『見えざる厄介なもの⑤』

『見えざる厄介なもの⑤』




「……"在野ざいや半神的存在はんしんてきそんざい"?」

「電撃を片手でいなして、また時に物柔ものやわらかでいて『隠形おんぎょうを欠かさぬ』のだから……ことは間違いないでしょう」




 忘れられた神殿での『器』をじゅくする試練は第一を越えて暗黒を追う青年を先頭に、中間には少年。

 また最後尾で並ぶ騎士二人で先を行く『謎めいた案内役』についての考察が密やか。




「よっては『無用な衝突を避けるべき』とも忘れず、実力をはかれぬ以上で我々も引き続き慎重の立ち回りを」

安全第一それは当然と分かっていますが……議会の一員として『普段から顔を知る半神めんめん』と比較して何か分かることもないのですか?」

「……発揮はっきの様を見て取れぬことには如何いかんとも。ひとの大きさでも百人力ひゃくにんりき当千とうせんが『半神あれなる者たち』でしょうから……言っていると私でも"底知れぬ力の差"を思って、恐ろしく」




 弟子騎士の方で『色濃い神秘』を間近に見るのは初めてに。

 けれど師匠たる評議会員の方では同所属の昔馴染みとの比較を思う。




「……"あの人"との?」

「ええ。本当に彼へは膂力りょりょくにて敵わぬで、幼少から『あやつは凄い』・『だのにどうして、お前は』どうのと周囲も比べて口煩く」

「……」

「故に『腕っぷしで敵わぬなら此方は文化的勝利だ』と過去には意気込み……けれど今に思えば『勝利』とはなんだ、『音楽が出来ればすぐれているのか』・『文章が書ければ偉いのか』 と——『護るべき』を大きく個人の恣意しいに依拠して"選別"しそうとなっては、なんとか面への傾倒も近く」

「……貴方にもそういった時期が?」

「そうなのですよ。若さ故にも逸って、まったく……いやぁ〜反省反省」

「しかし、こんな時に昔話とは。三十さんじゅうを越えて少し年寄り臭いのでは?」

「いえいえ。"こういった時にこそ"、師の言葉は印象的に教訓として脳裏に焼き付くのであって……それに年齢のこともいいのです、セノビちゃん。割と色々が気になる年齢だと自覚はアリもアリですから——」





『次の"問答もんどう"。これは暗黒わたしでも人の考えを見たい』





 二組の師弟が密に打ち合わせを済ます程なくには、広がりを見せ始めた通路から次なる試しの場へと一行が至る。




『よって、問いの内容自体に大きな変更はないものとします』

『……分かりました。では、そのように』




 其処は広間に"三つの鎌首"と"鋭い目付きを三対の六つ"で持つ『大蛇』の巨像を前とする場所。





「また碑文に続いて曰く——『次に深淵しんえんを覗いて暗黒あんこくに寄れ』」





 第二の試練の告示が振り向いて内髪の青を見せる青年から。




「それは……どういった意味合いでしょうか?」

「端的に言っては『質問』や『問い掛け』。此方から言い示したものへ、人の子で答えて頂ければ結構です」

「謂わば『知恵を試す』ものと。ならば"正答の可否"では『罰則』なども有りるのでしょうか?」

「いえ。そうしたものは特に考えていませんので御安心を。"答えるまでの制限時間"なども定めてはいませんから、どうぞ。萎縮いしゅくすることなく」




 しかし、薄く笑う案内役の口から緊張感の保たれる人へ言うのは"間違えても罰則のようなものはなし"。

 "制限時間もない"から『これも気楽に』との安堵させる補足。




「また此処で示される『かい正答せいとう』は、それでも何かの『絶対的な正しさ』や『正当性せいとうせい』自体を言いきるものでもありませんので……あくまで、"一つの考え"として参考までに」




 これから問われる参加者たちへ注意点も述べては、『蛇の身を持つ』とも言われる流水の化身でまさしくその表現を背負うようにして立つ姿。

 手招きで『漏電』への恐れがある少年の者は側と寄せて。




「即ち要は『頭を使わせる』、『考えてもらう』ことそれ自体に思索からの精神的な成熟を見出さんとするみたいです」

「……では、"単に言葉の掛け合い"と?」

「はい。まさにそのよう『意見交換』や正誤は二の次の『議論』の場とでも思い、その思うままを自由に発言して頂いて大丈夫です」

「……分かりました」

「"問いを詰める"ようなこともなく。ただ質問の内容が少し"意地の悪かったり"・"重くて難解"かもしれませんが……『偶にはそういうのも』と付き合って頂ければ幸いです」




「よっては数も少ない三つで済ます予定ですので、早速の『第一問』を——いきますよ?」




 斯くして恩師から『人をより生ける似姿ツタンカーデスに近付ける為の質問』を受け取っては、その太古に置かれた内容の封を唾を呑み込む者たちの前で切り開かん。





「第一の其れ——『しんに差別や迫害なき世界とは?』」





「「「……」」」





「一問目の出題は以上です」

「……いきなりが、"難問も難問"。仮に『皆で納得のいく解』が見出せれば、それこそような『大問題』ではありませんか?」

「……"?"」




 傾げる首が『どうでしょう?』と安易に助けを与えない様。

 黒子くろこの美神から『その調子』と親指を立てる指示も貰ってニコニコと、難問を言いのけても『超常の存在』らしく。




「……確かに、恥ずべきことに人の歴史では『そういったこと』も少なからずで見受けられます」




 一方、やはり人で応答の主軸となるのは本年で三十を越えて落ち着きも備えた騎士。




「——しかし、感情よりも『提示すべき』を考えるべき今で『差別』や『迫害』や、『なき』の定義が如何に難しくとも」

「……?」

「この手の『聞くからに難解な出題』は、意表を突いて存外に『単純なもの』であったりもするでしょうか」




 先ずは気で固く構えがちな状況を前に単純な思考へと動線を引いては、各種の経験も豊富な師から未だ若い有望の弟子サイ=ワンに発言を促すような目配せ。




「……冗談めいても盛んに言われるのを例とすれば——『人という愚かの全てを滅ぼすべし』のような?」

「ええ」

「なら、そもそもの"現象の成立する前提それ自体"をなくしてしまえば……破滅的で最悪でも、一応は『存在しない』の答えになるのかもしれません」

「しからば、此度で『人』に限らず。罰則がないならでも物は試しに答えてみせよ、弟子——いや、これも『念の為』ではやはりわたしから行きましょう」




 取っ掛かりとなる考えを引き出しては、それでも腕で若輩を遮るように一歩を進み出たカワイ=ガルが言う。





「答えます」

「どうぞ」

「他者の存在する以上で其処に『差』や『追う』・『追われる』という"者と者の関係"もまた存在するのだから——故には『他者という概念のない世界』」

「……」

「其れ謂わば『個しかいない世界』や『誰も存在しない世界』など」





 そして、蛇とも語られる神の御前にて論を聞き届けた者は。




「……どうでしょうか?」

「……うむ。その考えが『絶対に正しい』などとは、やはり口が裂けても言えませんが——けれどまさしく、"間違ってもいない"」




 見せる、深い頷き。




「細かな解説も要りませんね。殆ど人で言ってくれたように『関わり』の成立する前提がなければ『皆無』のそれも宜しく——類似の例としては神話にうたわれる『考える者の少ない原初』で、『果たして無害そのようであったのか』と"実在"も気になりますね〜」

「では、"合っているもの"と?」

「はい。次の問い掛けへ進むのには十分の答え。このような感じでサクサクと言ってみましょう」




『……このような感じで大丈夫でしょうか?』

『ええ。我が弟子は上手くやってくれている。ならば引き続きで『進入者を試す危険な罠』については任せてください』

『お願いします』




 つい先刻に神殿を預かった者で巨像にある『左の蛇』の瞳を先ずは一対と赤く。

 光らせてからには『一問目の解決』を、その重い質問内容に反した気安い美人の顔が伝えるのであった。





「ではの間を置かず、第二問」





「「「……」」」





「『五千兆ごせんちょうの不幸によって支えられるいちの幸福世界』と、『いちの不幸によって支えられる五千兆ごせんちょうの幸福世界』——『は?』」





 また休みなく続けて再びの難問を提示されても怯むことのないのが日頃より精神修養をも積む騎士団。




「……一問目の先例からして『提示された要件さえ満たせばいい』」

「……そうでしょうね」

「『方法』や『過程』についてを問われず、"屁理屈のような物言い"でも答えとして通るは……通る」




 掴んだ手応えに、回る頭。

 今度は少壮気鋭しょうそうきえいのサイ=ワンからを主導し、師から補足も交えて練り上げんとする答え。




「でも、サイ=ワン。二問目で打って変わって理詰めの答えというよりかは『個人の考え』を求められるようですよ」

「それならば、"二つの選択肢"を前にして基本的な答え方では『前者』か『後者』か……また択一でないなら『どちらでもある』と『どちらでもない』が考えられますが」

「……そうして仮に外しても罰則はなく、故に"総当たりで難なく解けるだろう設問"」

「……はい。けどそれではも過ぎる」

「……」

「果たしてそれでは『試すもの』として形骸化も甚だしいと思うのですか……本当に何か『うら』のようなものはないのでしょうか?」

「……私から正直に探ってみましょう」




 物騒な問いの内容を意識しては、一応で払える注意にぬかりなく振り。




「——此方からも質問があるのですが」

「はい。答えに直結しないものであれば、随時で受け付けています」

「では、聞かせて頂きますが……『解答で一度に発言をした者が次に答えられない』ということもありませんか?」

「はい。何度でも構わず。連続でも外して頂いて構いません」

「ならば、本当に『制限という制限も皆無』だと?」

「そうです。『当てて頂けるまで私も首を長くに待っています』と、それだけです」




 "なら"と見合う人の師弟で頷いて、一足ずつに適切な振る舞いを手繰り寄せていく騎士の反対側には蚊帳の外のカテキン。

 殆ど物言わぬ置き物となっている白髪の美少年は知識量で周囲の他者に劣るからか今回は大人しく、場を主導する成人たちの遣り取りを青年の横で眺めて待っていた。




「……あの」

「? どうしましたか?」

「思えば肝心の、『この場所を訪ねた私が何もしていない』よう気もするのですが……」

「見方によっては、確かにそうかもしれません」

「では、これで本当に……"目立ったことを何もしていなくとも試練の参加になっている"のでしょうか?」




 役なしの手持ち無沙汰では見上げた先の碧眼に尋ねて、再び柔らかな笑みと声音から事の是非についての返答を貰う。




「それも御心配なく。今回の試練は『団体』としての処理ですから、質問に対して一人でも分かる者がいれば問題はありません」

「でも、本当に何もしていなくて……難しい? こと? に対しても正直を言っては自分で、話していることが良く分からず」

「……」

「何か力になりたくてもなれず、これでは『"いない"のも同じ』と……少し、寂しく思ってしまいました」

「……大丈夫です」

「……?」

「人には誰しも知らないことがあれば、先の女装のように知っていることもあって……一人一人が出来ることで互いを助け合うのも『協調』の在り方ですから」

「……きょう、ちょう」

「何より『誰かの力になれれば』という貴方の思いは間違いなく立派ですし、裁量を任された立場としても、それはそれで評価に値する心意気だと思います」

「……では、"このままでも試練になっている"と?」

「はい。このままでも最後まで進めたら、ちゃんと『秘宝』についても『必要とする貴方へお渡しする』ことを約束します」

「……使者さま」





「——ならば、我々で話も纏まりましたので、第二の問いについてもお答えします」





 そうしては聞こえる大人の声に青年で折っていた膝を伸ばし、戻る臨時のお勤めに。




「承知しました。ならば再度に言って——」

「「……」」

「『五千兆ごせんちょうの不幸によって支えられるいちの幸福世界』と、『いちの不幸によって支えられる五千兆ごせんちょうの幸福世界』——『は?』」




「……滅ぶべきは——前者の、『五千兆ごせんちょうの不幸によって支えられるいちの幸福世界』」




 二問目に対する若い騎士の放った一回目——しかし、待てども青年で沈黙によってが明確な反応を示さず。




「……」

「……ならば、滅ぶべきは後者の『いちの不幸によって支えられる五千兆ごせんちょうの幸福世界』」

「……」




 二回目でも、認める色なし。




「……そうして二つの内の一つで"どちらでもない"なら、"正に選択肢のどちらでもない"——『滅ぶべきはその中にない』、では?」

「……」




 遂には三回を過ぎ、騎士で考えに残るものも一つとなって。





「……では、まさか」

「……」

「……『どちらも』——即ち『滅ぶべきは両方』……と?」





 サイ=ワン・セノービの言い当てる答えでは青の眼光が上下する。





「——"はい"」

「……」

「ここで滅ぶべきは『両方』となっております」

「……何故なにゆえでしょうか?」

「つきましては主より許しも得ていますので、簡単に碑文からの解説をば」




 適切な応答を聞き届けた身で翳す指輪から今度は右の蛇で一対を発光させ、訝しむカワイ=ガルへの対応が『暗黒の意』を柱で意識に受け取っての言葉。




「言って説くそれ——"必然として完全でない不完全にあり一穴いっけつは常に在り"、"またその隙を突かんとする働きも往々にして存在するということ"」




「「「……」」」




「不完全では皆を十分におぎなうことができませぬ。手の回らず、捨て置かれた不満のおりでは何れに『怒りの火』の付いて」


「『消えぬ炎』が燃える——『消してはならぬ』と怨嗟えんさの声がき上がる」


「例には『おに』に親しきや愛を踏藉とうせきされて『鬼を殺さん』と、『忍者』に焚焼ふんしょうされては『忍者を殺すべし』と」




『『……』』




「その連鎖が方々で繰り返されるのが怨念おんねんの生まれる余地。『皆を救えぬ不完全』で常に苦しみも健在となっては——"絶えぬ火種"に真の安息はなく」




 神殿遺跡の奥に向かう遠景では、再度に発見された長い降りの階段を暗黒重機で埋め立てる神より。

 その受け売りが、青年の口を借りて物語る許可も大神から人心に得てと紡がれる。





「よっては『誰も不幸とならぬ万象の完全なる幸福』を諦めたものに永遠とわの安寧や、繁栄がある筈もなし——『苦しみを置く容認があってはならぬ、滅ぶべし』と」


「即ちせんの問いでは『五千兆も一もの両方を含んだ全てを幸福で満たさん』として、『誰ぞの不幸を必要』と諦念ていねんで迎え入れてはなりませぬ。それこそは打破して越えねばならぬ『必要の悪』だ」


「故に"その悪を克服できぬ"なら、『苦しみを生産し続ける不完全たる』は何にせよ噴出する内外より滅ぶべくして滅び——『ならば少しでも多くを救えるより良きに道を譲るべき』であって」





「それでも、人で『社会』や『国家』の枠内に生きて『皆と生ける』ことを望むなら」


努努ゆめゆめで『皆の幸福』・『皆の範囲を拡大し続けて究極的には誰も切り捨ててはならぬ』と——『の在り処』を忘れることなかれ」





「……先人たちよりの忠告、我ら騎士で胸に刻みます」

「……同じく」





『……そのつもりは然程になかったのですが、結果として"説教"のようになってしまいました』

『アデスさん……!』

『ごめんなさいね』

『もうっ—— (っ! "迂回を促す交通整理の人"みたいにお辞儀をする分身アデスさんも可愛い……!)』





 そのよう『王』の言葉で説いては一時に重苦しく沈んだ空気も咳払いから青年の爽やかな笑顔で持ち直そう。

 "次の場に進む扉が開くか"の三つ目の質問、流れを引き摺らぬ為でも今の第二から関連して矢継ぎ早に。




「こ、こほん——そ、そしたら、実を言って今の語りは『次なる質問への導線』でもあったのです」

「……次なるというと、三つあるものの"最後"?」

「はい。そうして勿体ぶらずの三つ目が——『ならば、完全なる幸福とは何か?』という……『それを一緒に考えてみよう』という、ま、前向きで問いを終えようものなのです!」




 目に見える物理的にも青の光で一層と明るくする。




「これも想像のし難い……明確に考えを見出せれば、またそれこそ『皆の不幸がき消える』ような『だい偉大いだい問題もんだい』」

「……どう思いますでしょうか?」




「……ここにきては『誰もいない』、『世界が存在しない』のでは達成も出来ない題目でしょうから」

「誰なくしては幸福を感じられる者もなく、要は『其処に幸せを感じられる誰か』のいて……言われたような理想の『その全てを満たす』ような、"奇跡も奇跡"——『最も困難な方法』は我ら人でも想像だに出来ない『魔法』のような未知が必要となるのでしょうか?」





「……主よりの手掛かりでは、今し方に私の口で語ったことをつまんで要約するに——『血を流すようなこともなく』、『苦痛の一つ、誰かの不幸一つさえ必要と容認してはならない』とのことです」





 見合った騎士では『"完全なる幸福"とは少なくとも今に挙げられたそれらの条件を満たすもの?』とが熟考。




「……本当に知恵の全てを絞られるような投げ掛けですね」

「……いよいよ以って『試練』らしく感じられてきました」




 だがすると、再度に警戒から裏を読もうとして考え込む騎士たちの手前。




「——……果たして、"そのようなものが本当にある"のでしょうか?」




 その見慣れぬ外部の人々の奮闘を真似して"決する意が口を開く者"もあり。




「……どうやら、これまでの皆様の話を聞く限り、本当に狭い世界で生きてきた自分には想像も出来ないことが多々あるようでして」

「……カテキンちゃ——さん?」

「あ——すみません。騎士? の方々の考えを邪魔してしまい、ただ『何か助けにはなれないか』と思ったことを口にしただけなのですが……迷惑でしたでしょうか?」

「……いえ。そろそろと装備も着込む我々で窮屈な地下に考えも煮詰まっては『気分転換も頃合いか』と思っていた矢先ですので……そうですね。そのままを続けて『貴方の思ったこと』もお聞かせ願えますと我々で口や気を休められるでしょうか」




 よってはカワイ=ガルで自由な発言を促してから。

 少年も厚意に与るよう頷き、その清涼なる音へ場に姿を現す皆の傾ける耳。




「で、では……再び失礼をして」




「「「……」」」




「私は今日『村の外にも色々な人がいる』と知って、けれど今の問題の話に『みんな』と言うことは『貴方たちの全ても幸せにする方法』なんて『あるのだろうか」と疑問に思ってしまい……」




 そうして、切れ目のない夏の暑さに揺れる風鈴のような玉の声で——次の言葉。





「"よく知らぬ人にも喜んでもらえる"、そんなことは力を暴れさせてしまう自分にとっては夢のまた夢の……よもや、やっぱり『』と思えてしまうほどに、遠く——」





「あ——"扉が開いた音"です」





 なんと、少年から漏れ出た声が——正解へ。

 "僅かにも何か言えないか"との踏み出した口振りに一つの解が宿る。





「——……え?」





「……まさか今の、彼の言葉の"どの辺り"が?」

「『存在しないのではないか』との素直な疑問が"未知に臨む姿勢"として上々に——そもの質問自体が『何か』とあくまで『個人の考え』を伺うものでもあったので、真実を言えば『真面目に考えて口語と世に発出してくれた』だけでも暫くしてから扉を開く予定だったのです」

「……な、なんと」





 実際として点灯しきった三つの蛇の視線も赤く、その巨像の真下で先まではなかった通行可能の道が開けている。





「え、え——よ、宜しいのですか?」

「はい。判定の任を預かる私が『良き』と思ったのですから、特に問題はありません」

「え、えぇ……」

「何よりは『己の無知を知らねば知ろうとすることさえ不可能に近いから』と、暗中でも希望の先へ進むのに重要な一歩を言及してくれましたから——……いいですよね、『皆が幸福になれる道』のあれば」

「それは……おそらく、はい」

「でも先ずは、それが皆に関わる以上『一人では到底に見つけられぬだろう』と自認で始めねばならぬのです」

「……?」

「兎角……"い子"でありました」

「……"!"」





「考えが及ばぬ時は『及ばぬ』と正直に、さすれば分からないことを分かるようにも自他で次へと進み出せますから」





 ・・・





 そうして三つ全て『質問』の段階を終えた後では、合わせる目線に魔性譲りの微笑みが褒めて。

 人で思わずの安堵に中途で少年の腹が鳴れば『シュバっと』あんぱんを持っていたことにしたりでの休憩。

 その提案に騎士も同意しては宛ら『遠足』めいての妙な一団の息抜きがそれでも気を緩ませられる時間。




『……女神アデスが頑張ってくれていますね』

『……ですね。後で御礼に甘味を差し上げないと』




 眺める先で続く第三の『闇堕やみおちした者でないと通れない通路』は"気の重さ"を計る物。

 真実として『周囲への配慮』や『良心の呵責かしゃく』を一定に振り切った者に出せる尋常ならざる出力判定を——"既にの始源たる神"。

 無敵の進軍が網目状に張られた光線レーザーや『四つと言ったからとて四つだと思ったか、馬鹿め』の『つきあわないと脱出の叶わぬ部屋』も無言の一瞥いちべつと踏み潰して。




『——進めるぞ。我が弟子』

『了解です。お疲れ様でもあります』

『なんの、これしき』




 定番の『転がって迫る丸い巨石』だって身一つで粉砕だ。

 それら各種の罠ごと『ズンズン』踏みならして後続が歩き易いようにも、針のむしろも容易く突破の老少女が頼もしく。





「では、第三の試練も面倒になったことですので——次こそが『最後の試練』へと向かいましょう」





 よって残るはの『第四の最終試練』だけに流れの神で人を導かん。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る