『見えざる厄介なもの①』

『見えざる厄介なもの①』




 これまでの競覇拾信祭きょうはじゅうしんさい

 チーム『ダーク・X・フォース』の構成員が筆頭の暗黒大神アデスに、美の女神イディアに、川水の青年がルティス。

 彼女ら三柱の活動実績としては『食料の供給』を軸に『失せ物探し』ともいった"手助けの道筋が明確なもの"で『正義の押し付け』にならぬよう努めては久しく。

 また『旱魃かんばつへの降雨こうう』や『火山より噴火した流出物の宇宙放逐』、『重なってしまった聖地の整理』や『認識をむしばむ春画の破棄』などなどを経て——開始からのおよ一月ひとつき

 主に組を取り仕切る大神の力はその他にも細々こまごまとした難局を"暗に処理"し、祝祭の期間が三分の一を過ぎても着々と溜められる信仰。

 よって重ねる堅実で"ゆとり"ある時には『己の在り方』や『世界との向き合い方』へ真剣に悩む青年の息抜きも兼ねて麗しい女神たちと『銃撃の遊び』にも興じ。

 その後で『"母を知りたい"と押し掛けた地母神』に対しては料理などで優しく『共助きょうじょ』の一案を示し、宛ら"年若としわかの青年"こそが『成育を助ける親』のよう、温和の振る舞いで老幼ろうようの性質を兼ね備えた星の愛を落ち着け——異なる組の女神たちとの別れ際に、暫くの行動を共にしていた銀狼の女神グラウよりの言葉。




膝下しっかの都市にて何やら"困り事"のあるようで——




 さすれば、"未来さきを読むことにも長けた女神の危惧きぐ"へと適従てきじゅうに。

 一旦は大都市グラウピアへ立ち寄った未知ダークフォースの三柱が、食料や医療の物資を増やして関係各者の認識にも『それらの物が有ること』を挟みつつの行軍こうぐん




 ————————————————




「——『神霊が世に顕出けんしゅつした』というのも、"各地で観測された異常な現象"によっては事実に近いのでしょう」

「……」

「因りては少なくも『何かが起こっている』と想定して、けれど『神話に語られる通り』なら人間われらが出くわしても到底で手に負えない」

「……本当なのでしょうか?」

「……分かりませんが、今は『任務』を優先せねば」




 そうしての今は『古い女神』の名が残る某所。

 樹海の奥を行った現地では不自然に足下へ覗いた『地下に続く階段』を前に、言葉を交わして話すのは背丈からして茶髪の成人女性と赤褐色は少女だろうか。




「確かに『信徒』の個人としては可能なら我らの主神しゅしんに謝意を捧げることが重大な好機光栄であって……けれど、今の貴方と私の負う任ではないから」

「……」

「議会でも判断に迷う真偽は兎も角に、こうして"皆が浮き足立つ時"にこそが重要となるのです」




 その語る主導は『師』であって、傾聴するのは『弟子』であってが二人一組の




「……我ら、『護教ごきょうの騎士』」

「ええ。即ち『いつ』の『どこ』で『どの様』に『誰』を『護る』のか——何よりはそもそもの『とは何か』の"意義"を考え続けねば」

「……はい」

「そして時に『"かみ"と名乗る者』がいて、"それが民衆に牙を剥く"ようなら——我らは例え相手が己の信奉する神でも"退いてはならぬ時がある"」

「……"やいばにて歯向はむかわず、けれどたていて信念を貫く"」

「……そうですよ。セノビちゃん。直ぐに引用が出来るとは良き良きに教義を読み込んでいるようで」

「……そう貴方でも教えを忘れずに語る所は『やはり"尊敬に値する騎士"なのだ』と感心するのですが」

「……?」

何時いつにも増して真剣な貴方に褒められると……」

「……褒められると?」

「……調子が、狂います」

「あらら、セノビちゃん。でしたら私で何時もの調子を——"褒められて照れるセノビちゃん"! "キャワぁ〜イ〜〜イ"!!」

「言ったそばから……作業中の今は揺らさないでくださいよ」




 茂るくさ葉陰はかげにて何やらひそひそと背中に盾を持つ二人の騎士。

 グラウピアに籍を置く『護教騎士団ごきょうきしだん』が遠方に乗り出してみつに行う調査は、"探す対象"の気の残り香を頼りに。

 至るのは古い信仰の跡地で発見を成した"遺跡"と思しきを眼前に迫っていた。




「メンゴメンゴ。勿論に揺らさないから許して——それで、分析の方は何系なにけいで?」

「……"ほとばしる気が赤い電光でんこう"の如く。『メガミ=クロリアン』の反応も甚だしくは——かと」

「りょ」




 そうして『セノビ』と呼ばれる弟子の方では同地の遺跡入り口付近で拾得しゅうとくした『白い毛髪』を特殊な液体に満ちた容器へと浸し、その"発光してつぶの拡散する反応"を今に確認済み。

 その弾ける様子から二者の発見する"極めて強力な力の一要素"こそは、彼女ら『人間』という種が『母なる大地の神』より受け継ぐと言われる"権能"の要素——この時には調べる対象で"赤い稲妻の雷属性かみなりぞくせい"と表出。





「御苦労っす。そして恐らくは"電気のようなを扱う"……"白髪はくはつ"ですね」

「——」

「僅かとはいえ泥濘ぬかるみに見えた足跡あしあとからも我らの求める『かれ』か・『彼女かのじょ』は、"この先"へと進んだようですし……次に周囲で不審な点がないかを調べてから、"問題の地下"を探るとしませう」

「了解」





 雨もまばらな灰色の下。

 鬱蒼うっそうとした密林奥地で埋没の四角錐ピラミッドを人が覗く。





 ・・・





 その雨音が作る自然の遮音。

 けれど、『誰にも聞こえぬだろう』との人同士の会話をは——雨垂れに騒がしい林に潜んで三本角の恐竜トリケラトプス




「「……」」

「……ふむ。れなるが——」




 人がする念入りでは『足跡が意図的に残された偽装でないか』等を確かめる精査にも暗い色は不可視みえずに。

 けれども、事実として其処に在る機体内部では声を聞いていた者たちでも、状況の整理にする話が都市で聞き及んだ曰くに『二人組の騎士は"重要な人材獲得スカウト"を目的に遠征へ出た』ようで。




「——都市で調べた所に寄れば『既に派遣された騎士』の姿か」




 それを追った女神たちも『エクシズゴル』の同地に到着する。



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