『見えざる厄介なもの②』

『見えざる厄介なもの②』




「——さいです。『神よりの宣言』があった今でも、今だからこそでも民の安寧の為に力を尽くさん〜♪」

「……」

「でないと私事わたくしごととして、空気的に楽しく『ギャル』もやりづらいですし」

「……」

「安定の中で花開はなひらくものも多々ありますし……その"可能性"? "多様性"? 今回でも確保できれば実利的に使える札が多くて良くな〜い? ——ですしおすしの勧誘活動スカウティング

「さいですね」

「実例では若くして俊英しゅんえいのセノビちゃんでも『過去に絶滅したと思われる植物から実は難病の特効薬が生成できる』と明らかにしたことですし……だからには『色々な要素を取り置こう』が現状のグラウピア。その護る我ら騎士団」

「はい」

「"曰く付きの人材"についても引き入れるかは兎も角に、先ずは周囲と当事者の安全性を確かめ、可能な限りで"存続"の道を探らねば」

「『教えよう』というのは分かってますから、警戒さぎょうの手はめないでくださいよ」

「は〜い」




 遺跡の入り口周辺で身を屈めたり、朽ちた石壁を撫でるなどして人が安全を確かめる。




「……あれなる二名。評議会よりのめいを受けてうわさの地を訪れた"二人組の騎士"だろう」

「「……」」

大神たいしんで騎士団のおおやけひらかれた文書を見るに、所属を表す名簿へも記載がある」




 その地固めを神秘で眺める機体の内部。

 筆頭女神のアデスが配下の二者へと現状を説く。




「堅苦しいのが苦手でも『はな』の騎士である『カワイ=ガル・ジャン』と、彼女に師事する真面目が『新芽しんめ」の騎士たる『サイ=ワン・セノービ』」


「師弟関係にある二人の騎士はの出身地からを追ってこの地に向かい、今に先回りをしていた我々の速度に追い付かれたのだ」




 これまでの道中で食料の移動販売が許された時には『厨房ちゅうぼう』としても開放される空間に椅子を立てて、腰を下ろした三女神での協議。




「しかも、取り分けに前者は"最高評議会の一員"」


「実績として『ずみ文化の再評価』や『交響音楽団の立ち上げ』などもある、謂わば"文化的大物ぶんかてきおおもの"のようですが」




「では……『ジャン』の氏族しぞく?」

「……"じゃん"?」

「『かみ』すなわち『ジン』に縁ある者たちとして古くから都市に名は残り……見れば美神わたしの記憶でも過去に面影が、あるような——」




 美の女神が注意深くに覗き、外を映し撮る高解像度の画面。

 師の立場であるジャン家のカワイ=ガルが『セノビちゃん』と呼んだ先の後輩に棒付きで渦を巻くあめを分け与え、二人で甘味を楽しむ休憩としている様。




「——首元の黒子ほくろがそっくりです。確か十五年ほど前に私で幼少の黒髪時代に見覚えのあって……めたのでしょうか?」

めたのでしょう。ならば、その彼女らで我々と『追う者』はか」




 そして光神グラウよりの警告を胸に『人探し』へと来たれり女神たち。

 同様に『人を探す任務』の騎士たちが突入前で念入りに周囲を調べる『遺跡』とは如何様な物であるのか。




「それでしたら、この先……"この地下"に続く遺跡の中に『たずびと』が?」

「うむ。我にて人型ひとがたの反応はある。足跡そくせきや息遣いからして『歳若い少年しょうねん』だろう」

「ではつまり、"その少年"とやらが『ちからに悩む人』で、『何か助けを必要としている』と……それなら、早く——」

「そうくな、青年。一先ずに人体で有害なきりなども満ちてはいないから、残りは軽く『土地柄とちがらの昔話』でも聞いておくのです」

「? は、はい」




 青年で『困る者いて——ならば』と。

 早速と中に進まんとした若い意気は、けれどで最たる問題に成り得る"曰く付きな現地"の説明で老師よりの間を置かれる。




「我が青年で遺跡に……明かして正確には『神殿』で"石像の残骸"は見えますでしょうか?」

「石像……崩れた、あの……"へび"のような?」

「はい。補足しては今に経年劣化で崩れて三つでも、元は『多頭たとうの蛇』を象った石像が『女神エクシズ』の表象」

「……?」

「信仰の対象は『地下深く冥界の神』の"異名"。つまり時を遡って過去の同地で呼ばれていた"私の別名"のようなものです」




 雨中の外で過去には四角錐を交差で囲んでいた『多重の』の構造、今となっては朽ち果て。

 当時の人々の抱いていたのだろう"心の働き"も草葉のつゆと相成って地に染み入る静けさ。




「……アデスさんは、"エクシズさん"でもあった?」

「ええ。言い慣れぬ音の心地よく。他には比喩ひゆでも言って『地下世界の王』や『終点に待つ者』、『先のない女神』に『大地を支える平らな者』など……など」




 古代こだい上代じょうだいか、分からぬが。

 その語られる内容の時代から地続きに立つ古い神性で古事ふることを語る。




「それら『人智の及ばぬ未知の側面』を多く有しては、表す文字にも蛇の長い体が幾重にもあるようで」


「『Xえっくす』『Yわい』『Zぜっと』——続ける音を簡略と統合によってが『エクシズ』」




「間もなく我らと人の入り込む遺跡が暗黒の別名たる『女神エクシズの神殿』であるのだ」




 そのアデスから廃墟に摩耗まもうした古代文字を復元に読んでの解説も、そこそこに。

 不意に伸びてくる触手で指差す景色には人の姿が入り口の上に布で簡易的な雨除けを立て、"仄かに光を帯びる盾を構えては地下に進出しようとする様"のあり。




「また正直に言って同地。過去には『神へを捧げていた祭壇さいだん』のような場所でもありますので……人の居て気分のいいものでもないでしょう」




 どうやら騎士団も周囲の警戒を終えては中への突入を決めたよう。

 故には、鍛えられていてもその身に万一の危険がないようにも『女神じぶんたちで追わねば』と。




「ええ。しからば"青年にとっても後味の悪い結果"とならぬよう……我々で、人と人との状況を見つつも『気安くの喜劇的』に——接触の機会を『平穏無事』に終わらせん」




 下に向かう長めの階段は目を瞑った青年を女神で背負いて、進む。



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