『Gale! Blast!!④』

『Gale! Blast!!④』




「ならやはり『神』であって『必要なら神殺しも狙う我ら』で」


「個々が勝手に『世界の正しき』を見出す『宗教』などに対しても『批判ひはん』や『懐疑的かいぎてき』に成らざるを得ず——」




 おもむろにプロムの熱い黄金の視線が横のワイゼンへと向けられる。





「——ああ。俺にとっても『正当』だの『正義』なんだのはんだ」

「……」

「早くに一度は諦めた身で、ただ『見たい者』がだけなのだから」





 の『期待』に満ちた視線は熱苦しいことこの上なく。

 直接と身に受ければ火傷では済まない注視。




「……して、そうした『人の言う完全ふかんぜん』よりは『完全』に近く、『充足』や『不足』なんのと単に『其処に在る物』にしか興味の湧かない非情ひじょうが——ワイゼン」

「……ならば、そうして『神をも恐れぬ我ら』——

「はっ。少しは目も覚めてきたか?」

「『知識』や『知恵』で対するは『存在の曖昧な神』や、『幻聴』のように聴こえて『実証情報記録じっしょうデータのない教え』を『畏怖して従うだけ』のいとまなどもない」

「そうだよな。『世界が答えをくれぬ』なら、見出す『己が幸福』の為には最早自分達で『宇宙』を。延いては『世界』を打ち抜かん——"神でありながらその実在さえ疑う論者"」




「『凡ゆる不可思議に、矛盾さえ既知に置かん』と『理不尽なりし世界には己が意思と身こそで全てを解明しにいくしかない』と奮い立つ王が、お前の『太祖』にして俺の参照元でもあった」




「……」

「故からにそれもまた『全て知るのは皆を知り』、『その如何な苦悩へも解決策を提示してやれる』——"王の中の王"!」

「……」

「お前もその『大神ガイリオス』から続く『偉大な志し』の実践一派が『学びの徒』であるのだ」




 千年を超えての起床に『目覚まし』代わりの『定義確認』を終えては、漸くと『知識の神』たるワイゼンでも重い瞼が持ち上がりを見せる。




「……何の話だったか?」

閑話休題かんわきゅうだい。如何に王たちのよう強大であっても『果たして真に全知全能などいるものか』で話題が逸れた」

「……続けてくれ」

「戻しては『極まる神の威力分析』。残る大神以外では『何をもしない』ことで皆に恵みを与える神もいれば、その解釈次第で『変わる数』もあるかもしれんが……けれどこれに関しては『評価対象となる業績』が特筆になく、判断の難しい」

「『破壊』であって『守護』の神格」

「正に『自己矛盾』で、……"女神グラウも未知数"」

「……"拘束具よろいに包まれた神秘"か」

「より正確には『未知』より何かしらの影響を受けて『己でもそう在らん』と意気込んだな『隠蔽いんぺい』の結果であるのかもしれないが……しかし、一先ずと『大人しくしていてくれる』なら『他に専念できる』ものとして、後回し」




 次には、プロムで移す視線——"後方に縛られる女神"へ。




「ならばならばで『ディオス』・『アデス』・『ガイリオス』・『グラウ』と続き——"極神の五つ目"」


「また仮に『世界から死の恐怖を取り除いた』のであれば、それもやはり『偉大な王』となろうが……」





「……」





「戦いの果てでは『覇を滑る者』にして、けれど邪悪なる王たちの対立で維持される一応の現世界の秩序において、『覇王はおう』など……『暴威』のそんなものは邪魔でしかない」




 緘黙かんもくの女神へと気を窺うように話す。




「かつての大戦で『最も勇敢に戦った者』は今のお邪魔虫」

「……」

「真に泰平の世なら居場所なく、逆説で『存在を許された』のなら完全な平和などもある筈がない」

「……」

「それでも『貢献せん』とさせられて、『戦闘マシーン』にあるのが『よごれの仕事』ぐらいのもの」




 運転席の辺りから後方へと歩を進め、距離を近くした見目良き男神と女神で前者が封印に膝を突く後者を見下ろす形。




「よって『極神の最弱』が我らの? 力なくば『元極神もときょくしん』? 『元キング』?」

「……」

「『隠された力』があるようならまだしも現状の有り様を見て取るに『没収』されて久しいのだろうし……他のへ『優越の権利』を取りに行くのは現状で厳しく」

「……」

「『いくさの神』の機能役割としては体内小宇宙でいう所の『異物排除』」

「……」

「『攻撃こそが最大の防御』で『けん』と『ほこ』との究極遊撃戦力アルティメットパワーは『異界への侵攻』・また『迎撃』の際にも第一に駆け付ける『速手はやて俊足しゅんそく』らしく……『一足ひとあしに宇宙さえ越える』とのことだが、そこまでの面影はない」

「……」

「神王ディオスの創作主題の一つである『独立不羈どくりつふき』に従えば、謂わば『戦いの為の道具』の『剣』でありながら『極まった自我』を持って——その『完成形』が一つ?」




「『不要』・『不都合』や『殲滅手段』や『戦闘方法の決定』も此処の判断に一任され……けれど『只の一瞬も戦わぬ時はない』らしいのだが」




 天の長兄たる神で、自身の起源である天空の王より伝え聞いた話に基づいての比較が進む。




「神王の有する無限の側面。その『最も荒々しきを継承するのが戦いの神』なんだとも言って……何か『二柱ふたはしら』いて何方かが『正当継承者』みたいなのは……『一子相伝いっしそうでん』的な凄まじいものはないのか?」




「……」




「『大神との交戦記録』は何処へ?」




「……」




「……それなら『戦神いくさがみの機能』として変革の時代に何か『ヤバい案件』の香りはしないのか?」




「……」




「あるならのか——果たして」




 そうして、熱を失われて静かな玉体へと近付き。

 車内倉庫に保管のある数々の任で回収した『危険物』たる刀剣の類いで女神のあごより顔を上げさせる。





「……」

「"……"」





 だがして、『大神と刃を交えた者はどうなんだ』と聞いても『守秘義務』もあり。

 垂れ下がる銀の髪も流れて、前面で露わになる様子では瞑想めいそう

 伝説に語られる『強兵きょうへい』の実物より一言もなければ、『黙秘を定めらている者』を前にも『敵軍』や『自軍』を見直しての現時点に出来る『総評』を述べるしかない。




「総評。つまり『今の持ち札で大神殺しが出来るか』」




 聞き出しを諦めたプロムで意見を確かめ合う相手を視線ごと友の方へと戻す。




「『ディオス』は無理」


「『アデス』はよく分からんが、それ故に無理」




「分からぬものは仕様もない」




「ならば『ガイリオス』こそが最も押し通し易いだろうが、この『仲介者』たる神の不在で前の二柱が更に幅を利かせ始めても部外者は行き場のないから……むぅぅ」




 だが、もう何度目かの行き着く『代わり映えのしない結論』に唸る声。




「大神は言わずとも『グラウ』筆頭で精神的に不安な面はあるが、故にこそ本気でたがを外されても苦しく」




 現有戦力のおもな構成員では『知を司る高位の二柱』と『極神崩れの今は半神以下』で何が出来ようものか。





「何より今となっては『分析どころでない未知』にして『最古の女神』と——その策動家さくどうかと共に『最新の女神』が併存する

「……」

「暗黒神の秘密主義は今に始まったことでないから置くとしても……、剰え『極神たちで手塩に掛ける』ような『若い二柱』さえだ」

「『美の女神』については大方の予想も付いてはいるが……だとしてもやはり、がある」

「『美』などという『不定ふじょうな化身の正体』については『引き篭もりの戦神』が『真っ先に飛び出して行った事実』が殆ど答えをくれ……其処から推測できる『本質』は

「……」

「仮に予想が的中したのなら『』を『取り置く』か? 普通——大神が気にする『普通』なんてものもないか」

「……それこそは『この上なき寛大』のめんでも諸神が判断を下したのだろう」

「『都合の悪いものを排除するだけが王の振る舞いではない』、とでも?」

「……恐らく。『万能を超えた神』のあっての物種ものだねだ」





 揺るぎない真実として大神は強大だ。

 適当にも見渡せば『草の萌ゆる大地』に、『命の揺り籠たる海』に、『空』は——宇宙うちゅう

 その広大で繰り返される『天体の終焉』と、衝撃に散逸する物質たちでの『再結集』は『兵器の自己崩壊』・『修復』・『新調』の『セルフリビルディング』システム。

 神で見る遠景の全てに大いなる存在の『作為』の結果が感じられよう。




「では、最も若いのが『川水かわみず』。此方も『無から生えてきた』ような曰くのあり? けれど、美の前者と比較して『戦神グラウが特別に警戒する』ような素振りはなく」

「事情が異なるのだろう」

「早くに『ゲ』が何か怪しく目を付けていたようでもあるが……勿論に詳細は秘されているし、その此奴こやつ此奴こやつで『王の命令を完全に無視できる』から定石通りには行動の意図が読めない」

「……『未知のデータ』」

「だから件の女神について最も着目すべきは『あの大神アデスが気に入りのように手元に置いている』"前代未聞の事実"なのだが……やはり、これも未知に対しては何とでも言えよう」

「……"データにはない"?」

「『愛娘まなむすめ』との説もあって『寵姫ちょうき』。少なからず暗黒自身で手掛けた『仕掛け』や『兵器』や、"如何にもな秘密"を握らせるよう『誘い受けの罠』にも思えるときて……先ず間違いなく今に示した『後出しで真実と出来よう神』」




形而上けいじじょうから幾らでも。並の高位を遥かに凌ぐ『願望がんぼううつわ』」




「……」

「真相に踏み込まんとすれば妨害もあって、『気付けぬに此方の認識へ手を加えた可能性もある』とくれば——」

「我らに畏敬いけいの念の占める限りで敵う筈もない」

「——やはり大いなる神殺し、『現実的ではない』と」

「……『いによって退ける』だけが『超越ちょうえつ』の方法ではない」

「だがそれでも、『大神以外の者』とは奴らの掌の上で生まれた『表皮ひょうひ』や『あか』のように過ぎず……どの道で『絶大な差のある前提』を覆せぬ限りで『太刀打ち』も出来まいて」




 そうして座席の回転で以て再びに百八十度の眼前。

 未だ『物言わぬ石』の如きでも『女神の花』を捉える隻眼。




「……故にこそ、故にこそは」


「その前提となる『絶対権力』を問答無用にこわしてうばうような『太刀そのもの』——に期待を掛けたい所、だっ、たの、だが」




「"……"」




「そうした『利用』の意図で雪山にこおっていた者を、『大神という化け物』にも了承を取り付けてのだが——はぁ〜〜まったく! !」




「"……"」




「あの『作り手の親バカ』の噂に聞いていた者の、どれとも違う。こんなものは『かす』だ」




「"……"」




「自分は穏やかに『澄まし顔で瞑想』しおって、本当に『大神の対抗馬』として『他でもない大神に生み出された神』だとして……果たして何処までを期待していいものやら」




 プロムで失望の胸中が悪態を吐くが、それでも『変わらぬ名花の美』が『不老の女神』には備えられていた。




「結局は奴ら『大神の想定内』からのが現状よ」

「今現在の遣り取りだろうと遥か過去に、未来にさえ視ているのだろうから……ああ。今更と狂っても仕方ない」

「結局は乗せられていようと『自分のやりたいようにやるのが一番』と、いつもの議決で終了」

「利用されようが、されまいが『一定の納得や手応えさえ掴めれば』と考える他になく——つまり、未だ本調子でもなく。俺は寝る」

「億も承知だ。『お前は聖剣を観測してデータを取り続ける』、『それが今の最善ベスト』だと」




 そうして、知の二柱に現況の確認も済もうかという所。

 寝ぼけ眼に『己の願望』にさえ力の張りきれぬワイゼンが自動に倒れる座椅子で宛ら体内の『断層撮影装置』や『霊柩車の棺を仕舞い込む機構』のよう奥に自身を仕舞おうかという時。




「『更なる未知』と遭遇すれば、起こせ」

「勿論に其れも分かって——"む"。噂をすれば、"未知めがみ"」




 日々目的の為に邁進しても度々の点検が欠かせぬ『生物』でもある知識の神。

 眠い彼で『本来の活動周期』との『調整』を行う『休眠』に入ろうとしても何処からかの声が掛かる。





「これはまた、"直々じきじき御足労ごそくろう"とは——『施設の調査及び破壊』?」





 待機中の下へは舞い込むのは『新たな依頼』。

 大目標の一つの到来を知ったワイゼンで腕が装置の進入を止め、交渉窓口を務めるプロムで視線は車外の木陰へ。




「……勿論。聖剣を借用する対価としては断る理由もなく、例によって『ひまの神のたわむれ』と確認が出来た後に『破壊』と了承し——今より指定の座標へ」




 何やら直々と『不可視の神性』が近くに。

 



「……"女神"は何と?」

「……今回も『報酬あり』だ。完遂すれば『雑兵ぞうひょうにも飽き飽きと、不足を感じていただろう』と」




 果たして、どのような風の吹き回しか。

 "これまでの遠隔指示"と趣きの異なる依頼は『研究施設の破壊』で、伝えられた内容自体に珍しいものはなかったのだが。




「御配慮には大いなるでなくとも『神との試合』——『対神戦闘たいしんせんとうの機会』をたまわしてくださるようで」

「『聖剣』と『神』を……初の計測機会となれば『未知』を期待できて確かに利はあるが、だ?」

「それも有り難〜い配慮で『"最もくみやすい相手"から』、謂わば『"微温湯ぬるまゆ"から慣らすのが程よいでしょう』とのこと」

「では、つまり」

「ああ。『熱き聖剣』と——」




 だが、それであっても。





「"……"」





 開示された情報を身に受け——有無も言わず、微動もない神。






「——『川水かわみず女神めがみ』との''一対一マッチアップ"だ」






 仮面の下で、赤き闘志まなこが燃える。




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