『女神サーの姫は彦?①』
『女神サーの姫は彦?①』
そうこうして、場所は引き続き海洋に浮かぶテノチアトラン。
先までは遊びとしての銃撃戦も行われて、物資の輸出入も盛んな港湾都市の一区画。
「本当に、有難うございます……!」
「……いえ。道中、お気を付けて——では」
その中にあって海風の通る灰色で
礼を言う者との遣り取りは『区画移動許可証』を家に忘れたその人間へと、当該の物を届けての去り際。
(……よかった)
きっと相手も"旅行"のようなものだろう。
若い女性で
しかし、船の出る港まで来て『重要証書のない』ことに気付いた人の焦り顔——無事となった今は安堵へと微笑んで。
(……うん)
その好転的な色調の変化には見遣る自身さえ嬉しくなってしまうのが青年。
"人助け"を領域の管理者たる大神の協力でも『公的処理』としつつ無断に住居へ邪魔することもないよう"ひとりでに外へ飛び出てきた忘れ物"を受け取り、走る水の速度が『落とし物』の
他でも
「——……♪」
そう。
相手の『良かった』と思ってくれたのだろう"心の底からの笑顔"が見られると"青年自身も安心"して染み染みと嬉しくなってしまうから——"しかし"、つい今し方まではそうして区画越えを楽しみにする人間を微笑ましく見送った次第に。
「——お考え直しを、女神! "
遠目には青年を優しく見守る女神たちでも場は平穏無事の
(……"?")
「聞き知る噂を多少低めに見積もっても"世界の神格"が相手では——」
「
「ぅ、ぐ……っ……! 元から
「——『
「"遂に訪れた絶好機"なのです。"夢に描いて待ち望んだ光景"がこの先にあるかもしれず……ならば、例え此処で終わったとしても構わぬ挑戦が今なのです」
「どうして……! そこまでを——」
「
「い、嫌だっ……! やっぱり
(——な、なんだ……??)
一つの柱が泣き、その悲嘆に
青年ではそれら初対面も混ざる声の波長と神気を肌身に恩師たちの下へと戻ってみれば、何やら見慣れた暗黒少女の立ち姿へと今まさに
「——明瞭なる姿に於きましては……どうぞ、お初に
「……」
大地の
なれど、美女で長髪の端々に混ざる赤や青や黄や緑で色鮮やかな『星の神格』たるレイママは彼女の"その立場あっても目上"となる小柄に頭を下げ、述べる言葉も慎重の色味。
(……
だからには、推移を見通せぬ困惑に胸で不穏の
恐らく"大神を前に捉えている"のだろうレイママを筆頭とした神前の
ついては片や赤を基調とした髪に混じる黒、片や深い青に混じる黒。
それら恐る恐るといった震えの様子で魔王の御前に平伏の横を通り——急ぎ、アデスとその隣に立つイディアの下へと駆け寄って小声に現状の確認を試みる。
「——イディアさん。"この状況"は一体……?」
「……つい今し方の出来事ですので私にも詳細は分かりかねているのですが……」
「あの方は……女神のレイママさん、ですよね?」
「はい。訪ねてきたのは彼女に違いなく、しかしどうやら
『興じる遊びで足を止めていた所を狙われ、"
『『——!』』
『"
件の地母神と相対しながらも同時に補足で割り込む大神からは厳粛の言葉。
『……"自分"と?』
『平たく言っては「身を借してくれないか」とも言いたげに。庇護者の私でも"二者が互いに相手を悪く思わず良好の仲を築いたい"なら仕方もないと思いのあれど——けれど、青年を"
『? いえ、遊ぶくらいなら自分は別に構いませんけど……』
『……』
『女神のレイママさんとも以前にお会いしたことはあって、特に問題は——』
言葉では『警戒』の必要な指示も足りぬと見て、暗黒の渦が合点のいかぬ表情の前に
『……これは?』
『既に送られ、最初の一通以外に返答をしていない"
『……"手紙"のような?』
『然り。これらはアレなる女神が私宛てに送った物、"物理的な形のある一部"』
("レイママさんからアデスさんに送られた手紙"の——い、
『見て分かるよう、彼女にも"危うい要素"がある』
『よって
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