『vs覇王少女③』

『vs覇王少女③』






「"……"」






「……(……『諸事情で女神の姿になっているようだ』とは、聞いていたけど——)」






 神らの起こした余波なごりに砂塵の舞う中で向かい合う『赤』と『青』との気が神秘顕現しんぴけんげんの有り様。




(——それでも『油断ゆだんする理由』も、『余裕よゆう』もない)




 事前に恩師から『形態の変化も今は天災てんさいの如きと気にするな』とも言われている青年。

 彼女が自身の人心にある『性別への先入観』や『固定的な観念』なども成る可く自覚から不純物の少なく透き通るものとして、単純に碧眼が『其処へ存在するものを分析』に見遣る前方には真実としての『女神めがみ』の姿がある。






「"……"」






 その女神は今し方で『川水』を目的に毅然の歩みを進めていたかと思えば、不意に立ち止まり。

 けれど、先ず間違いなく『あらしまえ』の『不気味な静音せいおん』をたたえるのが後頭部では垂らす『長い白銀の髪』の麗容れいよう

 一方の前では『鉄騎士のような仮面』をした者で『青年女神との直接の対面が許されていない』という理由でも阻まれる直視ちょくしは奥底に潜んで暗く。

 しかし、秀麗しゅうれいだろう眉目びもくの隠れていても分かる『整った顔形かおかたち』も引き続きにあって。

 ならば『調整アレンジ』を加えられての『強調』が『突き出る胸部きょうぶ』を筆頭とした上半身や『軸を支える臀部でんぶ』の下半身など——それら纏めて『豊満ほうまんな輪郭』《りんかく》は変性へんせいを経ても更なる『暗黒という女神の解釈』に寄った『寡黙かもく』の姿が正に『女体にょたい』とされるもの。




(実際としてあるのは……"恐ろしく静かなながれ")




 暗黒に対する光の王の『少女性』への解釈によっては肉厚に。

 よって弾けそうにも、今は滞留たいりゅうする熱源を窮屈に包む白色の装いは下体部スカートフリルから剣筋ソードを抜いて膝上から素肌を見せても涼しげの身軽に。

 淡い白か紫の『蝶』のような装飾をふんだんにあしわわれた下着も透けていれば『何か奇怪さ』が増して——だがも『気を取られるな』と、対面の意識で再三の忠告を言葉にする手間さえ惜しんで大きな油断の挟まる余地はある筈もなしに。






「"……"」






 対する黒衣で『相手が何者であるか』を確信的にも思いながら様子見。

 立ち止まった神で未だ殆ど武闘に移る気配なく、しかし開始からの数秒に自身との対角でも同じく『人の参加者が蹴散らされた事実』にも今更の棒立ちを訝しむ構え。




(……仕掛けてこない——)




 そうしての戦いの神に挑む者チャレンジャー

 既に上述からの警戒心ばかりが先立って、『常なら素性や力量が分からぬ相手には撤退』との定石を意識し過ぎる余りに『気のおくれ始めた自身』を認めてはの——自発的な奮起ふんき





(——"なら"!!)





 斯くして、"踏み出す一歩"も自ずから。

 初手から人を流すには十分な非致死性兵器ひちしせいへいきの『放水砲ほうすいほう』を引き切る掌への集水しゅうすいで攻撃用意とし、然しての間もなく後ろ手から前へと勢いよく——『神』に向かって突き出して。






「"……————"」






 場外へ押し出そうとする決意の一撃からは先制となる流線を水で放って。

 互いの間に進む冷涼の軌跡は秒に『宿敵の身へ届かん』とし——だが、間もなくに対応の動きを見せ始める『戦の神』でやはり、これ迄の参加者とは一味も二味も『かぜに漂って来るにおい』からして





(————"あまい"、"かおり"?)





 動作で川水が力の放出に瞬間で銀の柱が燃え出す——燃え出して、迫る水流へは内部から起こす対抗の火炎。

 周囲に展開する『薄い羽衣』のようにも『風の気流』を纏い、上昇する『熱』が水と触れて齎す『蒸散』によって先制攻撃の勢いを減衰。

 水の量自体も周囲から減らしての減水げんすい——させたかと思えば、宛ら『野原へ寝転がる』よう自然に横へと神の本体は転がって『射線から押し出させる』のが離脱。

 そうして、それら先を見据えていた流麗ののちに即座に膝立てから再起の身では『自身の胸元むなもとから肩上かたうえへ素早く斜めを切る』ような『片腕の振り』が『』としてあったのだ。




("かおる"、は——『乳糖にゅうとう』?)




 あとに思えば、その『母乳ぼにゅうの気配』で一瞬にも気を取られた時点で——『最初はなから畳み掛ける全力で相手を押し流す機』をいっした時点で『流れの主導は戦神に明け渡された』のだろう。

 今で管理者あんこくの確認の下で『戦場に立ったこと』自体が『覇と競う合意』であるのだから『専守防衛』どうのとは関係なく、『勝利する流れを己で作り出し始める前に相手への様子見へ徹した』こと自体が既に一つ『手緩てぬるい』のだとも言えよう。




(……"?" 何か、周囲できらめいて————)




 実態として敵の攻めは『気化させた乳糖』からの一手。

 ならばそして訓練を受けた以前に素の青年は『ちち』と関連するものに弱く、面頬や各所やの水の表面で『身近へ到達した物質の正体』を知っても本当に呆気なく『不可解』に意識を削がれた。





(————)





 即ちが後手に見えても巧者から作る——試合の組み立てメイキング

 先の腕の振りによっては煌めく粒子が一度は火炎の熱に溶け、風に載せられては斬撃としてを移動して迫り。

 水の『物質を良く溶かす性質』も利用しては敵のふところへと素早く染み込み——また触れる温度にも物自体を冷やさせては促される再結晶化さいけっしょうか




("戦神あいて"は————"!?")




 "相手を打ち負かす為の戦略"が鈍重な青で『先を取らされた』と気付いた時には流れで既にもう遅く。

 結晶が溶けるまでに放たれる一瞬の光が『かがやきの合図シグナル』。

 即ち『再度に形作られた結晶構造の面が光を反射』しても、其処に展開されているだろう『透明な水の防御範囲』をからの攻勢が——"る"!





「"——"」





(——"はやい"! でも、まえと違って視認みえは——)





 とうに続く風の延長で『熱』が来る。




(これなら——い、!!)




 既に水の防壁へ襲う左からの五百ごひゃく、右からもの五百ごひゃくが『一瞬にうねったうで』よりの『むち』か。





("速すぎる"——"苛烈かれつすぎる!!?")





 勢いの甚だしく思えば、然り。

 真打の相手は『息の切れぬ』存在。

 随時に呼吸などの間を必要とする『人との戦』が生半可に感じられる程の差のあって。

 一方の『いくさ』と『』を知る者にとっては『相手を圧倒する意思』を、『害することをいとわぬ冷徹』を携えぬ遣り取りなどは余りに『児戯じぎ』と等しくあったから——それらと比してもの『戦士』に迷いなく。

 躊躇なくの神が『バトル階層レイヤー』を上げて行く。





(これが、本当にっ——"らめくほのおの速度"か!!?)





 受け身の青年で考えても『攻められて主導権を握られた事実』はどうにもならぬのに。

 驚かされても打開策を練る暇を与えぬのが『純なる戦意』に研ぎ澄まされた刃。

 腕の振りや足の振りが辛うじて揺れる周囲の水気から分かる程度にも、何か間を置かず撃ちだされる『砲撃』のような圧が神よりの熱気を伴って迫るのだ。





「"——"」

「——ッ"ッ"! ぅ——っ"!!"」





「ふむ。聖剣の振りが齎す気の動き、その圧は気圧であっても『ソード・プレッシャー』の『剣圧けんあつ』ともなろう」





 だが、川水で失態を恥じている暇もなければ、足の止まって連続攻撃に縫い止められる身でも微かに動かせる口からの抵抗。

 面頬の牙の模様の隙間より噴き出す水泡すいほうを宛ら即席の『空気袋エアバッグ』として戦神との間に挟むよう受けて——その爆ぜて散らす衝撃に一時的でも後退。





「『聖剣』という己を打って響かす響音きょうおんさえ攻撃に、突き出すこぶしは空間の物伝ものづたいに飛ぶ波状はじょうとなりて『振動が神をもしゅんに襲う』か」





 神座かみざにて最も場を俯瞰する天空の王が見通しの戦場で起こること。

 川水女神で単純な出力の性能的には上回っているようだから水の防御膜で熱を低減させてダメージも減少を可能としつつ——それでも相手とて無限なら絶えぬ熱を持って『消えぬ炎』が水に打ち付けて蒸気スチームを巻き上げる。

 単純な『性能の力比べで押し負ける』のなら、『抑の押す機会を相手に与えなければいい』という『弱者のがわに立っても強者』の明快的確解決策めいかいてきかくソリューション






「——"!" ——"!" ——"!"」






 故には気炎を噴かれる青年の方で、何時だって敵方からの熱で『舞台風ぶたいかぜ』が『かいかぜ』——遠目より殴る拳が、大気を蹴り出す御御足おみあしが!





「ぐ——ッ"、ッ"! (完全に、先を——っ! このままでは——!!)」





 それら『身動きだけでも誘導弾発射装置ミサイル・ランチャー』の如きから剣筋が飛び来る圧となっても迫り続けるのだ。





「極神同士の戦なら『神の見えざる無敵』——平易には『よく分からんが真面まともに当たったら終わりの攻撃』へ『どのように対処するか』も深くある味わいなのだが」





 その『防御』に役割を固定された川水と。

 合間を見て水の這った舞台上を『液状化の沼』に変える罠も足場へ流し込む熱拳で即座に乾かして『攻撃』のターンを譲り渡さぬ戦神の様を眼下。





「それら極端を例外として今は話題の外に置き、基本の長引く戦が今のような『い』の形式」


「『川水』では常に"水辺みずべまとっている"。『吾が傑作むすめ聖剣せいけん』では熱を添えて止まらぬ動きに具現とする"戦神いくさがみの在り方"」





 高みの見物に眺める頂上席で何やら神王ディオスが『解説』を始める気になってきた。





「それら昨今では各種創作物に語られて、詳細な呼び名こそ異なれど相互あいたがいに補っては『差異』や『類似』からの比較に本題の意味も浮き彫りとなって捉え易く」


「取り分け『バトル』の要素を一つの主軸に扱う作品では『フィールド』や『領域りょういき』、『結界けっかい』などと呼ばれるものの『張り合い』が永久機関同士でも"戦いの基本原則"」





「……」





「『己にとっての最適な時間に空間の用意』は、つまり『環境条件を自ずから整えて常に最大能率ベストパフォーマンスを引き出さん』とのこと」





 武舞台に暴れる戦神と酷似の銀髪を持つ男神の姿は言って。

 その横には正しく上述の神王ディオスが玉体成形の参考元とした大神ガイリオスも『男神概念の始祖』として黒の髪色は兎角に等しく体格を揃えられている。





「また『己にとって都合良く』は同地に居て『都合の悪い相手に』とっての『不利』としても優位の流れを作り出し、『意に沿わぬ』を『異物』と判断して『取り除かんと働かせる力』が……結果として空間の支配者から『気圧』や『水圧』のよう目に見えるダメージとしても攻勢を掛ける」





「……」

「……」





「『白血球はっけっきゅう』などもこの流れを汲んでいるのだぞ。われ直々じきじき実地試験じっちしけんで細胞のサイズとなっても細かく調整して開発を頑張ったのだぞ」





 一応に『神殺し』を目論む自身の子たちへの再確認としては、席列の段で下にいるプロムへ視線を投げるよう。

 "創造主の力を示す意図"もあって物言いは下方に戦う者たちと同系統の神である大神らでも発言内容を実践して見せる様。





「そうして『張り合う実演』。吾が適当に『炎熱えんねつ』を出すから、ガイリオスでは『水冷すいれい』を頼む」

「戦況が大きく動くまでの、『神の気紛きまぐれ』に付き合おう」

「感謝する。ならば早速と掛け声は『さんいち』でくぞ」

相分あいわかった」

「さん、に——"いち"!」





「「"炎熱領域えんねつワ〜ルド"!!("水冷すいれいフィールド——展開てんかい")!!」」





「……」

「……少し、息が合わなかったようだ」

「……考慮すべき速度や質量の多くあって致し方なし。その『連携れんけい』については後日までに詰めるとして」





 大柄の二者の間で互いに開いた領域。

 掛け声の云々うんぬんで歩調が合わぬも相反する温度の境界で『異なる性質の壁と壁が衝突する』ようでは遂に相殺と弾けて空間に走るひびの如き亀裂。





「『何処ぞの魔王』と『神々の王』ならば明暗のハッキリと分かれて更に分かり易くもなるだろうに」





「……」





「『冥界めいかい』やの『領域魔法フィールド・マジック』みたいなのは勿体ぶって中々と見せてくれない」





 続く言葉の矛先は隅で美の女神と共に『未熟の青の苦しい戦いぶり』を泰然たいぜんの無言で見守る暗い神の方へも向かう。





「しかし、現に大いなる神の押し通す常識となった実物では——片や『私以外は生きてなりませんフィールド』と」

「……」

「そしてもう片やの吾は『吾と、その子たちは生きているぞ!フィールド』とで——常日頃に対抗たいこう拮抗きっこうしては現在に『せい』と『』の併存する世界秩序」

「……」

「かつては『』との大戦たいせんでもそのようにあったか」

「……」

「振り返ればつい昨日のことのように懐かしく……我ら連合で『自分たちは此処ここる』、『此処でる』と叫び」

「……」

「敵で『語るくちし』を代言だいげんが出来るなら『そんなものはい』、『一切の全ては其処に無い——』などで」





「……」





「兎角に『相手を自分の法則に沿わせて呑み込み』、上回っては『え』や『え』とうに呼ばれるのも神話なら『打ち倒した神を新世界しんせかい基礎きそにする』……れや、れ」





 返答のなくば、無視されているのか。

 抑の暗黒で聞こえるようにしているのかも分からぬが、てんさいでも相手の事情のお構いなしに『戦の構造』を解体しての話とする。





「前任の持っていた要素から使えそうなものを取り出してぎと、ぎと……今のよう眼下の戦いで住み良い環境を作るものでは俗に『リフォーム』とも呼べよう」


「それなら『賃貸ちんたい』やで『持ち主が代わる』だけでも幾らかの神秘的に。元に住んでいた者の要素が取り払われて、新たにその『あるじとなる者の世界観』がひらかれる荷箱にばこと共に構築し直されて行く」





「「……」」





「よってはたから見れば誰もが勤しむ『己の理想へ向けた自己実現』の、思い描く『未來視みらいしバトル』も似たそのよう——『自己にとって都合の良い先の展開』をどのよう『繋げる今で手繰り寄せるか』が『駆け引き』に」





「……女神。我が友の『流動を阻害される現状維持このまま』では」

「"いず枯渇こかつする水系すいけいで敗北はまぬがれないだろう"」

「……」





「その押し付け合いで敵を圧倒して上回らんとするのが『張り合う』ということ。その様はって、後世で次第にそれだけでも『勝負事しょうぶごと』を意味する『張り合い』ともなった」





 そうして広く『言語の祖』でもある大神からの有り難い突発の授業も終われば。

 交差する視点も現下に張り合う二神にしんのものへ。





「即ち『自身にとって最適の世界法則の押し付け合い』は『自分じぶん自分じぶん自分じぶん!』で『自我の強さ』を表す力量パワー表現ひょうげんでもあろうか」





「"——"、"——"、"——"」

「っ"、、く、っ——ぁ——(それでも! どうっ、にか——)ッ!!」





「『弱み』だってそうとを感じさせずに『強みを押し付け続ける』のが——今も"神戦かみいくさ"! "勝負しょうぶはな"よ!!」






("自分の流れ"を——っ!!)






 実際として競う神と神で各位に個別の世界観を創り続ける『青』や『赤』の粒子。

 水を操る神では『流れ』を創出する力。

 己の内に湛える源から『分子』や『原子』やを微細にも溢れ出させ、その最も得意とする形態が『水』。

 自前に産出する物を狙った時空で現出させれば既存の物質にも水から繋ぐ水の伝いに干渉からの操作はそう難しいものでもなく。

 厳密には永久機関で『己が一つの起点となる力』でもあって、神の意によって向かう先も自由自在。

 創る流れの始源から『上より下に』向かうようにも、内心に描いた予定通りの動きを支配下でさせられるのが『流体操作』の神秘であり。





「"——"」

「っ、っ——っ"!!」





 けれど、今に燃え盛る眼前の炎。

 詳細な水の防御位置を探るようでは左右から、上から。

 時には舞台の下からも足踏みに流し込んだ熱が物を溶かした『溶岩』と迫り上がり、その間も拳や蹴りの圧だって絶えず。

 対処に追わせては、難しく考える暇も与えずの赤き疾風怒濤しっぷうどとう

 戦の神でも己の信念を貫かんとして、その世界観に『迷い水の入り込む余地すきまはないもの』と。

 例え出力で劣っても戦に臨み、また『手を抜く余地もなし』の確固たる判断がより密に、より速く、より攻勢で厚く——熱く!




(少しずつ感覚が——"おもく"……っ!)




 熱が風を起こして巻き上がる塵滓じんし燼灰じんかいや乳糖のような物も何度となく防御へ吞まされれば『不純物』を多く含んだことにもなる水で『超純水からの零落』さえ起こる。

 水から水への間に邪魔な物の増えれば波の指示する伝導効率が下がり、下げられては先端へ伝える動きのにぶく。

 にぶくなっては只の遅れる一秒さえ神の前では惜しい、この戦上手いくさじょうずの前では『敗北への致命的』と成り得る落差だろう。





「"————"」





 対して神の炎は水の冷温さえ燃やして消えぬ。

 動きだって『先の先』を明確に持って波状。

 動作の終わりで自らに迫る反撃の水を『起爆剤』として利用し、敢えてに熱で触れては爆風に乗った上方からの急降下で縮める距離に踏み付けの連打。





「"——"!"——"!"——"!"——"!"——"」

「ぐ、——っ! こ、の"……っ!!」





 黒髪の背後から伸びる水の触手も届く前には急上昇の熱で爆発や上昇気流に回避。

 してやられる方の女神で『利用されるぐらいなら』と水を消したくても『青年は水』だから。

 例え防御を下げても『只の個体の水分』で何をするにもじしんが必要となるから、大神の力を借りれぬ今で事は簡単に運んでくれない。




("どうする"——)




 よって無情にも続くのが主導権を握られたままの不利な流れ。

 振り乱れる銀の髪で爆ぜながら方々を飛んで、近付いてきたと思えば既に離れて遠距離からも分厚い風に水の防壁を引っきりなしで殴られるかの『ボコボコ』と沸騰にも似た音の連続。

 それら研ぎ澄まされたまいに晒された青年で『次第に動きを制限されて行く己』が敵の『必殺』に繋がる経路ルートに置かれることを危機的に本能が察しても。

 けれど、その『中断』や『離脱』を狙って足掻けども——水を向かわせる先では新たな動作の起点へ攻撃の利用される『恐るべき技と手数の多さ』が『歴戦の差』を嫌でも『心身の重み』として感じさせて止まないのだ。





「川水でも膨大な気の壁があって、しかし『自身がどう動くか』ばかりに気を取られては『相手を見ない』で直に勝負事しょうぶごとの立ち行かず。考えも尽きて『行き詰まる本体を削られるもの』と————"そう言った矢先"だ」





 故からに打開策も示せなければ、王の指摘通りで現実味を帯びて行くのが『敗北』の未来。

 青年から巧妙に狙いを外した拳の二振りが至近距離で気を削り、『暴力の風』に晒された者で気圧されての『尻込み』に腰の退けた瞬間。

 押される状況を青年自身でも『変え難い』と強く思った時には、もう——『劣勢れっせい』の事実は目に見える形とも観衆に表されて。





(自分は、どう————)





 懐に潜り込んだ相手を『押し返さん』との水流を裂き——爆発に加速する鋭い炎熱の突き上げ。







「——ッ"! ……は……"」

「"——"」







 間の空いた腹部の、中央にある窪みが正に通常の人体であれば急所にあたる『水落みずおち』へ——かみこぶしが叩き込まれた。





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