『vs古き女神たち⑤』

『vs古き女神たち⑤』




 ウィンリルの方でも乗り良く、操縦席に座る必要性のない力が手や足で触れただけの戦闘機を制御下に置いて——既に離陸テイクオフ

 飛び回るには場所が狭い気もするが、いやいや舞台となる大陸テノチアトランの大きさは真実として外から見える惑星の表面積を超えて神秘の領域。




りゅうで、飛行機ひこうきで——あれなる恐らく『かみ』だ!」



「——はっはっは。我らが神は今日も元気でいらっしゃる! パフォーマンスにも一層の熱が入っていよう」



「それでも如何な催しでしょうか? 調べてみませんと——」




 であるからして、映像や高所からの景色に原動機エンジンと水の青年で蒸気の足跡を残しつつ。

 青空に行き交って、飛び交いもする弾幕の応酬へは眺める実験都市各地の信徒たちでも愉快に。

 昼休みで各々が手に『Xじるし』のパン食などを取りながら、小気味よい風切りの音も楽しんでの観戦。

 やはり神で派手にやれば遊興の広告宣伝にも効果はありそうだ。





「っ……こういった戦闘ものは『後ろに付かれると不味い』のでしたか——ならば!」





 だが、下で観る者は素直に楽しめても上で追われる者たちは『はらはら』と気が気でない。

 因りては急上昇から決断的に操縦桿レバーを引き下げ、動力を急停止させるイディア。

 落下させる機体が敵機に追い抜かせて先を譲ろうとするのだが——敵の直ぐ様一回転に背後の位置を取り直してくる動きは、まるで一筆に円を描くよう流麗であった。




「——う、うわっ! まだ後ろに付いてきます!」

「っ"……! そのようです!」




 その人が乗っては不可能に等しい軌道でゲイザー・レジストを前方に捉えるのが——ウィンリルの機体表面に直接で乗りつけた戦闘機。

 色は構造の作る黒に、何か波を受ける面積を少なくしては薄くて空気抵抗も然程になさそうで速い。




「であれば、爆弾を——……恐ろしいほど正確で早い"相殺的干渉そうさいてきかんしょう"。性能が数えきれないぐらいに段を重ねて違います」




 時限式に青色の波が広がる爆弾を後ろに放ってみても、敢えなく打ち消され。

 平行の位置関係からも逃してくれない敵で機関銃の弾が飛ぶ。




「攻め手に回るのさえ困難。駄目そうです。振り切れません。押し込まれる展開ですね」

「っ、、——墜落ついらくを狙った攻撃が来ます……!」

「"迎撃"を頼みます! 無理のない範囲で!」

「はい!」




 空を行きながら追う射撃で逃げる二者を狙いつつ。

 機体の上に直立する神でも振り被る動作が、対艦刀たいかんとう




("助けてアデスさん"!)




(そうは言っても、今はっ——自分がやらないと——"!!")




 尾を振るような動きの装甲が斬撃を飛ばして、しかし両断を阻むのも神秘の水。

 大口を開く水龍の圧で食らい付き、けれど殺しきれずの衝撃は——。




「————! っ、っっ……っ"!!」




 守り抜く決意で自機の背に飛び出した青年。

 大切な友に届かせぬため。

 衝撃を自身の玉体で受け流すように吹き飛び——転がっても身を低く、後ずさっても表面に踏み止まる神秘の張力。

 女神の体で思うのも何であるが相手も人型であって、しかし"兵器の重み"が水龍を操作していた川水の腕に残響を伝える。




「……気を吐きますね」




 そして、力不足の水の飛び散って機体上を転がる隙。

 ウィンリルで当てに行った次の弾道——不自然に急落下。

 その干渉を受ける様子では明確にを見えぬが其処彼処そこかしこに在る『暗黒の力』こそ、やはり"未知陣営の本体"と言っても差し支えないか。

 それでも女神で格下なる若い二者は『大神の付属オマケに等しい』とも言い切りたいが、しかし『暗黒』の方は『光』でないと極めて対処も困難であるから自身は此方こちらで手を抜く訳にもいかず。




『っ——"!" ウィンリルさんと戦闘機で、敵が左右二手に別れました!』

『続けて迎撃を!』




 ならばと、結局の所で機体を破壊しただけでは勝利条件も満たせず。

 変化を加える動きが機体からウィンリル本体も飛び立ち、斜め後ろの左右から挟撃の形でより熾烈となる砲火。




「く、っ——っ"、ぐ、、——っっ……!?」




 水の壁を張って、鞭を振って。

 青年が必死に対処へ当たるも、所々には撃ち漏らしの被弾衝撃で揺らぐ機体。




「くっ"! ——大気圏内だと勝手が、思ったよりも——!?」




 操縦だって以前に宇宙で練習はしても星の内側だと勝手が違う。

 揺れる窮地で手間取るイディアが読み易い直線的な軌道を取ってしまえば——その一瞬のあらさえ逃さぬウィンリルで制御機器を麻痺させる弾頭を右翼に撃ち込み、削いだ機動力で次の手へと移行。





『——"!" 神霊しんれいかれました! 流体化で侵入されました!』

『っ! では——自分が行きます!』





 機体の動きが制限された事実に気付いて直ぐには——警報が知らせる"敵の侵入"だ。





「——イディアさんはその間に、脱出の準備を!」

「——"!」





 そう、原動出力の低下で緩やかに下降し始めたゲイザー。

 この空中で沈み込むような異常を報せる振動にはけていた青年も機体の隙間より防御最優先に染み込み、操縦室にて先ずはイディアの無事を確認。

 しからば次に、攻撃を受けても問題ない武装した分身を四体に作り出して。

 "慎重に内部での迎撃へ向かおう"と、操縦室から直近の通路に出て一つの角を曲がろうとすれば——。




「——ヤ!」

「——ラ!」

「——レ!」

「——ター!」




『既に近くまで来てます!』




 響いたのはバード甲高かんだかく鳴くような射出音。

 複数同時に撃ち込まれる弾丸で数も難なく蹴散らされ、本体との接続も切らされては先までの分身が只の水溜りとして武器の散る様も無残に。



(でも、かどに姿は見えた!)


(特に大きい権能行使の様子もないし、アデスさんの重さを嫌って負担の掛かる面積を増やせないなら自分でも、まだ——)



 よっては本体も直ぐに場所を戻らされ、またも攻められる側の窮地。




(……なん——とか——)




 最終防衛ラインたる操縦室の入り口付近で迎え撃とうと画策しては——今まさに顔の横を通過して行った弾丸。




(っッ"——"イディアさん"!!)




 青年を避けて後ろで方向転換する弾丸。

 ならば自身を"雑兵ぞうひょう"と思う青色で、当然に『敵の狙いは頭脳役ブレインの美の女神』と早くも知って。




(絶対にまも——"グワーッ"!!)




 戻る流水としての己を使い潰してイディアを護る青年が、四散!




「——っ"」




 その"隠した弾"の薄膜ベールを重圧に剥ぎ取られ、狙った美神の的にでなく川水の流れる体に阻まれたウィンリルでも舌を打つ。

 だが、姿を進んで見せぬ彼女も通路奥の物陰から続けて二の撃ち・三段撃ち——それでも空間に飛び散る水が公正フェアに自らの的を可視位置で残しつつに防御。

 そうした風に押し切られても何度となく流体で戻って身をていする様は——宛ら"美女の周りを龍が舞いし守護"の光景。

 神秘の其れを作り出せては、攻め手と守り手で世界観を同じくする神同士は各種制限を受ける競技中で出せる最高速は似たようなものに。

 けれど、同じ一瞬に生み出させる物質量は桁が違うから下位で押され——だけどそれでも苦戦の分かっていながらが水で泥臭く。




「"粘り"も悪くありませんが、"もっと上手く"は出来ないのですか……!」

「——え!? ——わ、わっ……!!」




 泥臭く、厄介。

 跳ね飛ばされた水飛沫が空中で独りでに水の膜を張って、跳ね返りで戻る——戻った先でまた弾丸を受けて吹き飛びの『再生』・『逆再生』が如くの繰り返し。

 故に『ならば』と、今度はウィンリルが『障壁となってくる青年のほうから先に始末しよう』と照準の切り替え。

 己を飽くまで"美神の防弾具"としながらも自身の的も忘れず射線を切っていた手を一発、二発。

 左右とも素手の守りを弾き飛ばして『今度こそ先ずは一体』と命中を神の意識で未来に描けば——。





「"——"——"!?"——"——"」





 引き金を指で引く直前、"玉体で背筋の凍るような感覚"。

 銃を持っていた腕が悪感に震え、言うことを聞かずに権能さえ押し込んで下がるのは——光と切り結びながら射手しゃしゅを流し見てくる




「——くぅ、っ"そ……! これが、"魔眼まがんちから"……!?」




 悪態の隙には若者たちで射撃。

 けれど、苦しげのウィンリルでも険しくする緑の眼力が的に到達する前に風の刃で弾丸を切り捨て御免。

 また『ならばならば』と、遠方には斬り付ける戦神グラウによって一時的に防御で足を止められたアデスを確認——からの此方ウィンリルも装甲が背負う狙撃銃によって向こう側の"大将"を目掛け、弾を放てば。




————————————————




「む"」




 されど、暗黒で指の振りが引き寄せた女神ラシルズを射線に来させて肉の壁。

 光神の纏う熱気で魔王が正に"片手間"で遠方よりの狙い撃ちを灰塵かいじんと処理して。




————————————————




 更に間を置けば再度に垣間見てこようともするし、それでもグラウの奮闘によって余力を削がれる大神で他所への重圧を軽くせざるを得ない機に。




「——っ……退くべきか」




 一先ずは落下を続ける機内から離脱の選択を取るのがウィンリル。

 彼女自身でも一点に足を止め続けるのは重力に引かれて危うく、若者らに近付けば近付くほど暗黒で手出しの圧が増す。

 なので光学迷彩のように気流が世界へ潜みながらも、次からはより遠目に位置を変え続けて若者らを先に討ち取らねば。




「イディアさん! そろそろ此方も……!」

「はい! すみません、何度もお待たせして——お願いします!」




 その結果的に防御で時間を稼いだ間にはイディアで色々も済んだ。

 不時着するにしても遮蔽物の多いだろう都市の模造を目的地に、何とか処理の遅くなった制御機器で進路を設定して脱出の準備が完了。

 よっては機体動作の止まって狙われ易くなる前の飛び降りが、身長で上回るイディアを青年が抱えつつの昇降口から——身を投げ出す。





「負担を掛けます。我が友……!」

「いえ。貴方がいてくれないと自分はもろいですから——着地だって任せてください!」





 頼まれる着地のままに雨でない降水の瀑布ばくふが空を裂き、優しく冷温が美の女神の体を包み込む。





「それでも"一網打尽の好機"。逃す手は——」

「なりませぬ。馬にて蹴られてしまいます」

「——!? 女神、ア——」

「ぐ——ぇ"————」





 降り行く若者たちで対戦形式の格闘げーむでも往々にして狙われる着地の隙は『XXファイター』を駆るアデスがウィンリルの戻った機体に激突して援護カバー

 操縦桿を敢為かんいに斜めへと倒して戦闘機で戦闘機に、質量の間に女神を挟むようにが高速の体当たりだ。




「それはそれとして神の光速に追われていますので、私も程なく撃墜されますが」

「む、無茶を……銃撃戦とは?」




 予言通りには遠方のグラウでくうを蹴り出すような動きが脚部誘導弾発射装置きゃくぶミサイルランチャー

 狙い通り瞬時に着弾して、爆ぜる。




『うむ。やはり常に手を貸すのは困難であって』




 大地を抉る墜落の折には暗黒で蹶然けつぜんと戦闘機からの回転跳躍で脱出し、着地して直ぐに同じく転がり出てきたウィンリルの頭を撃ち抜かんとするが。





『予定通り此方は若者らにお任せを——』

「"余所見よそみです"」





 アデスで『高位の神にとって機体に乗り込むのは火力を落として的をいたずらに大きくするだけ』とも撃ち落とされた手前に見栄を張りたかったが——既に追撃の光で吹き飛ばされて彼方が小玉体。

 分身による『暗黒部隊アデストルーパーズ』さえ派遣や今以上に力の分割する余裕はなく。

 また美神を抱える青の滑るように着地を決める背景では、明らかに"大規模な墜落事故"も起きているように見えるが——実際は落ちる機体とその落下予測地点が危機に応じて『マシュマロ』に変化する先端技術によって大事ない。

 火薬を多めの爆発も雰囲気を作る演出であり、万一に備えて落下物の類もアデスやグラウの極神たちで塵一つ残さず処理してくれるだろうから問題はなかった。





如何いかな『大神』とはいえ、力を制限される今では斯様かようなもの」

「……っ」

煌々こうこう輝々ききに立ち昇る光の二柱を前にして、また未熟どもを健気に御守おまもりなさっては——見事ながらからくも防戦で場をしのぐのみ」





 そして、左からを盾矛たてほこ狂瀾きょうらんに——右からを銀河超ぎんがごえの怒濤どとうに。

 左右から光の二柱の神速と眼光からで挟み撃ちとされ、それでも身を幾度も打たれながら健在の暗黒へは——グラウの楽しみにしていた"戦いながらの歓談"も再び交えられる時に。






「そして我々ではじきしての合流。遊興であっても規則範疇きそくはんちゅうで手を抜かず」


「故には一騎いっき加勢かせい三位さんみ一体いったい。遂には"大いなる神の超越"さえ現実のものに——」






?」






 白面はくめんの神で"不敵な笑み"が表出する。




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