしずけさ』だ!」





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