『古き女神たちとの邂逅④』
『古き女神たちとの邂逅④』
・・・
(…………綺麗だ)
既に同行を始めてから丸一日と半日ほど。
彼方で水平線より浮上の
「"……"」
「"……"」
海面も
これまでの道中は古い間柄で主題を決めた会話や
などをして——今は髪の
「……良き」
「……女神暗黒で『
「教えを貰い、また以前から興味もありましたので」
「……誰から?」
「美の女神」
揺れずに走る船上で平然と
人で使う手の代わりに左右から交互に伸ばす髪の毛を編むようだから『毛編み』変じて
特に目的や利益のあってすることでなく、しかしそうであるが故に実利を重んじる世俗と切り離されて心を穏やかにする"
苦労して積んでも容易く崩れる様にも『侘び・寂び』のあって、だから"壊すことも一つの過程"に。
今度は大神で粉末と砕いた岩石を甲板に撒いては、指で
「以前から彼女との交流もそれなりに?」
「書物の感想を述べ合ったり、先述したように装いなどでも助言を頂くことがあります」
「成る程。道理で『流行り』などと、神の目が
「然り。
「ど、どうも」
「端的に言っては『涼しげ』でいいです。"自作"なのですか?」
「自作です」
「ほう。やはり相当の美的感覚をお持ちの様子で、太古よりも思っていましたが洗練された意匠は——
「そうだったのですか……いや、そのような
「ふふっ……丁度"この機体"のように恐ろしく中々の威容なのですよ? 機会があればお見せしてあげたいものですが」
「嫌なものです。"実用の鎧"なんてそれこそ戦うような機会では?」
「そうですね。その時には……——対戦、宜しくお願いします」
親指と人差し指を張って出来るような直角に——少女の形で顎に添って
「……【^-^】」
「……グラウさんも衣服? などに興味がお有りで?」
「一応に……はい」
「"鎧に装飾"をお付けになるような……?」
「いえ。
「あ……そうですよね。変なことを聞いてしまったかもしれません」
「いえいえ。そのようなこともなく……それでも実を言って私でも内に着込んでみたのは……その」
「?」
グラウも兜で控えめの笑顔が楽しいよう。
アデスとウィンリルが床をなぞる手の動き、前者の遊びながら口で話すことも傍で
「……"僭越ながら女神に
「暗い……"底知れぬ"感じがいいですよね」
(……
「はい。格好の良く……ですので更に明かせば、若者たちでも所属を表しつつ個性も残したその暗い色の……"
「そんな感じです。
「"——"。そうした響きだけでも『向上せん』と決意の程は窺え、目にするだけで『威厳に圧があって宜しい』と賞賛を憚らず口としたかった所なのです」
「……有難うございます。でしたらアデスさんにも改めて『お褒めの言葉』をお伝えしておきます」
「……やはり彼の女神が仕立てを?」
「はい。仕立ててもらいました」
「……それはまた"素直に羨ましい"ものです」
それでも青年とグラウはリーダーたちの会話内容に興味があっても『自分たちは洒落者と少し遠いから』と自然に置いた距離。
しかして此方でも温順に時は進み——海面が隆起したかと思えば船の真上で飛び跳ねたのが
その過ぎる様を見て、暫し青年は着水の飛沫にさえ目を奪われて黙りこくる。
「…………」
そうして。
"多くの生物の身を打ちつけた衝撃"で呆然とする青には『あまり身近に強大の気を見続けても気疲れしてしまうか』とも。
「……我が弟子」
"複数を同時に構わん"として歩み寄ってくる分け身。
暗黒の影が近寄る先では青年が鎧の女神と話しながらも甲板の端から海に手を伸ばし、感触で数多に感じられる物質や寒暖の微妙な差異から海流の様を読んでいた。
「……アデスさん」
「どれ。"答え合わせ"でもしてやりましょう。現在地から最も近い安定した陸地の方向は分かりましたか?」
「……機体の直進する方向」
「合っています。彼の大陸に向かっているのだからある意味でそれは当然として、距離は分かりますか?」
「……今の鯨で二十万頭、くらい?」
「はい。惑星内の規模で大きな誤差なく、実に正確な読みです」
その行いは"他者を助けていないと落ち着かない青年"への、『空』や『風』や『海』で世の流れを更に深く理解する勉強。
延いては『航海』の術に習熟させ、その知識でも支える助けが誰かで必要となった時に備えさせる『学び』で——恩師は"自己実現の可能性"を高めんと"気休め"や"気晴らし"の機会としても配慮をくれる。
「うむ。この調子で実際に目で見ずして方向や距離の予測も的確なれば……手順を踏んで
「……なれますかね」
「そうです。この世界では短い期間に星の配置や
「……」
「青年で、其れが出来ている」
けれど、神の口から『成れるものがある』・『出来ることがあった』と肯定的な判断材料を聞かされても。
先の着水の衝撃で確かに"身の傷付いた者たち"を近くに感じ取っては——『常に世界はそういった痛みで満ち溢れている』と思い出し、僅かにでも悲嘆や無力感に肩の落ちてしまう青年。
「……」
「……"苦痛は永遠でない"」
「……」
「また行動の主体や対象を人に限らず『他者を救う』ことは誰も完全には出来ないのですから——ですがそれでも、貴方の持つ『可能な限り皆が幸せになってほしい』との祈りを『忘れろ』とまでは言いません」
それを『元気付けよう』と『励まそう』としてかは分からぬが。
舞い上がって今に雨として落ちてくる水は勿論に、誰にも邪魔をさせずが秘匿された神秘の空間。
「……けれど時には『
「……そんなに"休めてない"、"辛そう"に見えますか?」
「"——"」
眉根を寄せる困り顔が『肯定』に笑む。
「……」
「ですから青年も日々の努力や成果の有無に関わらず自身への褒美と思っては……『己がどうしたい』のか」
「……」
「……『青年は
「……アデスさん?」
「己の為にも考え、安らぎや好む所を純粋に求め——ですから今だけでも
「("おねえさん"……?)」
「其処はあまり言わないで」
だけども変えよう流れ、作ろう流れ。
裏に
「……こほん——"平面を撫でる貴方の指遣い"」
「介抱で
暗黒が柳の指で
「……どうですか?」
「……何か怪しいです」
「極めて健全な遊びですよ。
「……それでも、気が引けるような」
「……まさか、"女神に囲まれる状況で緊張をしている"?」
「それは……少し」
絵は食いかからんとして、怪しく。
赤き瞳の様子を夜行性な蛇の瞳孔と似せる女神でも"獣の捕食"を重ね。
断り、しかしその女神によってされる看破が素早く迫る。
「……"恥じらっている"のですか? それとも何時かのように"花園へ割って入るどうの"?」
「……"どっちも"かもです」
「……前者は意識する年齢の差なども鑑みれば『
「……」
「後者であの手の議論は目当ての物を探す際に
「よっては、当事者の
「……でもやっぱり、まだ良く知らない方もいて落ち着かないので」
「……こればかりも仕方ない。無理を強いても私で青年を押し潰してしまう」
しかし、未だ事実として。
少なからず"女神と親しむ"ことに畏怖であったりの引け目を感じていた青年へは、恩師で計らいが拠点へ戻るよう容認の微笑みをくれる。
「であればやはり、"孤独に休む"選択肢があっていい」
「また今日も今日とて貴方の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます