『Gale! Blast!!②』

『Gale! Blast!!②』




「——ぞ」




「……」

「……」

「……」




「またも曲者くせもの、しかもはだと——馬鹿な! "我の意に沿わぬ者"が何故なぜここに!」




 不可解を紐解く言葉で平静を維持しようとの筋肉。

 けれど、副市長で邪魔者の排除を中断せざるを得ない状況で、『思い描いたすじ書き通りに運ばず』が『隠せぬ動揺』に青筋あおすじこそを浮き上がらせる。




「"我の本性"は完全に隠し通したはず! この薄汚く嗅ぎ回ってきたドブネズミ以外には全て口を封じたハズ……!?」




「……」

「……」

「……」




「まさか数える程しか殺していないのに『足が着いた』とでも? 死体と入れ替わっても過去を全て切り離してこうも……一度ならず二度も! "己を嗅ぎ付けられる"訳も!!」




 そうして狼狽する人で『謎めいた三つの影』を横目から眼前へと捉えた矢先。




「……『この手のやから』は大方で片し終えた筈だが、開幕式の降り注ぐ光線ビーム洗礼で才能を開花され、増長ぞうちょうから『政治』に『法』を『私物化』しての今か」




 その三つの中にあっての『柱』の一つが口を開いて——だがすると、実際として姿を現した『神』で台詞の多くは語らずの間。





「……いや、なんであっても構わぬ! 速やかに乱入者、"物言わぬ筋肉"と————な"、!?」





 今まさに『民の黙殺』という不都合な真実を見て取られた現地法界の重鎮で、即座に優先度を変える『口封じの刃』を投げ撃って見せたのだが——あろうことか刃物は様。

 その後方にある"神殿の壁へと深々に突き刺さるのみ"と。




「……」

「……」

「……zzz」




 今し方に『依頼主クライアント』への報告を読み上げた神の『プロム』は金髪隻眼の偉丈夫。

 またそして其処の輝きから一つ挟んだ隣で学者風のゆったりした装いが同じく男神の『ワイゼン』。

 後者で落ち着いた黒髪は休眠しながらも何やら回路に熱の走る眼鏡グラスで場の『情報記録データ』を取っている——活動する予定のない謂わば『スランプ』の時期に無理と起こされては神の彼でも本調子は未だ遠くあるのだろう。




「……」

「"——"」

「zzz」




 さすれば、残るそれら大いなる神の作りし美男に挟まれた異物いぶつ

 柱では凶刃に襲われても両側に立つ二者で悠揚ゆうようと道を空けるあいだより——。




「……なん、なのだ? これ見よがしに『うつくしく筋肉きんにく』と『けん』の形を見せびらかしおって——見れば『ぞく』と始末するのが惜しいほどの「大胸筋だいきょうきん』に『大臀筋だいでんきん』、『大腿四頭筋だいたいしとうきん』だと……?」




 一歩を進み出た一つ背の低い形が——その『女神めがみ』でも有するのが『聖剣せいけん』の表象。





「……」





 長い銀の髪に除く白肌、目は見えない。

 三つある柱の真中で進み出た動作を指摘されても寡黙な者。

 顔の位置では『王』の字でも象ったような奇怪の『仮面』に、耳では垂らす『剣飾りソードピアス』。

 また波のある起伏豊かな身に張り付く衣も肌に負けじと白無垢しろむくで、下体部スカートの降りる幾つもの折り目の線に沿うよう下げられたのが此方も『剣』——刀身そのものが吊り下げられ、まるで御伽噺おとぎばなしにしか登場しないような『聖剣で着飾ったお姫様』。

 今や『姫』となった、その身。

 彼女で『聖剣』は勿論に、他の二柱と違い雨に濡れた女体の表面に『乳房』と『乳輪』と『乳頭』の描く『三つの輪』の表象も『己が宿す神性』と透け——いや、其処までを行かずに見える下着が薄白く。

 水の滴り、染み込む先へと胸部。

 山間の如き谷間に宛ら『溜池ためいけ』は、今やこの者の玉体に『宇宙崩壊の熱量が失われた』のを冷たい事実として表している。




「……だが、此れ見よがしに『意を挟む剣』も神聖の力で編まれねば『まがもの』」




「……」




「——そうさ! 『神より授かった我』こそが、我の『神権政治』の表象こそがッ! "能力のうりょく"ッ!!」




 さりとて、予想外の横槍を受けても『排除』の意を止めぬ人。

 例え敵が如何に『見事な筋肉』を編み上げていても野望の為には容赦だってするものか。




「次はかわいとの隙間も与えんぞッ!」




「……」




 部外の相手が目立った動きを見せぬ悠長な時の間に先手の能力発現で——瞬間にして同時に煌めきが囲む三柱の周囲。





「『聖剣包囲せいけんほうい』を——くらァ"えぇぇぇぇ"ッ"ッ"!!!」





 全方位から"剣の襲来"。

 だが、次なるその千の鋭き雨にも両脇で並ぶ男神たちは動じず。

 物質を抜けながら溶暗ようあんめいて色を暗く姿を隠す横へ。

 よりて、立ち尽くして残る唯一が防御の術を持たぬ『真中の花』でも無音は同じく——いな

 如何に『見切れる緩慢な攻撃』とはいえ彼の女神で『動くこと』自体が





「——つらぬいたぞッ!! 『心筋しんきん』も、『下腿三頭筋かたいさんとうきん』も!」





「……」





「それらは生命維持に、血液循環に欠かせぬ重要のきん! その貫かれては正に『息つくひまもなく』絶命ぜつめいの——」





 なぜなら、『神』で。

 今の『彼女』にも人の場合に『心臓』や『もも』ので致命傷になるだろう部分を突き刺されたとして——問題などなく。





「——…………馬鹿な」





 流血さえなく。

 串刺し千の剣に撃たれても、傾きかけた柱の身で直線に——立脚りっきゃくをし直す




「——……"」




 続く息遣い、濡れそぼった身でなまめかしく。

 揺れる胸では其処に刺さる刀身からも連動が雨雫あめしずくの滴って——鋭利の切っ先を伝い、離れて。

 水の落ちようかという間際に『気化きか』が蒸気と相成らせる。




「……なんだ、は」




 即ち『見切れても受けた——初撃しょげき』が踏むべき『専守防衛』の段階ステップ

 其れ、『無用の殺生を避ける』ため。

 神で『依頼者』と同じ『聖剣の管理者』に示す『反撃に移る正当性の証明』として——即ち先ずにを貰わねば

 故からに『棒立ち』のようにも相手へ極力に圧を掛けぬ状態で、其処へな『敵意』や『殺意』や『害意』の込められた一撃を身に受けて漸く『交戦許可の申請』が可能となるからして。




不足ふそくだ。ただの剣が無限に在ろうと、"それだけでは宇宙うちゅうわらすにいたらない"」




 プロムが状況を説く側に『限定的な行使』を許される神の力。

 首を裂かれても、胸を貫かれても。

 各所の刺し穴から吹き上がる熱気の中には『焼ける神』の恐ろしき威容ありて。




「即ち『神を本気で打ち倒さん』とするなら、初手から『世界せかいほろぼす気概きがい』を示せねば」




 銀髪の美少女で、煮える。

 正面に背面に、左右の側面にも凡ゆる方位から突き刺されては——刺させては己を『さや』であって『』のように。

 揺らめくのは人の目にする景色。

 まさしくが開幕に神々の王の見せた『自傷技の後継者』か。

 また『聖剣の原型オリジナル』は赤き光の炎を持ちて——いや、より正確には『ひかりさき』にありきの『光炎こうえん』でなくで燃え出す。




「"——"」




 力の一端を顕す熱の化身は神体内部の光にて剣を今に打ち鍛える鍛造たんぞう

 動きを邪魔する脚部から引き抜き、傷口からは煌めいて火炎の粒子が蛍火ほたるびの如きを漂わせる。

 削られた姿も『彫刻ちょうこく』に『陶器とうき』めいて輝く隙間が炎を吹いて焼き塞がる。

 抜いた剣は『己のもの』と主導の権利を書き換えて奪い、使う。

 どの道で『破棄する危険物』ならと『ポテンシャル』を最大限に燃焼し尽くして使い切ろう。




「そうして『非は敵にあり』で『交戦の許可』も下りた」




 然様、り物にき物でも『作品』。

 女神で針の山となっても『子宮の位置から剣を引き抜く様』だって最早の『芸術』。

 時に『男性』の隠喩メタファーともされる『剣そのもの』の表象を、腹部のきゅうへとじかに突き刺されて。

 だのに、あろうことか——

 けれど、というのだから——あ"ぁ"!

 これは『本当に現実』か?

 "実際"として『世に現れる光景』なのだろうか?

 仮にそれが『起こる真実』だとして、そんな狂おしい程の、『一枚の絵』として望んで努めても手に入らぬ絶好も甚だしい時機に出会えば——『詩人』なら『詩』を・『画家』ならば『画』を・『字書き』なら衝動で『字』を作らずにはいられない?

 誰もそんな光景や事象の先例を教えてくれなかったとして、けれど『己が知覚した其処には確かに感じ入るものがあったのだ』と細かな感情?

 事の発端ほったんがなんであれ、高ぶれば『眼前の現実』や『思い描く空想』さえ境界の曖昧な時に。

 そんな幻惑の最中に『言葉』という認識を縛る不完全では形容し難くも『何かがあったのだ』と、その感じ入った事実を『己で忘れたくない』から『何かを残したい』とも?

 いや、もう何か『残す』・『残さない』以前に『乱れた心』で止まることなど出来ないのかもしれない。

 今のこの『震えた瞬間』で個々の感性からは各位が其々に『本気たる存在証明のようなが嘘になる』とも、『触発された作家』が『何かを作らずではを感じてしまう』のだとも。

 兎角、ああ、なんだ——己の見て、聞いて、触れて『感じた何か』が『確かに其処にあるのだ』と良く分からずも叫びたい。

 例え『不完全な己』のする『不完全な表現方法』で全てを表すことの決して叶わずとも、誰に求められて披露するでなくとも。

 打ち震えた己で『自身の形としたいもの』を『作りたい』から——『自分で作る』以外に選ぶ道などありはしないのだ!





「人では。暫定としてもお前の『人生を最期とする戦い』が来るぞ」





「——っ、訳のっ、分からぬことをッ!」




 そう。

 人の自信とする力を身に受けてから玉体で引き抜く動作は『無視できぬ畏怖』を敵対者へと見せつけ——ならばこの時と既に『神の展開する異様な空気に呑まれた人』でのだろう。




「我が神剣創造しんけんそうぞうたるサウザンドは無敵の力! 単純にも圧倒的な質量へ! そう二度三度が耐えられる訳も——!!」




 人を相手として限定的にも戦闘状態せんとうモード解禁では雨水の触れられぬ玉体も、此処に。

 現出げんしゅつ

 蒸散を纏って、背負う雨中に柱が『輝く炎』となる神秘の様。




「いくら"異能を持つ筋肉"とはいえ————な"、?!」




 瞬時に台風の目を作るかのような回転。

 己に残っていた剣の全てを遠心によって射出とし、新たに敵の撃った九百九十九きゅうひゃくきゅうじゅうきゅうを相殺。




「馬鹿、な……! "人の形をして人ならぬ"——がッ!!」




 残る一つも子宮より抜いた剣で一振りに実体を殺し合わせて——炎熱を纏う神で胸に燦爛さんらんたる結晶の美。

 聞けば『"授乳じゅにゅう"の機能という失念していたものも変形へんけいの際にわれが付け足していたから能うぞ!』とは。

 その製作者うみのおやの曰く『"育児とは戦い"であって、なら"戦いの神が育児の出来ぬ理由"もなくて』・『ならば戦意の高揚とは気に胸も膨れる"母性"の表出でもあって』——『戦いに際して母乳の滴るように』が戦時に扱う熱気で乳糖にゅうとう気化きか

 そうであるからしても、けから忽ちに乾いて見せる衣では流石に光輪のいちたるちちあたまが透けていなく。

 また深い温情に『戦に臨む者なら何時いつ何処どこで野垂れ死ぬ時も見目よくは当然』として、『蝶の如き∞のリボン』など飾り気のあって超上等スーパーじょうとうな『勝負下着ランジェリー』を与えられているから。




「そんな動きが、『真に尊き人の筋肉』であるものか! ——『豊かに高貴を支える筋肉』であってたまるものか!!」




 それら特注に賜った『祝福しゅくふく神衣かんころも』は脱げず。

 だから、まろび出てしまうようなことも心配はいらず。

 浸透と乾燥を経ても崩れぬ化粧もいくさのためであるなら仮面の女神で遠慮なく始動する激しい乱舞が『秒間に千の剣を生み出し続ける』という敵の異能と、それでも『一瞥のような顔の振りのみ』で打ち合ってみせる。




「ぉ"——"押される"ッ!!?」




 よって、堪らず『驚き』と跳び退いて遠距離中心の戦法に切り替えんとするのが筋肉の人。

 だが、真実としてうに肝の冷えきった逃げ腰では何度だって千の数を射出しても無意味なことに気付けない。




「だ、だが——いつまで、そのっ! が……!」




「"……"」




 一方の熱くも冷徹の神。

 漸次ぜんじには握る手で下腿スカートより取り出した聖剣の威容。

 また敵の剣を弾き壊す鮮やかな舞姿が『防御』だのと、却って語らぬ真実としては『劣勢に追い込まれる人の希望的観測』で勝手に思われても。





! そのよう筋肉に多大な……負荷、を……」





「"……"」





 寧ろの力を『攻めに転化しよう』との今は。

 火炎の信仰を拠り所とする神格で柄の持ち手が『∞』を描く如く——左右に『聖剣使い』で舞うように腕を回して。





「……そのような無理が、出来るわけ——」





「"……"」





「何処まで筋肉を!? ——というのだ!!?」





 その敵の血中鉄分から来る『ソード粒子』を今に、溶かして。




「なぜ! なぜだ!? こんなことがあってはならぬ!」




 もはや『敵わぬ』と。

 なまじ筋肉に詳しく、その『稼働限界』を知るからこそ己の既知とする常識を優々に超えてくる強大に己の劣位を嘆く人へ。




敬虔けいけんなる我は神の教えの実践を、我の筋肉たみを思う政治は……『脅迫きょうはく』も『贈賄ぞうわい』も完璧であったのに!」


「よって『我を裁ける者』など! 『法』などもある筈は——」





——ではないのか」





 今も女神で無限を描く舞姿を見ていて口を開くプロム一柱より。

 神の口から『反省への道も一つ示してやれ』との指示に従い、『冥土の土産的』にも音で説く。




「本来『罪人にも守られるべき権利がある』とするのが『法』の恩恵。其処で『筋肉量』だのとは区別なく」


「よって其の通りなら対象の性質を問わずの『尊き法』に守られる権利を、お前たちはようなもの」


「規定通りに行使すれば『殺人』や『恐喝』や『贈賄』などで真っ先に収監となるのはお前たち……だのにとしているのを見るに、この場所には『法が存在しない』とも見て取れる」




 横に黙るワイゼンは寝ながらでも起動する力か。

 都市一帯の人々の認識で帳尻を合わせ、過激派で荒らされた『法制度の再整備』もしては追いやられた者を中心に人員も各種役職へと再配置。

 身近では口封じされようとしていた手負いの人間にも新しき腱をやってから寝かし付け、『筋肉の模範的な化身』として崇められ飼われていた辺りの聖獣のゴリラに病院へと運ばせる。




「そうして時代や地域の限定的にも『無法』なら、『アウトロー』が無茶をやる。"我らのような無法者"さえ『幅を利かせる土壌』のありて」


「即ち『御上品おじょうひんに行かねば』の今、『法社会』に於いてはそれに倣い、『法の概念がない』範囲では此方も理不尽に」


「介入して『国家を解体』するような時とは法が『民を苦しめるだけのもの』となって『運用する側は破っても咎められず』……国家の中枢が暴虐や腐敗に明け暮れた時、"回復の望めぬ時"」




 そうした『人助けをする神々』の裏には、この統合宇宙で真実としての『伝説』——『暗黒の意に沿わぬものは遠からず死ぬ』。

 悪虐非道を尽くして未だ死なぬのは『最後の柱』であろうとするであるからして、其処より来たる『抑止力』を『知らぬとする神王』より格下は皆が自重する『魔法』の秩序。

 何時何時いつなんどきも生類全てに掛かる重圧から『こま』として生かされる神々の高位さえ生命をなぶり殺すような真似は『彼の女神』が恐ろしくて出来ず——暴虐に『果て』を設けてはの『偉大な神』が皆を視ている。





「しかし、そのないがしろにした者へは、それでも『お前の個』を尊重して『悪辣あくらつな人』は『悪辣あくらつな人のままでも構わぬ』と」


「『悪質あくしつ人格それにだって悪いようにはしない冥界せかい』があるらしく——"慈悲深き神"に感謝を捧げよ」





 その不可視の眼下。

 悪足掻わるあがきの射出を続ける剣筋はにぶく、けれどの狙いが逸れた物さえ神の舞が拾う。




「ぅ、ぐ……っ、!?」




 対する人では『動悸』や『息切れ』、『眩暈めまい』に『くらみ』で痛む頭を抑えながら膝を折る。

 顔色も暗く、指で爪はかえり。

 抑えた手には『抜け毛』の感触も多数で更に青ざめる狼狽。




「瞬発的に『血中ソード粒子』を使い過ぎたな。平たく言っては『鉄分の不足』」


「生半可な永久機関で『生産』を『消費』が上回れば一時的にも『息切れ』のような症状は起こる」




 一方の乱れぬ炎熱空気の舞は未だ素材を吸い込むよう拾い、集め続ける。

 今回で中心に寄せの『核』とするのは『ヒキ』から引き上げた聖剣じしん模造コピー

 燃える麗容れいようの周囲で熱されては各種の物質で『膨張』が圧に『窮屈なりし空間』から『余裕ある隙間』へ——その正に作る気流へと絡め取るよう、奪い。

 また奪いせしめた物を更に己で作る風に打って、打ち、鍛えてはの鍛造継続。





「——ま、待て……! その肉体を……『玉体ぎょくたい』を持って……!?」





「"……"」





「軟弱な者のじゅうや、二十にじゅうなぞ! 所詮は『虫ケラを潰す』のと変わらずに——」





 その『熱意を持って止まらぬ様』は神々の王から見た理想の具現。

 如何な艱難辛苦に濡れても、苦境の中にあっても『己の成すべき真に欲する所を見失わずに突き進む理想』の。

 多く殆どの生命にとっての父母である神王ディオスが、その子ら全てに求める『無限』の到達点が——此処に。





「そ——そうだ! 全ては我らのよう優れた強者の糧に、『筋肉を支えるだけ』の重要でない役割!」





「"……"」





 奪いきった熱では次第に大きく、熱くが天を貫いて。

 物言いに興味なく、ただ敵を滅して世界よりその存在を奪うための解放が燃える一刀。

 もはや逆手に持った在野の剣で実物としての形も要らぬ。

 使い切るのだから後のことは省みぬ、そんものはない——"今ある戦いのみに全てを捧げよ"。






「『筋肉の声』を聞けば解るだろう!? 全てを解決する筋肉神きんにくしん!」






「"——"」






「即ち全知全能ぜんちぜんのうがマッスル! その躍動するきんの、みちの——」






 鍛えても『弱者』ありきの『強者』とやら。

 筋繊維一つを編むにも何か『犠牲』を必要とせねばならぬらしい不自由を、失せぬ無限の熱が討滅とうめつとする。







「ぁ——————」







 呑み込んだ横の一閃。

 その剣が有する可燃性ポテンシャル全てを引き出して奪い、命を真に異界へ。

 身を崩壊させる熱は一切の血を流すようなこともなく。







「"——…………"」







 雲さえ払った晴れ空を背に。

 一戦を終え、『次の戦い』を見据える神で用済みとした聖剣の粒子が粉の如くで玉手ぎょくしゅに散った。





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