『古き女神たちとの邂逅②』
『古き女神たちとの邂逅②』
そうして——決まりをみせた二組の同行。
目的とする地はアデスで何やら『遊びがある』と言うテノチアトランの一都市。
其処で合同に楽しむためでは競走に本腰を入れていた訳でもないから乗機も用意のなかった女神たち——
容貌で鮮やかな三柱を連れ立って、和やかに過ごそう移動の時間。
「何か
「状況の文脈からして
「はい。冷えていて美味しいのですよ」
「……いえ。別に」
「美味しいですのに」
儀礼的に話すアデスとウィンリルで同じ一つの円卓を囲む。
他の少し離れた場所ではルティスとイディアにグラウで、"椅子を壊すことを懸念した女神"に合わせて平坦な床に腰を下ろす形。
更に奥を行った
「……それはさておき、"要求する神々の王に対面を示すため"にも競技の方で何かはしたのですか?」
「文句を言われても面倒ですので一応は。私で少し」
「"女神ウィンリルの単独"で?」
「……見かけ上は我々で行ったように『土地の岩石除去』や延いては『農地転換』を実績として残しました」
「実質としては"
けれど、聞けば『古き女神たち』——代表者を除く構成員は王がいないと輝きで活力の失せる女神と、壊すこと以外で力の扱いが困難な女神。
そうした組む彼女らの性質の都合上で活動という活動の実績があるのは『ウィンリル一柱だけ』とのこと。
「それに関しましては本当に我が身へ『役立たず』と言われても……自身で納得によって返す
その謂わば『ワンマン』ならぬ『ワンピラーチーム』となっている事実。
上述の非協力的な実状へは近場で耳の痛く聞こえていた当の
「真実として殆ど出走開始から今の今までを、"ただ座っているだけの置き物"」
「『
自虐的に語るのは、この場で最も背の高き柱。
それでも長い脚で
耳と尻尾のある神は宛ら『叱られる犬』めいて、自覚が『負い目を感じるべき』との振る舞いか。
「……またそれでも"容認"して頂けることへは感謝の至り」
「よっては世辞なしに"私の先を行く若者たち"で、その果たしてきた活躍に感心していた所であります」
でもは『戦いの神』としての与えられた役割を知る者たちで無能を責めることなく、寧ろ『慎重な判断の積み重ねによって不介入を選ぶ』のだろう努力へと大神では賞賛の微笑み。
またその微笑まれては暗黒を直視できないグラウでも美神や川水たちの『都市を微細に動かしたり』や『火山の猛威を宥めたり』——今し方で部分的にも知ったのが、時々で『人の複雑な心情』に配慮した
それら当事者たちから聞き知って"偽りのない賛美"が、兜を通した
「……本当に凄いのです。女神イディアも、我が同士も。少なくとも私に二者のようなことは出来ません【><;】」
「何せ触れれば壊れてしまいますから、それを壊さず……『壊さずに優しく』などとは、何という"力加減の
色がどうの形がどうの、性別や種類がどうの——それら関係なく『己以外を壊せば壊れる
放つ波の照射によって対象の破壊も可能な獣の耳が震え、嘘偽りなく『壊し難い魅力』への高まりに"全身を武器とする女神"からも今は敬意の色が表出するのだ。
『……やはり多少なりとも物言いが『物騒』に感じるかもしれませんが、これもまた"彼女の平常運転"』
『……はい』
『
『……はい。『分かり難い』というのが何となく自分でも分かり、ちょっと怖そうなのも
「……
「……それだけでも多大に貢献をしていましょう。
「……そ、そうでしょうか? "私でも誰かの役に"……?」
「少なくとも
「"…………"」
「そのように
「……い、いえ」
「日頃から我が弟子の参考とさせて頂く旨もありますし、礼の一環を兼ねつつ貴方にとっても楽しめる
そう言っては魔王から——かつて己を貫いた閃光へ、今も熱意を向けてくれる強大の相手へと表情と口での思い遣り。
場の最高齢でありながら蠱惑に白黒で少女の形が気さくに手を振ってもみせてくれたので、その直線上にいたグラウは暫しの硬直をしてしまう。
「しては、女神ウィンリルで他に何を? 何か遣り甲斐のあるものは見つかったりしませんでしたか?」
そうしてアデスが顔の向きを最も身近なウィンリルへ戻しては、彼女の『補正式』の神格として求める"合理"や"効率"を掘り下げんと話をする。
「"あれ"は行わないのですか?」
「"あれ"?」
「カチカチ、とした?」
「"カチカチ"?」
「以前にお見受けした"延々と作る焼き菓子"のような物を配ったりはしないのですか?」
「しません。あれなるはただの暇つぶし、『誰かに食べさせよう』という物でもありませんから」
"彼女にとっての最たる補助対象"であった女神——『好奇心で走りがちの女神テアなき今で時間を持て余していやしないか』と、お節介な老婆が構ってやる。
「また億が一にも競技を制して頂点へ
「?」
「貴方のような大神から世界の主権を譲られても困ります。確たる展望もなくて仕様がない」
「貴方の望む『効率化』などは一つ、世界運営の指針になるのでは? ……いん、ふら? その整備していた姿も私の
「……他の形式的な作業も土砂災害で崩落した道の補修、謂わばその『輸送路』がこれまた元より
「成る程。では、『
「そうです。ただ人の"非効率"を見ていても私で気分が宜しくありませんので、少し補正をしただけ。深く関わるのも面倒ですから、それ以上を特には」
「……ほう?」
「……いえ。『仕様もないものが仕様もないまま』、円滑の筋道を見えぬままに放置されても『在るべき物が在るべき場所にない
「因りては食料供給の道が復活したばかりの人へ」
「空腹で碌に仕事の能率も上がっていませんようでしたから、
数少ない近似の
「
「……あ? 本当に何なのです? 今日はやたらと褒めて……"大神にお褒め頂いても
「ですが、我が方でも負けていませんよ」
「……?」
「『販路・輸送路の確保』や『食料支援』は、似たようなことを青年たちで他にも色々とやっていますから——"負けません"」
「"負けて構わない"のです。我々では」
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