『見えざる厄介なもの③』
『見えざる厄介なもの③』
「……?」
石壁の囲む暗所を、指からの赤い稲妻が照らして——そう。
その使い手たる『カテキン・ワタリローカー』は
「……此処も、行き止まり?」
そうだ。
一目では『美少年と形容するよりかの美少女』が、少年。
同時には『外の一般を知らぬ』で本人が気付いていなくとも、"身体的な成育はその時点で止まり"を見せ、即ち『
「……"少年"?」
「少年。"
「……その手の話も聞いたことはありますけど……実際に見るのは初めてです」
「そうして、まさか"
地下を行った周囲では"全身を蓑に覆う巨大の女神像"が立ち並ぶ神殿の一地点。
人を追う女神たちも間もなく進んだ先の行き止まりで右往左往する"白い少年"を捕捉し、その『探していた人』と思しきを横目に陰よりが秘されての会話を行う。
「……イディアさん? 何ですか、それは?」
「……何と言いましょうか。私で過去にも見て、端的には『女神アデスに似ている』と言ったような——」
「『ツタンカーデス』、『トゥト・アンク・アデス』——それは、"アデス
問われて詰まる美の女神からを引き継いでは、真正に女神のアデスよりの言葉が説く。
「この不規則に発露する
「『年齢』であったり『能力の覚醒』などを
知恵袋の神で語らぬ真実としては『迫われる』だったり『神聖視』で——即ち『自由を失う役』を"当て嵌められる者たち"とを伏せ、単に青年の疑問に対して眼前の事象についてを説かん。
「! アデスさん」
「故に似姿。
「あの、
「"神聖の白"と、"躍動する血流が得てして生命を表す赤"。それらは往々にして
「
「精製に携わる職や者たちで火に寄って赤く変形が『
慎ましやかな胸に抑えるような手を遣り。
億を優に超える老婆から、一万にも満たない若者へ。
「また兎角、今では『神の代理のような扱いを受け易い形質』と覚えておけば良いか」
「時代が降っては神聖視の意味も形骸化し、女神イディアが見て知る一部は単なる大規模の……『
「"審査会"?」
「いわゆる『コンテスト』でしょうか。私も"神事に際して女神の代理を選ぶ会"で、過去に何度か他者の推薦で舞台上に上がったことなどもあります」
「え……それも、凄いことではありませんか?」
「美の女神で人からの見目が良く、"白だったり赤でもある"からだろう」
美神のイディアでこうしている今も変色を続ける髪に赤や白の色彩は見出される。
「私は基本的に観客席や審査の
「さ、流石です(?)」
「いえ。それでもいつかは『勝手に祀られる』ようでもひどく面倒に思い、よっては参加の案内を無視して一言も言わずに場所を後にする過去だってありましたから……必ずしも立派などという訳では」
(……イディアさんも中々、
「けれど、まぁ……詰まる所で『女性』にあるだけでも形式は『原初の女神』に端を発して"広義の似姿"であるから、今で『有り触れた類似』をそう気にする必要もない」
「他に目立つ所では『
「では、つまり"あの少年"も——"その流れに連なる"……?」
「ああ」
「……(アデスさんの、似姿)」
そうして、説明にも一段落の頃には青年で語られた当該の人物が気にかかり、覗き見る先で言及の通りの色味も似て、また背丈も殆ど同じか。
大神ならば様々の姿を有するのが基本であって一概には言えずとも、少なくとも『少女』としてのアデスに酷似した装いも白肌に映える黒色。
目に見える差異という差異は少年の『目に星が宿っていない』ことや『下半身の衣服』ぐらいのもの——女神はふわりと広がる筒状で、人は短く履き物に二足を通すのみ。
故には、見える膝小僧。
その緩やかな角度から脚を揃えて折り曲げる座姿は、先までの暫くを壁際で奮闘していた様子。
しかし、彼で見上げる程の高さの平面に『扉』のような風の通る隙間も在るには在ったけど、けれどもで押しても『うんともすんとも』にへたり込む膝が骨張っておらずに丸っこい。
(……でも、一人で大丈夫かな)
「……どうしよう」
(……?)
「"
ここまでの少年では『女性の親の死に目に残された遺言』や『可愛い子を一人旅に送り出す風習』などで既に旅へ出る理由もあり、満面の笑みで皆は見送ってくれていた。
そうしては聞いた伝承によって同地までの距離を然程に迷わず。
それでも『以後は戻ってならぬ』ともの村長からの通達で『一人暮らしを始めるとはこのような門出があるのだろう』と、晴れの日に臨んだ前向きの心は僅かの不安にも悲嘆の色は薄く。
「……気持ちが熱くなった時に出てしまう、"
続けて漏らす独り言には儚くの思い。
音の源たる喉に隆起はなく、声質で太い印象も皆無の
「——いや。やっぱり先ずは教えられた此処で力をどうにかしないと……何処の誰にも厄介にはなれない」
(…………)
懐から取り出して
「……それなら『力に迷う』とは……"
「違いないかと」
「なら、その道の一つでも示してあげれば……『あげる』と言うのも何ですけど」
「……」
「兎に角、こんな所に一人でも心配なので自分が行こうと思います」
その年少で僅かの先も見え難い暗闇。
模索に迷う様を案じては、進んで接触を名乗り出たのが青年。
「……? しかし、我が友。基本として対人は私の方で——」
「"女神イディア"」
「——……"はい"」
(……?)
それ、まさか。
少年とはいえ『見目の良い男性』と『美しい女神の友』の"親しくする展開"に『何か取られてしまう』と嫉妬に、危ぶみでもしたのか——"いじらしく、可愛い奴め"。
『それでも一つ言わせてもらうなら、"御友神は貴方の所有物ではない"のですよ』
(……な、何かバレてる。いや、やっぱり相手が長命で博識なら、こういった感情の働きも『隠した所で』先例の分析から簡単に見透かされて——)
『そうですよ』
聡明な女神たちでは早々に意気込む青年の裏を察し、口数も少なく。
それでも暖かく微笑んで、申し出に対しても無言の承認を返してくれる。
「しかしそれでも、"我が友の嫉妬"。
「……」
「美の女神で気になります。宜しければ後で、お聞かせ頂いても?」
「……はい」
しからば、
今は頭巾を被り直す美の彼女も『
「と、とにかく! そうしたら自分が前に出ますので、アデスさんとイディアさんにはその補助をお願いしたいのですけど——」
「「お任せを」」
恩師にして現地に祀られた神は『仕掛けの変更』や『細工の実行部隊』として、女神らでの迷う人の子への介入が此処に本格開始と相成る。
「……有難うございます。そうとなれば、基本の手順を『
・・・
『——それでは、行きますよ?』
『『——』』
その示し合わせた後の青年では暗所に照明も兼ねる薄い青の光を内髪などに纏って、『遺跡の案内役』として神秘的に。
「……? 何か、壁に文字のような……暗くて、よく——」
「"
「——"!!?"」
余計に怖がらせないようには
形の祖たる神より直伝の『愉快な女』の
「な——」
「その扉、電熱の力では
「だ、誰だか分かりませんけど、
「心配してくれるな。所で貴方は案じる自身の力を——それと関連して『電気を通す物』についてをご存知なのですか?」
「っ"! 危な——」
「それは流れを導く『自由な電子』がどれだけ在るかに基づいて——なんです? 『惑乱の中で情報の波を浴びせられても困る』?」
「——あぶ……な……い……?」
「それもそうですけれど、これはきっと貴方にとって重要なことであって……しかして口で説いても難しいなら実演に幾つかを示すとして——今は、"こう"とだけ」
「"大丈夫"。
少年では突然の登場に驚いたのだろう。
情動に応じて暴れる力を警告して、それでも青の輝きは止まらぬ電撃にも『大丈夫』と笑顔で赤を浴びながら。
「な、な——だ、大丈夫……なのですか……??」
「勿論。貴方の前に姿を顕すにあたり、先ずはその無事についてを説明しようとしたのですが……言ったよう、それも後に」
「あ、"貴方"は……一体……?」
「おね——おに——
「おね、おに……使者?」
(いま自然と『お姉さん』の方から口に出掛けた)
「故に神に守られて実体も怪しければ、我が神秘の前で貴方の力も
「え——え??」
「……つまり、『電撃を受けても特に問題はない』ということです」
遠目では何か既に始める作業で文字の刻まれた石板を
口とする台詞は側近くで耳元に囁いてくれるイディアの監修も受けて人に伝えるものとする。
「そうして、失礼ながらも先の独白を耳にしましたが……人の子の貴方で、何やらこの古き神聖なる場所へ『求めるもの』があって来たようですね?」
「——ぁ」
「……それを教えて頂ければ、『管理者』たる私でも何か力になれるかもしれません」
「え、あ——"此処"に来れば、『力を制御することが出来る』と聞いて」
「成る程」
時折に芝居がかった口調から『相手の理解も助けたい』と青年の
警戒を解くよう話を聞けば、やはり白黒の少年で『伝承を辿って同地に力を制御する物を求めに来た』とのこと。
「ならば確かに、その制御を可能とする物——謂わばの『
「! あ、あるのですか……?」
「ええ。ですが、仮に"
「……?」
「物を与えるべきか、否か。その判断にも『問うこと』が必要なのです」
「……でしたら、"特には何も"……"決まってはいません"」
「……そうですか」
だが、問うたその後で閉鎖的の村から外へ飛び出た年少に展望はなく。
"戻る場所もない天涯孤独"を本人では特に気掛かりとしない口振り。
「……それなら
「……」
「我が主も『構わぬ』と言っているのですが……」
「……?」
『……でも、厚かましい、余計かもですけど不快にならない範囲で『筋道があること』は示しておきたいので——やはり、ここからも予定通りにお願いします』
『『了解』』
故には『ただ力を抑え込んだだけ』でも『心身で現実に理不尽と流される状況』は変わらぬから。
この後の嫌でも続く将来に何の展望もない者へ『力の持つ可能性』を示し、『僅かとも心を前に向けてやることはできないか』と遺跡の機構に付き添う予定。
「……『
「……そ、そんな」
「『解き放つ』のも、逆で『抑え込む』のも——"
「では……自分で、どうすれば?」
「己が真に有力へ相応しきことを『試練』によって示すのです。力があってもそれを
「それを示せれば、私に秘宝を……?」
「管理を預かる者として、『与えてやってもいい』とする」
視線で立てる意の確認へは、尋ねられた少年で殆どの考える間を置かず。
「……分かりました」
「……随分と落ち着いて、物分かりもいいのですね」
「……? 『笑い掛けてくれる人』は皆が優しくしてくれます。驚いたとはいえ貴方でもそうなのですから、ご厚意を断る理由などありません」
「……」
「それでしたら早速、"私の臨むべき試練"とは——」
ならば、初対面の相手へも無警戒の極まりない態度に深まる憂いは一層に。
しかし、大神のアデスでも周囲の危険のない改変には少々と手こずる事実で、因りては既に神殿へ備え付けられた『
「……どういう状況ですか?」
「分かりません。分かりませんけど……私から話を切り出してみますから、セノビちゃんは背後の警戒を」
「——」
青年と少年で話も纏まりかけた頃には——神に横を追い抜かれていた騎士団も登場。
「——"護教の騎士"か。到来は予見していました」
「…………貴方は?」
「我が主の目と耳は如何な場所へも届き、貴方らが今し方に飴の菓子を楽しんでいたことまで把握している——謂わば、『同地を預かる者』なり」
「……」
所属を挙げられて進み出たのは高位の騎士たるカワイ=ガル。
一触即発とまでを言わずとも雰囲気に剣呑を覚える騎士で『目当ての人物』と『謎の神秘的存在』を前にしては光る盾を常に会話の相手へ向け、構えを崩さず。
その警戒を知る青年でも武器のないことを"開く掌"で示し、一先ずは争いを望まぬ両者で"穏便"の意向が伝えられる。
「そうしては、これから私とこの少年で遺跡の試練に向かう所だったのですが……騎士たちでは
「……」
「敵意がないことを示すならば、
「……我ら騎士の『カワイ=ガル』と『サイ=ワン』は『
「……そうして?」
「……またその者は過去の騎士団内の派閥争いで大きな混乱を齎した『
そうして先刻の動向を見透かしていた事実を並べては、"嘘を吐いても仕方ない"ことを圧で暗示に。
よって警戒を維持させたまま率直で聞いてみるに騎士団では『預言の子』を探しに、また願わくば『引き込む』為で都市から派遣されて来ているとのこと。
『……ふむ? 『
『……"
『そうですね。より重要なのが私。
『……』
『調査の対象として話に上がっている以上、それは私と違う『暗黒』の意でしょうか。その"恐れを抱かせる暗い印象"と関連して『忌避されがちな概念』を指すのだろう』
「……では、"騎士の中で危ぶまれた力"。"確保"してはどのように?」
「"
しては、腹を探って緊張の走る場面も川水の女神で円滑に。
更なる人の現れ、また"自身の追われる事実"を知った少年で止め難く不安に漏れる電撃——自由の電子など殆どに持ち合わせぬ"超純水"が片手にて受け止め、無害に抑えつつが服の暗黒で消化。
もう片方の手では『静かにしていて大丈夫』と顔の前に立てる人差し指で場を預かり、騎士団の『スカウト』の意向も誘われた当事者の手前で明確なものとしてゆく。
「意向として、ただ過去に起きた内乱で苦い記憶を非難すればよいというものでもなく……闇に語られる『死の法』が永遠を無き物として恐怖に縛り、また『安らかな眠り』によって"一定の秩序形成"に役立っていることも事実であるからとして」
「……」
「だからには大別される『光』と『闇』で何方か一方を完全に廃そうとしては
「……」
「故には議論で会う数を集めた『議会制』による意思決定。今では『闇や暗黒についてを知る者』、『それらを学んでいる者』さえも取り込んで、『異なる者たちの落とし所』を社会にて探っている次第であり——"その理想を目指す試み"を我らで『護りたい』のです」
盾を持つ人の言う内容の要約では『今に力の制御に悩む少年がその使い方を誤って他者を害してしまわぬよう』、『その有事にいざとなれば多くを護れるように囲わん』としている。
それが故にも騎士としての力や立場のある者で出張っている。
「では、『騎士団に身を置けばこの少年も安全』と?」
「僭越ながら『今より』と、そのように」
「……」
「"実際として手を焼いているもの"も調査と研究によっては『平穏の最中に取り置くことを目指してみせる』と約束いたします」
「……事の
「はい。我らの
『……どう思いますか?』
『言って示したように嘘の波長はなく。事実として都市には人のする非道な実験の記録も、その摘発されていない事例も大神の目で映らず』
『……』
『"最低限以上の
『……イディアさんでは、どうです?』
『私も千年を超えて以前から騎士団を見てきた神として、"目立つ特殊な能力を持つ者"は『騎士団に身を置く』ことが最も角の立たない選択だと考えます』
『……でしたら、然るべき後に騎士団の人たちへ任せるのが得策でしょうか?』
『はい。優秀な指導者も多くいて、我らに示せるものとしては"最善に近い"かと』
女神たちから聞いた助言の後では青年も『騎士団なら半神的存在の育成経験があって適任』と思い。
嘘偽りなく話す様には騎士団でも真に少年を含む人々を思っての行動と知り——静かな合議の結果として女神たちで、後から来た此方の善良の民にも"協力"の意を固めん。
「……ならば、盾で身を護れる人のいて、しかし流石にこの電撃を受け続けるのは既に有力な騎士であっても大変でしょうから」
「……」
「"勧誘"を受け入れるにしても断るにしても、此処で早くに制御をできた方が皆にとっての一番なのではありませんか?」
「それは、そうなのですが……貴方に何か、当てがあるのですか?」
「はい。皆でこの先は神殿に設けられた試練の場に——『力の
「力の……塗り固まる」
「私でも錆び付いた土地の機能を活用して、主神に成果を伝えねばならず」
「……」
「勿論、警戒は続けて頂いて構いません」
「暗がりで見張りの目は多いほど良く」
「原則として『二人一組で進む』ものですから……先んじて訪れた少年には電撃を物ともしない
「……使者の貴方が、私と?」
「宜しくお願いしますね」
「は、はい」
「お名前は?」
「か、カテキン。ワタリローカーの」
「では、カテキンさん——大丈夫です。踏むべき試練の手順は『四つ』と少なく、そのどれも極々単純なものであるからして大きな心配も無用です」
見返って言う青年では指輪を付けた右手で壁を叩き、すると間もなくに多大な重さも音を立てて左右へと移動。
その『場の管理者』としての示される"神威"には人々で今一度に息を呑んで慎重の歩みが地下の奥地へと進みを見せる。
「何よりは、私も己の神たる古き女神のエクシズに誓って——"久々の客人たる皆々の安全"を保証します」
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