『開幕—競覇拾信祭—③』
『開幕—競覇拾信祭—③』
照明の落とされた会場。
どころか場外でも恒星よりの光量を少なくされた地表全体で昼の明度が低下。
『——そうして今し方は皆も日頃から"足場"に多大な恩恵を受け、海めいて深くに感謝を捧げる星の女神たちでありました! ご顕現に有難うございます!』
声の反響して返る天井でも色合いは夜空に近く、映る宇宙の情景が星々と暗い海——差し
『そしてそして、星の化身に続いては——』
『これより御紹介する残りの四つで、なんとそのどれもが——"極神所属の有力チーム"……!』
グラビア女神のソルディナ。
彼女という会場の音響や光源や映像出力についても制御する王の一端。
音声を電気信号にも変換のマイクロフォンを通して響かせる案内で、世に顕現した神々の、及びその組み合わさるチームの紹介が玉声によって
『神で呼び名は複数あれど、そのどれか、殆どの者でも一度は聞いたことがあるでしょうか』
『それは言葉を持たぬ者たちにだって登場を待ち望まれし絶対者。なので先ずは勿体ぶらずの早速、改めてましてに御紹介!』
『属するは第二世代の女神らで、チーム名が——『古き女神たち』!!』
「……」
「……」
「……
司会が呼んでは照らす注目照明で、照らされたのはスタート地点の
玉体の足で立つ該当の者ら、その当たる光に負けずの輝く玉容が高位神の在る姿なり。
『リーダーは女神のウィンリル』
『"流れる風"や、転じては
「……」
そうして喜びにも不快にも見えぬ表情で緑髪の女神も個神としての名を呼ばれ、無言は読み取る空気に"大神という嵐"が過ぎ去る時を待つように静か。
『またチームに輝きの彩りを加えて、愛らしきは女神ラシルズ』
『"天空の側に控える筆頭"。若しくは一般に"女性を守護する神"として広く知られているでしょうか』
「その香りに、揺れる波は……! 間違いなくの"王"……! "王"——!!」
『……光輝に溢れて、彼女も先立って紹介した女神と等しく、神の補正を担って万能——の、はず』
同じ組で続いては、黙るウィンリルと対照的に騒ぐ金色。
撥ね退けられる呪いでラシルズからは王に寄れず、二つ結びを揺らしての縋るような手振りだけが場内に風を切る。
『そして、同チームにおける最大戦力が……人々で広く広く、ご存知』
「……」
『今日からの場に相応しきは、"
『"公平"にして"正義"の、
そして、次に訪れるのは"緊張"の場面。
『"最強"と名高き極神、其は"大戦の英雄"』
王の化身によってその神も名を呼ばれて——微動さえないのが鈍く銀の大鎧。
『女神の——"グラウ"』
グラウからは己の大元たるソルディナと——言葉は勿論に、顔の見せ合いだってすることなく。
『"……/……"」
"自由をやる神"と、"自らの自由を縛る神"での複雑な結び付き、両者の間で一瞬に漂う静寂は"嵐の前触れ"めいて。
その恐ろしい程に波の立たない様相は、事実として神王とその生み出した戦闘神格で親しい交流の様は数十億年の中に一度も——ただの一度だって観測をされず。
『……以上の
どの高位でさえ容易に声掛けや身動き一つも出来ぬ時空。
だが、瞬刻を置いた双方で直系に繋がる相手への干渉はひとまず、紹介や呼称のそれ以上でなく。
『そうしましてはリーダーを務める女神ウィンリルから、どうか。"意気込み"を一つ』
「……偉大の神に誓い、最後までの走破を成し遂げん」
『有難う御座います』
緑の女神を中心に左右で金銀の光、背丈も高く、正に柱の如き並び立つ麗し。
その中にあって光の神らが気性で激しい都合上、リーダーを務めるのはウィンリル。
形式的な参加で
『
『世界を知って、世界を変えんとする知恵者が集まっての——チーム! 『ネオ・ニュー・
『リーダーは——男神プロム!』
「……口を開いてもいいのか? さっきは畏れ多くも身震いをしたが」
『"天空の
「王でも良く言う。自らで神の
『神秘に通ずるその空洞は、"知恵の神"で何を見る』
打って変わって一応に王と交流のある神では軽く流され、知に
『またその隣に立つ、此方も男神の学者さんはワイゼン』
『先に紹介へ与った神と担当分野がよく似て、共に大神からの色濃い要素を継ぐ——"知識の神"』
「……光の神格とは本当に"
「
『以前から交友はあって知恵と知識は仲良し?』
『ならばどうも有難う、遊んでくれて。今度返礼に菓子折りでも贈ります』
出来た親のような口振り、読み上げ。
ならば次で、未知を司る暗黒神格が美や川水らと組む都合上——それと入れ替わる"知性の柱"とは。
『そして、
『これまでの三柱から"未知"を担う神が抜けての補充、新メンバー……三つか四つの意味を掛けて『むち』、"無知の神"——とのこと』
背負う肩書きを呼ばれ。
参加要件に不正がないことを示すためにも装甲車から進み出る神——色合いや体格はソルディナやグラウに良く似ての
であるからして
『この女神については此方でも詳細な情報は秘匿され——けれど神からの保証によって"実力は折り紙付き"』
(今は残り
そのちょうど青年から見て——緊張と認識阻害で見ようとしても見えないが——装甲機体の物陰に当たる部分で長い髪を垂らした件の仮面女神も立ち、プロムを中心に男女混成の柱が並ぶ。
『総じて密かの知略は今回のビックリ枠になれるのか? 中核のリーダーから一言』
「好きに言ってろ。兎に角として、我らでは"神を試す好機"だ」
『堂々と不穏に言いますね。漂う気配も怖いですが……果たして"
『そのよう、"神同士で衝突することがあれば要注目"のチームが、
"右肩上がりの棒グラフ"めいて左から銀に金に黒の美形が連なる山の如く、また紹介の一区切り。
『そしてそして、次』
『司会のお姉さんが今回、"個神的に最も興味を引かれるチーム"が——』
そうしたらの次は
揃い踏みの神聖圧力に固くなる青年が危惧した通りに順番が訪れる。
『チーム——……何と発音すれば宜しいのですか。
「真中は省き、意訳して『未知の力』」
「どうも」
『そうしては改め、此方——最も古き神と最も新しき神の共存、温故知新』
『"不明"や"未知"の意を持って『
『その名はチーム!——『ダーク・X・フォース』!!』
(——きた……!)
『メンバー紹介は重鎮の中の重鎮を最後として、先ずは新進気鋭の青二才』
『辺境にて話題沸騰中。その突如として
(い、いきなり、"自分"……!)
紹介で言われたように黒を基調とした衣服に身を包む三柱、暗く。
先頭で頭巾に顔を隠す小柄の後ろ、長身の二つからされる構成員の紹介。
『小都市かばって意外の
呼ばれた青年では、どうして良いか分からず印象として汗が飛ぶよう、ぎこちない動き。
周囲の者たちからでは正体に迫れず、記憶も阻害の加護があるとは言え囲む視線は怖く、取り敢えずでは顔を逸らすように各方面へ御辞儀を沢山する。
「……! ……!」っっっ
でも、その"神でありながら控えめ"に。
主張をし過ぎず
いや、正確には『先に信仰ありき』で出来ているのだから一致することも当然であるのだが、しかしそれにしても
「大丈夫ですよ。我が友。我々が付いてます」
「は、はい……!」
その成立過程の細かい仕組みは説明すると長くなるからして——兎角。
青黒の女神と隣の黄色い女神とで微笑みを交わす様に観衆が花の咲き誇る幻想を見たところ——次は他でもない、その"美貌"についてが述べられる。
『そして同チームの此方も若々しく、老若男女から広く"
『邪悪を持つ筈なく、優しく、永遠の喜びを体現する姿には皆が憧れ——』
(イディアさんの番だ)
『しかし——決して誰にも掴めきれぬ雲が如き女神』
『多くの者に"届かぬ理想"と"現実からの断絶"さえ見せて、その世界を
手足で
"幸福の色"を思わせて温かみのある黄褐色、流麗の髪。
動作だって目で追わざるを得ぬ滑らかは何処にも
「応援、有難う御座います」
名を呼ばれて美神、騒ぎへの対応も慣れたもののよう。
玉声で応えた自らの玉顔の横、同じく晴れやかな表情と共に花弁の如く開いて掌。
青年の時より大きな歓声、比較するとこれまで最大級であった女神グラウに負けるとも劣らぬ大歓声へ見せる笑顔も自然。
でも、よく見れば彼女だって"少しの緊張"は——青年や大鎧で察せられるよう、髪の冷たい
『そうして、同チームの
だがすると、美女の中の美女という大きな盛り上がりを通過して、"一転"。
『何故ならば、彼の者なくして我らの世界を語れず。今現在に於いても凡ゆるものへ影響を与え続ける偉大』
『私の最も視線を注ぐのは、この』
『誰もが生まれながらに"忌避すべき恐怖"として知る——"例の女神"』
流れに変化を加える紹介の声も抑揚を下げ、
呼ぶ名の其の者は、遂に表舞台へと顕れる創造主。
嘘偽りなく偉大の神が——"大神"。
『『
『謎めいて最悪の
『世界の中心、
『其の大神は』
魔の頂点に君臨する神。
最大の好敵手に当たるソルディナ女神で、名は——通りの良い声にて。
『"冥界の神"——アデス』
しかし、『死』とは、"死の化身"たる『冥界の神格』とは——今更に多くの説明は要らぬだろう。
何より既に述べられたように、命ある者の皆が『本能に刻み込まれた正体不明』として酷く恐れ、『可能な限りで遠ざけたい』と切に願う存在であるから——会場を満たすのは居た堪れぬ温度。
「「「「「………………」」」」」
様相は正に告別式か、葬式か。
時に体温が失われ行くように、冷たく。
時に『死』などという最大級の恐怖を世に齎したこと、『要らぬ余計を齎しやがって』の渦巻く感情は——"苛立ち"に熱を持って。
『……』
観客席の何処でも浮かばぬ表情。
何より参加者として紹介をされても、その実態や居場所が未だにとんと確かめられぬ相手へ表立っての不満を漏らそうものなら——其処にいるのだろう"死をつついて買う怒り"、『冥府への直行』に思えて皆の気は重く。
「……」
(……アデスさん)
だだっ広い静寂の間。
件の大神の背後で並ぶルティスとイディアでも場に即した適切な表情は分からず、僅かにも険しくなる目付き。
彼女たちでは女神アデスを『優しい方』だと知っていて、けれど『行いは実際として恐ろしく擁護の極めて困難なもの』であるとも理解をしていたから。
感情と理性の
(…………)
しかし、そうして緩慢に流れる数十秒。
"悪神"に等しき災厄の顕現に触れたくなどはない皆で。
「姿、見えず。見えぬが、しかし——」
ただ時間が過ぎるのを誰もが待っていた時。
畏れ多くも司会の女神以外で、なんといっても恐れ知らずに沈黙の場へ"不敬の声"を上げるのは。
「——引っ込めよ。女神」
「お前のような"愛の
何者か。
「その重さで世界は狂い——
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