『未だ知れぬ法の在り処③』
『未だ知れぬ法の在り処③』
「どうして『鉄球』なんですか——鉄球を飛ばしているのですか?」
「そういった
「"What"?」
「『ルール』、ですので」
「……でも、これでは頭が割れてしまいます。少なくとも『防具なし』でやるスポーツとは思えません」
「そうなのですか?」
「『安全な仕切りのない砲丸投げ』みたいなのは、もう……それはもう『無差別な攻撃』なんです」
どのような意図があったとして、『明確な危険性』をそのままと許すことはできない。
鉄球が落ちて陥没の作られた運動場、けれど『自動修復なので大丈夫』と
「珍しく青年が若さでも語気を強めている。『他者の身の危険』を感じては必然に、我々年長者で見守ってやらねば」
「はい——我が友。主張は間違っていないと思えど、落ち着いて」
『しかし、"これ"では……時に殺伐とした戦いを「競技」として昇華した"先人に対する冒涜"です。"嫌な原点回帰もあったものだ"と』
『確かに、「メタ・コミュニケーション」は「約束」の行動。あくまで度を過ぎて相手の存在を否定したり、"
『それでも、"勝ち負けをハッキリさせたい"時や"親交を深めたい"などの需要でも続けられてきたものが——今で危険の、これでは』
「だから、これでは——『携わる部員を増やそう』という試みに無条件で協力する訳にもいきません」
"死者の出かねない危機感"から思わず辛辣に寄っても、『だからこそ伝えるべき』との正直な口振りで首傾げの人とも再度に向き合う。
「こんな鉄球を使った……言いたくありませんが『悪ノリ』みたいなルールが本当に存在するのですか?」
「は、はい。気付けば、"昔から"そのようで」
「……」
やってみての抱く率直な感想として、『内容の殆どが魔術で決闘する時間になっていても主旨が野球である必要性とは』。
これだと『球技』とも言い難い謎の伝統を前としては少なからずの不可解で苛立ちさえ胸に——けれど、早計で人を責めたとしても仕方はなく。
時期的に人よりも前に在っただろう『マジカルな競技そのもの』についてを問い詰めん。
「……では、『マジカルベースボール』というのは本当に、こういった? "体験で示せていない要素"などは他にないのですか?」
(これじゃあ『銃で弾丸を撃ち合う』のと大して差はないから……きっと、何処かに『安全への配慮』や、
「それでしたら、『鉄球は更に増える』こともあります」
「……何です? 『野球で球が増える』とはなにが、どう?」
「その方が『見ていて飽きぬ』らしく、時に自立して機動する鉄球が飛び交う中でも点を取り合ったり」
「……?」
「そうして試合も往々としては最終的に『敵の大将を討ち取った側の勝利』となります」
「——え? ならば、それまで球を打ってきた意味は?」
「『点差で勝ち目のないことを分からせて心を折る』、ため?」
「??」
「……ふむ。こういったことでしょうか」
「いや、アデスさんも先程の禍々しい
「『エクスなんとか』」
「あ——……杖を、取られて」
「私で青年を無力化です。これで恐らく『勝利条件を満たした』ことになるのでしょう」
だがそして判断のために詳細を聞いたのに却って分からぬことが増えては、苦い表情の晴れぬ間で恩師の扱う『魔』の力の実践が水の杖を弾き飛ばして『奪』った。
「……え? では何です? 『打たせて取る
「はい」
「『はい』ではないです。これでは申し訳ないですけど『無茶苦茶』だと言わざるを得ません」
「?」
「それに『危険で意味不明なら人も来ない訳だ』とも言えて……これはこれで、もしこのまま仮に行う人が増えて、間違っても世界的な人気を博したりしてしまえば——剰え巨大な利権と結び付いてルールの改正などが
「……なんと、そのような展望まで」
「……なので、この競技が『由来も根拠も怪しい危険な競技』のままでは——ハッキリ言って私でも、これ以上の協力を約束することは難しいです」
よって、ジトジトと湿気に満ちた呆れの眼差しでも一通りの行いを見た現時点での結論。
見知り聞き知った部分では各種の危険な妨害が許されるような『ふわっ』としたルールが沢山あって恐ろしく。
学術都市内なら何処の学舎に籍を置くかなどを問わず教育機関の垣根を越えても部員を集めるためには——現行のルールをよくよく『ソフト』に整備して見直す大前提。
「これを広めようとするのなら、多少なりとも安全面に配慮した規則整備……最低でも『道具の材質の変更』や『防具着用の義務化』などが行われない限りで認めるようなことは出来ません」
人を思う心で『助ける』と一口に言っても『やりたいようにやらせるだけ』が支援ではないから。
今回は『教育的指導が必要』と判断する場面で『手抜かりあってはならぬ』と厳しめ。
細まる碧眼で『ならば』と真剣に、何よりとしては本人の意を窺いつつで最善を目指す策の検討へ向かう。
「……いえ。もはや協力どうこうよりも『このルールでやれ』と言っている協会などがあれば一言も二言も、私からも物申さなければ気が済まないのですが——」
「あ、それでしたら……此れなるマジカルなベイスは『公式の協会』のような機関もない
「え……いいのですか?」
「はい。競技自体は昔から在るものですが、調べても特に公式の大会などが開かれている様子も御座いませんでしたので」
「……でしたら、公権力的にルールを制定する場所もないなら此方で『改善案』を考えて示すことも出来るようにはしたいのですが……本当に、宜しいのですか? 続く『伝統』などへの配慮なども?」
「それも、はい」
「……そう『すんなり』と進んでも、それはそれで不安になりますけど」
しかして、然るべき順を追って『意見書を提出する』など対処すべき課題が山積みと構えていた青年。
けれど、透かされる意気込みに寧ろの懸念を覚えては疑心で言う要確認の段階を尖る口で欠かすことも出来ずに。
「いえ。というのも、よく考えてみれば自分でも、この競技について
「し、知らない……?」
「お恥ずかしながら。実を言えば私も始めて一年未満の、謂わば『初心者』に等しく」
「……道理で。私も正直には発言の幾つかに『怪しい
「なので、まだ参考とした
「……"
「見るに『
「……なら、先ずはそれを読まないと——そうです。抑で他者に教えるには先に『やる側』が知ってないといけません。知らないそれだと色々が不味い」
だが、無茶苦茶の連続でたじろぐ青年でも根気よく聞き出した事情で『明らかな問題点』らしきも発見は出来た。
故には少しずつでも次に向かうべき『解決への筋道』も自ずと見えて来ただろう。
「だから、我々のする手伝いは先ずその『魔法でやる野球』についてを詳しく調べることであって……『部』として続くにせよ、何にせよ——明らかな危険は見過ごませんから、『勧誘どうこう』はその後でも構いませんね?」
「……はい。ちょうど一人では煮詰まっても涙していた所ですので、どうやら『競技の在るべき姿』でも知見のある方々に……此方からと是非に協力をお願いしたいと思います」
「……了解しました」
(……この真面目そうな人も、それ故か一人で突っ走ると色々な部分で危うい所があるみたいだから——いや)
(なんだか競技の方にこそ問題がありそうだから、せめてその『改善の兆しが見える行く末』を見守るまでは……乗りかかった船でも付き添わないと……!)
「では、調査からをもう暫く付き合うということで……その読み辛かった古文書とやらは何処に?」
「あ。でしたら、今のそれは大図書館の所蔵で貸し出しを——」
そうして、立てた
表で『周りに当たり散らしても仕方ないから』と、心で眉を顰めたままに。
助力を言い出した青年でおよそ凡ゆる古書にも精通しているだろう二柱を連れ、人に利用可能な参考となる資料を求めて魔法魔術学区一番の書庫へと向かう。
(いや本当に、『人を危険へ
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