『vs古き女神たち①』

『vs古き女神たち①』




 開放された無数の容器コンテナ、中には見取みどりで銃器。

 拳銃けんじゅう小銃しょうじゅうや、狙撃銃そげきじゅう散弾銃さんだんじゅう機関銃きかんじゅう擲弾銃てきだんじゅう——その他も大小様々、細かな差分でも取り置きがあって。




「結論から言って銃器開発などの専門家は、それでも"広告宣伝の素人"」


「人でその"広く知らしめる"部分が不足していただけでもありますから、故に我々で新しい遊興の楽しさを"実践"によって……謂わば『広告塔』になってやろうということ」




 加えて外周では『砲台ほうだい』や『砲塔ほうとう』のような重厚も並ぶ群れの中、囲まれるように立つのは比較して対照的に細身の柱が三つ。

 人との話で段取りを終えてきた白黒の少女が待機の二者へと歩み寄り、実験都市同地での事の成り行きが説明される。




「『宣伝を望む人』と『宣伝を受けて新たに遊びを楽しむ者たち』から得られる信仰は参加する我ら二組で半分ずつ——ではなくの」


「折角にきそい合うなら"り勝つことの"として『勝者の側に比重を傾ける』運びと成りました」




 口で説きながらでは『試し撃ち』に仕切られた空間で、準備に遅れた暗黒も適当な拳銃を持って狙う簡素な的。

 片腕の構えで狙っては——容易くの一発。

 神の細腕が反動も皆無に的の中心を射抜き、昇る硝煙を吐息が吹き消してから別の得物も見繕いに邪視が走る。




「また人を広く集める一般公開の前段階として、"試験的な開館に安全性を確認する"意味合いもある」


「そうした意味合いでは仮に『事故で細切こまぎれ』に成るようなことがあっても"大事だいじないのが我々"——"丈夫な玉体ぎょくたい"ならば募集されていた被験者ひけんしゃにもなのでしょうから」




 魔の赤い眼光は漂った先で熱心に相槌を打ってくれる黒髪の女神——青年に目を留めても、微笑み。




「計画者の人間に対しては今日の勝負を参考に『競技規則をより洗練されたものへ』と"改善"も促し」


「その安全な指導を行う『自主規制団体の発足ほっそく』も優先事項とするように恩恵を——報告をはじめとした書類の類いも神秘に深く触れない範囲で纏めておいてやりましょう」




 そうした恩師の目を細める笑顔の手前でも、青年は神の執り成してくれる『より周囲の人間で安全となるようにの配慮』で嬉しく。

 またその『"他者への一助"と自分もなれる』ことを青き瞳の発色が心からに周囲へと喜んで見せる。




「なので銃火器を用いての対戦が——我々『未知の力』と『古き女神たち』」


「器用にも宇宙の規模から縮尺を落として指定の範囲内で暴れるようにもします」


「……よしんば『極まった神同士』が本気で殴り合いでもすれば、何処か"次元じげんうら"にでも跳んで行ってしまいますからね」




 その青年から連鎖する笑み顔で場も温まっては、しかし同時に表情を緩ませるアデスの手元が次に試しで撃った小銃から弾倉だんそうを取り替える順序も確認。

 しからば音にして『ガシャガシャ』と小気味よく。

 若者たちでも同様の身支度を続けさせつつ実験の意味合いが強い今回の対戦に於いての"簡易的な競技規則"も説明がされる。




「定められた大まかな規則は——『各位の身に着けるまとを射抜かれての脱落』」


「そうして『先に相手の参加者を皆無とした側の勝利』であり、『此処に用意された指定の銃火器や弾丸でさえ的を射抜けば後は自由すきにやっていい』」




「つまり『権能は使っても構わない』、しかし『その作る水で的を破壊しても意味がない』……といった?」

「ええ。言及された認識に相違なく。そもそもの的が指定の道具以外では壊せぬように加工されているから安心せよ」




「また弾丸の方にも『怪我のない』ような工夫として"柔らかく弾む性質"のあって、参加者の想定される人体から見ても安心の特殊。当然、神にとっては痛くも痒くもない」


「そして誤射ごしゃのような所謂『同士撃どうしうち』も起こらぬ仕様となっています。"味方に撃たれて終わった"のでは締まりもなく、"裏切り者をもぐり込ませたり"では競技の趣旨が変わってしまいますからね」




「よっては"銃火器を鈍器どんき"ともしたり、"引き金を引かずに神秘の操作で撃ったり"と……別の何処かにあるのだろう細かな形式や作法も気にせずで構いませんので」

「「——」」

「『のびのび』と、行きましょう」




 そうして大まかな決まりを伝えては、若々しい老婆で見せる指の上下が『ちょいちょい』とあおの注意を引く仕草。




「青年、青年や」

「?」

「今回の取組とりくみ。私の隠す範囲でなら『秘奥ひおう』を用いても構いません」

「え……いいんですか?」

「はい。実戦での使用を許可します」

「……ですが、目まぐるしく変わるだろう実戦の状況で"それ"が……自分に上手く出来るでしょうか?」

「完全・完璧であれとまでを言わず。何よりこれまで『重量物の降下』や『胸』などで"興味や目的を単純化されて極限まで集中が高まりを見せた時"にかんばしい兆候も我が方で確認ができていますので」

「……」

「因りては貴方の思う程に実現も遠くはないでしょう」

「……あまり意識して実感はありませんが」

「熱意を持つ青年で残るは『分かり易い切り替え』が必要な問題であって……大丈夫です。きっと出来ますよ」




「後は、"真に己の願う目的下もくてきかでの早回はやまわし"」


「故には今回で『勝つこと』や『敵の的を射抜くこと』、また単純に『遊びを楽しむこと』などが心構えの目印として捉え易いでしょうか」




「……」

「神の全力を賭した戦場であれば『水に一撃を加えられた所でなんの』ですが……けれど"同じ条件で立ち会う遊興"であれば如何に敵が『無敵の神』であろうと

「……」

「近似の世界観に属する神にも速度で一定の肉薄は可能であり——古きつわものを相手に数秒か。ごく僅かな間でも自身の持てる力を素直に試してみればよい」

「……分かりました」

「"腕試し"のように、真剣であっても安く……の"補正式たる女神"ならば丁度いい。相手にとって不足なく、優しげにも貴方の全力を引き出してくれますでしょうから」

「"——"」




 特段に話すことを終えては装備を充実させる方向にも確と意識を傾けよう。




「うむ。そしては残りの準備、私で使える物は成るだけ持って行きましょう」




 予備の弾丸を背後の弟子に『ポイポイ』と暗黒の身へ投げ込ませながら、当のアデスは銃火器で長いのを背負う幾つかで顔には遮光用の眼鏡も目立つ。

 そして青年は此方も黒髪の後ろにいる美の女神に銃弾などを水中たいないに投げ込んで貰いながら、『大きいと接触して邪魔になりそうだから』か主要な武器は拳銃に絞って小さめのを複数と汎用性の高い小銃は一つ。




「うわぁ……! 着込むと何か雰囲気が出てきて、私でもワクワクしてきました……!」

「"非日常"の感じで『ソワソワ』するのはありますね」

「はい。日常とは対照的の、正に"戦いの装い"」




 ももに収納道具を巻きつけるイディアも積載の問題から中距離の狙撃と近距離にも対応の小銃をチームとして主体に一つで、それ以外は取り回しを重視。

 そう、"遠いことなら権能で引き寄せる"など融通は利くが故に近・中距離で切り替え可能な"マークスマンライフル"。

 "アサルトめちゃリーズナブルシリーズ"の『ASMR-000』や、"持ち手への負担が軽くて定評のある"『TENI-8341』、"掛かる費用の心配な初心者はこの辺りから"の『COSP-11』など、など。

 "銃"なんて殆ど手にしたことのない彼女たちは癖の少ない物から優先的に手へ持って、腰や脚でさげる装いが模倣であっても戦の準備。




「これで人の望む通りに『負傷者の出ない派手の遊び』が確立できれば……言うこともないのですが」




 取り分け頑丈な大神は兎も角に、若者たちでは念を入れて『防護服』も追加での着用。

 前を締め切った制服ジャケットの上から分厚い鉄の板を載せて、更にその上でも増設の収納ホルダーに武器を——弾丸を。

 イディアでも傾斜の度合いが緩やかとなった胸板に固定する小銃は被筒ハンドガードの下に散弾銃も付随した一品。

 他にも拳銃は『ワシ』の名などでも呼ばれる良品を平時は化粧道具のある左腿に挿し、予備弾倉の類と共に巻く帯状ベルトにで配置セット




「安全面への配慮自体は向こうさまでも取り付けましたので今回は怪我の恐れなく万全に。改善を要するあら探しはやってみての結果待ち」


「よって差し当たりの懸念となるのが実戦での内容面であるのですが……忌憚きたんなく言って『大きく戦力の劣る若者らを同時に守り切る』のは——『暗黒わたしでも困難』と認めざるを得ないでしょう」




「「……」」




「相手が極神あいてですので。頻繁に助力で顔を出してやれるいとまもなく——そうしては青年と美の女神で互いが互いの護衛として付き添い、私と離れた時の教えを遵守してもらいます」

「「——はい!」」

「息の合う様子でも、一先ずは宜しいでしょう」




 総じて配色としては変わらず黒を基調として、老若混成の三柱。

 三者三様の準備の仕上げには分身していた水で女神たちの髪も編み込み、士気高揚。

 装備の一式も互いに見合って手落ちなく重ねる確認——立てたアホ毛もヨシ!




「……どうですか? 我が友」

「?」

「今日の私は疑似であっても兵士へいしの身分。友の間柄であって貴方と並ぶ『戦友せんゆう』です」

「……露出は少なくなった筈なのに寧ろ要所要所で覗く肌が際立って、静かに見えるそれが艶立えんだつ様子」

「……」

「……身をベルトで締めるのも、正に雰囲気が引き締まるようで……カッコ良く」




「以前から頼もしかった振る舞いも目に見える『武装』で更に説得力は増して……言葉で例えるのは難しいのですが、言うなれば『何処までも付いて行きたい』と思わせる『頼れる上官』のような印象もあります」




「……具体的な表現でも感想を頂き、嬉しく思います」

「いえ。でも、本当に……例え聞かれなくても声が漏れ出ていたかもしれないくらい『イディアさんは色んな物が似合って凄い』と、それも普段から感じ入ってましたので……今回も、はい」

「有難う御座います。我が友。そして貴方も私にとっての素敵であります。やはり遊びであっても真剣に傾けてくれる心意気、緩み過ぎず張り詰め過ぎず——凛々しくもあって実に快い」

「……イディアさん」

「なのでまた宜しければ、これが終わった後にでも……あわせて一緒に記念の撮影をしませんか?」

「……はい。イディアさんの頼みでしたら」





「そうして相変わらず仲も宜しいこと……ですが浮き足も立っていますと私で背後から





 そっちのけで親密の様を見せつけられたアデスでは『自分にも気を払え』と青年の後ろから『あざとく』袖を引いてしまう。




「我が弟子、私にも確認を。せめて最後の寸評すんぴょうだけでも」

「……? ……可愛い(?)」

「……美女に陶然とうぜんとしては雑な物言いに感じますが——……これは、これで。"成熟した関係"も思わせて良き」




 斯くして準備も大方が完了し、対戦の開始前にたわむれの余裕も許される談笑。

 話すその間も暗黒からは若者たちの背に『頑丈』とする何画なんかくもの未知の象形『X』を刻み込み、"契約が成立した保険"の事実を表すよう万全の印章いんしょう戎姿えびすすがたにも現れる。




左様然さようしからばあとの勝敗は対戦相手、特に"極光の女神"次第なのですが……彼女にも彼女で"本気を出せない理由"がある」


「因りては青年らで巧妙に時間を稼ぐことさえ願えれば、"大神による各個撃破"で勝利の結果へと導いてやりましょう」




 作戦の基礎も伝え、残りでは忠告も。




「彼の女神たちに対して変に規則正しい動きを見せれば、容易に企みも看破されますからね」


「合同訓練で培ったことに加えて即興を上手く織り交ぜ、それも連続に繰り出すのがいいでしょう」




「「"——"」」




「若者たちで頑張りを示してくれる程に私の負担も軽く、我々の勝算が確かな現実味を帯びて行く」


「大神とは言え力を制限される今、そのような状態で"高位こうい三柱みはしらも"相手にしては……流石の私も割合にして凡そ『六体四』で押し切られてしまいましょうから——"諸君らの奮闘を期待する"」




「「はい!」」




「それでも敢えなく若者たちで先に脱落となれば、四割を待て」


「またけれどけれども、もし仮に奮戦も虚しく残りのろくで私も押し切られてしまいましたら……悔しくもあとなぐさめ合いましょう」





「大丈夫です」


「勝利を掴めれば信仰を集める祭事全体での競技的優位性を確認出来ましょうが……やはり、"祭事は祭事"で、"遊びは遊び"」


「例え敗北しても『何が悲劇的に終わる』という訳でもない」





 各位で厚みの増やした面頬マスクの着用でも意思疎通を口頭から通信回線に切り替え。

 頭では極めて簡素な丸い的の付く『C』を横倒しとした形の装身具も着用して——いざ、行かん。





「故には気負い過ぎず」


「"古豪たる神への挑戦"を我々で行きましょう」



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