『Gale! Blast!!⑤』

『Gale! Blast!!⑤』





「……"かぜかるい"——





 黄金の一隻いっせきでも神の千里眼せんりがんで見遣る先。

 妙に開けた砂地で、辺鄙へんぴな場所の——"如何にもな四角い建造物"。




「取得されたデータにも生体反応はない……"微生物のただ一つさえ"」

「ああ。"軽い風"に周囲一帯で含んでいなければ、前方で宛ら正に『大自然の中にある無菌室むきんしつ』のようにだ」




 手でひさしを作って眺めるプロムと、眼鏡状の記録分析器で周囲の精査を済ませるワイゼン。

 彼ら男神の今回の調査対象となる『研究施設』で流し見にも生体反応がなければ、どころか『世に溢れる筈の微生物一つさえ感じられず』の"妙な風"の吹き回し。




「間違いなく『意図して開かれた領域』だろう。それも見覚えなく、"新造あたらしい"」

「実際として『現下げんかまで存在のなかった物』。過去のデータと比すれば出現の感知された時刻は『凡そ一刻いっこくまえ』となっている」

「……これまでに在ったその手の『薄暗い施設』は壊滅させたが、それも『今し方まで同座標に存在し得なかった大掛かり』を『目を光らす我が身』で見逃していた筈もなく——」





「"……"」





「——ならば、その『目にも留まらぬ光速建造を可能とする神性』、『鎧の女神』がそのような動きもなしに。『ゲ』にしても素振りを見せずの此処にいて」

「残る者が……」

「残りが十中八九……いや殆ど十割で間違いなく『神々の王の仕業』だろう」

「その『設立者』自体は前例として珍しいものでもないが」

「だが、内見する入り口の通過要件には『奪うことの化身』に『女神』、『色素の薄い』などで指定があり……明らかに『わな』となっては引き受けた手前でも『進みたくない』ものだ」

「……」

「『何か』がある、絶対に。クライアント自身で『処分を此方へ投げた』のも、そうした『意味深長いみしんちょうの仕掛けをいとう』からだろう」




 しかし、流れる印象として軽くも沈む雰囲気は重く。

 規模にして『空母』や『戦艦』の類いを幾つも収容できるだろう『未知の施設』が、剰え『命なき大地』に鎮座しているのだから神で過去の先例と比しても『警戒』は一入ひとしおに。




「構造からして『光』で強引に押し入れば要件を無視することも可能ではあろうが……単純に膂力パワーで上回る大神から無理矢理に敷いてくる法で『乱入への罰則ペナルティ』も科せられたくはない」




 だがそして、『困るならば』と。

 "王の産んだ長子長兄たる神"で『嘆く姿を公然』とすれば。





『——吾が傑作むすめの【爆熱聖剣インフレーションセイバー】なら【要件を満たす似姿うつわ】として、これ以上の格はなく』





 とんと一切の前触れなく、"天より震え"のたすぶね




『正には【適格てきかく】として目先への【先行せんこう】をさせれば良いのではないか?』




「……」




 空を曇らせて鳴らすようなこともなく、神王の直々に『天の声』が自作へと助言を賜わす。




『力を奪われて変性へんせいしても神の耐久力それ自体は割に据え置きであるから、有事の【偵察】や【殲滅】にも事欠かぬだろう』

「……突然に口を挟めば、『大神で何を考えている』のやら……お前のような『トリックスター』は大抵、"何がしたいのかも分からぬ言動"で『場を掻き乱す者』」

『?』

「『物語作り』なら『話を回すため』の"メタ的"な、により狂ってもらっても『狂言回きょうげんまわし』の言葉がそう易々と受容される訳もなく」




 だが、王で『神の処女作たるプロム』から『作り手』へは辛辣にも『見透かされる警戒心』を隠さず。




「どの道と『始源の王』は何か『建造物の中にある物』で『己の利流りりゅうに乗せよう』という魂胆に変わりはない」

『いや、いや。其のように"警戒"をしてくれるな、吾が子よ』

「……」

『今の吾はただ……ただお前という息子の困っている場面へ【好意】によって話術はなしをかけて』

「……"多面神格たる大神の言い分には常に真実と嘘が併存する"」

『そう。"常に真実も言う"吾のような者では加えて……仮にだれが【恐ろしい罠】を仕掛けていたとしても【美しい傑作の壊れる様】は其も其で、と』




 返答の噛み合い怪しくば、自分の流れ以外に乗る気もなく。

 言及のあった通りに掴み所のない——いや、『膨張宇宙の化身』という遠謀強大えんぼうきょうだい

 互いに『未來視の眼』を持ってもプロムで真意の読みきれぬ言動。

 緩める気も余裕からなければ、『世界最大級に厄介な相手』を前にして知友にも『極力に絡み付く理由を与えるな』と暫しに『沈黙の徹底』を指示。




『即ち、"花は散り際も美しい"』


『時に"猟奇的な其れ"だって【全てを目指すからには捨てるだけとも行かぬ要素】と先達からの助言で——然りだ』




「……」

「……」




『本当に"素朴な好意"でも助けを言い……それに絶えなき花弁かべんが【無限花むげんばな】——其処な【疾風女神しっぷうめがみ】で損失という損失もないのですから、【投げ入れる】他に有望な選択肢もありませんでしょう』




 すると、間の良く。

 装甲車内部よりは保守点検メンテナンスを終えた者。

 下体衣服スカートへの聖剣装着順序シーケンスも完了し、仮面の女神は『外出許可』の下を進出して——その『子の歩む様』へ逸れるおやの言及。





『なにせ、幾ら傷を負おうが戦神そのこは——"常に戦いのことしか考えていない"もの』





 しかし、揺るがぬ事実として。

 めいを下す物腰に差を感じてもから同時に『行け』と命じられては。





『だからには使用への妙な配慮も要りません』


『現管理者の【暗黒あんこく】と、並びに作者さくしゃたる【おや】の名の下で許可をします』





 "監視下"でも選択の余地なき者たち。

 にも地を行く『気重きおもの足取り』が目標への前進を見せるのであった。



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