『古き女神たちとの邂逅③』
『古き女神たちとの邂逅③』
その後では荒野を発って間もなく、傾斜を登り出したトリケラ。
まるで"浮遊する山岳鉄道"のように生い茂る樹木を飛び越え、山を越え——開ける視界に日光を浴びて大海の青が輝き出す。
「まあまあ。それでは改めて、お
けれど、吹く風の塩の香りにも負けず『私という王も好む最高級の品である』と。
行く道を暫し同じとした"挨拶代わり"にでも甲板の床を開いて荷物を取り出すアデス。
その箱詰めから摘出した焼き立てで香ばしい匂いの元一つを『女神ウィンリルに渡さん』と差し出して言う。
「……"パン"?」
「ええ」
「……言うほどの物なのですか?」
「はい」
「……普通のパンでは——まさか、"
「何を失礼な。私は兎も角に"我が弟子の悪意"を疑っては大神、怒りますよ」
「……」
怪訝な表情で細まる緑に難色を示されては皿を引き、『毒のないこと』の実証めいて大神自身が『あんぱん』へと口を付ける。
「ですが、まぁ……『青年が仕上げてくれた』という事実がこの食物の"最たる味わい深さ"でもあって」
「……」
「袋詰めをそのよう気乗りした時にでも試しに食べてみると良い」
「……どうも」
「その他では"旅情の冷えに効くあったかい物"も取り置きがあります」
「
「主食も汁物もあって、どれも"人の生活を真似た模造の品"——うむ。近年の我々でそういった『生活様式の模倣』が流行りをみせているのです」
物理を己の好みに捻じ曲げる神で
先に出した物を完食しては、
その己専用の容器から、これまた食道に流し込むように未知の神で
「食べますか?」
しかし、左右に風を切る髪の振る舞いによって断られ——『食べないのであれば』と単独で『もぐもぐ』大神。
見える形は少女でも、蜂の巣から蜜を
ウィンリルでは過去から知って相も変わらず掴み所のない"怪しさ満点"の神を警戒して、けれど
「これはこれは、またどうも丁寧に」
「いえ」
「——我が弟子。物流の女神から食品を頂きました。後にでも我々で頂きましょう」
「はい。貴重な物を有難う御座います。それでしたら少しでも話に専念できますよう、自分が中に運んでおきます」
「頼みます」
報せの声を掛けられて恩師の背後側に座っていた青年では身を起こし、謝意の言葉と共に贈り主へと一礼。
また直ぐその後を同様の動作で美の女神も追従。
それなりに山積みとなって在る箱の取り扱いで若い二者の気遣い合う姿が年長者たちにも見える。
「……"
「……"花の支え合う姿"を?」
「ええ。
「……私でも『
「それについては仕方がない。知らぬものは仕様がない」
「知らぬなら認識さえ難しく、評価などは言うに能わず」
「"ないものは夢の中の夢"。"幻想"、"妄想"に己の願望を当て嵌める他ない」
魔性の王からはその"睦まじい助け合いの様"を食の
「しかしそれでも、思慮の深い貴方で
「……?」
「"同じ対象を好む"とする、孤独を愛する私でもその"愛を語らえる相手がいてくれる"ことは得難い幸福と僅かにも思いますから……
「……"
「……」
「"真に魅き付けられる要素"があれば……時に『落ちる』と形容されるのが
「……」
「"深く
「"……"」
此方でも"好意的"を語る様は
白と緑の二輪で華やかに。
「……"流れる水の化身"として現れ
「…………」
「故には気苦労も絶えず。だからせめて貴方のような話の分かる者で多少なりとも……気付いた時には私へ教えるなりで構いませんから」
「……」
「優しくしてやってくれると……本当に嬉しい」
暗黒物理と常物理で異界・異文化の交流。
両者の間で波風を立てぬ為では遂にもてなされた女神でも、おでん。
良く熱の通って切れ込みを入れれば水の溢れ出す大根は——権能の包む風によって崩さず。
優柔に口へと運ばれた
「……女神アデス」
「優しくしてくれて、更には私の管理下にある『ふぁんくらぶ?』に加わって頂ければ——」
「……ん?」
「——『青年公認の丸秘情報』を共有してやってもいいのですよ?」
「どういった空気感なのですか」
「"入会特典"では、お願いして食後にくれる
「未だに
「……楽しみだ。
「……? (今日の暗黒は調子が良さそうだ。旧知の仲で何かいいことでもあったのかな……?)」
「——ああ、我が友……!
「【^_^;】——"会話に花が咲いた"だけのようですので心配せずとも大丈夫でしょう。また
そして、顔を合わせる頻度が少なくとも数十億年来の古い関係が世間話をする横にて。
先までは憧れに好感を示されて昂り、今で漸くに落ち着いた語調のグラウ。
「注意をした女神イディアでも立ち上がり際に衣服の
「二者とも我々に囲まれて気が緩んだのでしょうか? ……"
青年たちのような"
「……うむ。隙のあることさえ許されて……
「……確かに、そのような捉え方も出来るのかもしれません」
「あの認め合う若い姿。
「……分かるかもしれません」
「女神グラウまでも同意とは……一体何なのですか、"彼女たち"は」
その謎に満ちた女神(?)二柱を尊び、慈しむ此方も花の如き麗神複数の様は竜の背に広がる花園。
見たままでは神秘でも奇異に映る光景だ。
「そうしては花を踏み荒らして散らさぬよう、我々でも『しとやか』に」
「"競走の相手"であっても"明確に敵"ではなく、今見せたように私の
「なので、はい。
「『大神でも恩に感じてあげます』から」
「
「"あくまで仕草"。円卓を囲む我々に
「気品の有り気に仰って、そう言う貴方でサボっていませんか?
「今は大きく出る幕でない。それにこう見えても"宇宙の弾けるような機会"に備え、身を休めているのです」
「つまり、"必要な余裕"なのです。
軽口で言って、
実際として出走開始から間もなくの一ヶ月、その意は課された
よっては残る大神の暗黒で『何処から大神の狂気が
せめての今は甘味によって舌で楽しく——密かに未知へ詰める餡で神は力を蓄えるのだ。
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「——なに? 『飼っているペットと更に心を通わせたい』? 『種を超えて言葉を解したい・交わしたい』?」
そう。
言って聞かぬは——天然自然の猛威。
その最たるが——膨れ上がる宇宙の化身。
契約で縛り、従わせること
「ならば、吾から"コレ"を渡しておこう」
神々の王で手に差し出すは
いや、『渦を巻く
「"
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